国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフブログ

Read Article

子どもへの贈りもの

クリスマスも近づき、「子どもに何をプレゼントしよう?」「サンタさんに何をお願いしよう?」と考え始めた方も多いのではないでしょうか?どんなものをあげたら喜ぶか、子どもたちが喜ぶ顔を想像しながらプレゼントを選ぶのはワクワク楽しいですよね。

私の母と祖父は私が子どもの頃、たくさん本を贈ってくれました。
絵本、図鑑、童話、児童文学、推理小説、詩集、偉人伝、美術書などなど。
世界には面白いもの、美しいものがいっぱいあって、自分とは違う考え方をする人たちがいて、それでも共感できることも多くあるということを、私は本との出会いを通じて学んだ気がします。
「なんでプレゼントは本ばっかりなの?」と思った時期もありましたが、今は本を通して国境と時空を超える旅に送り出してくれた親や祖父母に感謝しています。

バングラデシュの小学校高学年の男の子

バングラデシュの小学校高学年の男の子

母から贈られた本の中で、この間ふと思い出した本についてシェアしたいと思います。小学校高学年の時に読んだ「王様マチウシ一世」と「コルチャック先生」です。

子どもの王様のお話、「王様マチウシ一世」を書いたのが、「コルチャック先生」こと、ヘンリク・ゴルトシュミットという第二次世界大戦中、ナチス・ドイツ占領下のポーランドに生きたユダヤ系ポーランド人です。彼は小児科医、児童文学作家、教育者、そして児童養護施設の施設長を務めました。

このコルチャック先生が「子どもの権利」の概念の先駆者だったということは大人になってから知りましたが、子どもの時に心に刻み付けられたのはコルチャック先生が施設を離れる子どもたちに語りかけた、お別れのあいさつです。

「私たちは君たちに何も与えることはできません。(中略)しかし私たちは君たちに「一つ」だけ与えることができます。より良き人生への、まことの、正しい人生への-今日ではありえない-「あこがれ」を贈ることができます。おそらく、その「あこがれ」が君たちを、神へ、祖国へ、愛へと導くでしょう。このことを忘れないように。さようなら。」
岩波ジュニア新書 近藤康子著 「コルチャック先生」

当時、著名人だったコルチャック先生は、強制収容所行きを免れることが可能だったのにも関わらず、彼は子どもたちと共に収容所に行くことを望み、子どもたちと共にホロコーストの犠牲となりました。

私が子どもの頃、このお別れの場面を読んだ時には、子どもを一人の人間として敬意を持って向き合ってくれる大人がいるということに感動し、子どもも責任を持って行動し、自ら努力しないと得られないものがあるということを知りました。また、戦時下の不安の中に生きる自分と同じような子どもたちは、どのような気持ちでこの言葉を聞いていたのだろう、と考えていました。

コルチャック先生と同じ「大人」となった今、この言葉は違う意味を持って私の心に迫ります。明日は命を奪われてしまうかもしれない子どもたちに、一人の大人として何を贈ることができるのか。大切な子どもたちを守る責任を果たせない、そんな絶望的な状況の中、無念で心が引き裂かれながらも、子どもたちが最後まで尊厳を持って生きることができるよう、考えに考え抜いて贈られた言葉なのだと感じます。

ベトナム・トアンザオADP地域のモン族の赤ちゃん

ベトナム・トアンザオADP地域のモン族の赤ちゃん

開発援助の仕事に就いてから、私は数カ国を周り、様々な状況に生きる子どもたちに会う機会がありました。活発な子、シャイな子、いたずらっこ、泣き虫な子、利発な子、いろんな子がいましたが、どの子たちも大人をまっすぐ見つめていたような気がします。

今の世界情勢を見ていると子どもたちが置かれている状況は、もしかしたらコルチャック先生の時代からさほど変わっていないのかもしれません。

親と離れ離れに暮らす子どもたち、戦火の中の子どもたち、スラム街で生活する子どもたち、少年兵、難民の子どもたち、飢えや病気に苦しむ子どもたち、児童労働に従事する子どもたち、暴力に怯える子どもたち、学校でいじめを受けている子どもたち、被災した子どもたち、「テロリスト」の子どもたち。

 

私は今、コルチャック先生よりもはるかに恵まれた環境にいるけれど、かつては子どもだった一人の「大人」として、今を生きる子どもたちにどのようなメッセージを発信しているのだろうか。

どんなに残酷でつらく悲しいことがあったとしても、それでもなお世界は美しく、人生は生きるに値するものであるということ。皆望まれてこの世にいて、世の中には信頼に足る人もおり、皆が協力しあって初めて平和な世界を築くことができること。そして人のために働くことは自身の喜びにもつながるのだ、ということを私は実感を持って、子どもたちに伝えられているのだろうか。まっすぐ大人を見つめる子どもたちの目から目をそらさずに―。

皆様の温かいご支援があるからこそ行うことができている開発援助の仕事。
皆様の心からの贈り物を子どもたちに届けられるよう、祈りを込めて一つ一つていねいに仕事をしていきたいな、と思います。またこの仕事を通して、コルチャック先生の語った「より良き人生、より良き世界へのあこがれ」を私も子どもたちに贈ることができるよう努めていきたいと思います。

—————————————————————–
クリスマスまでに3000人の子どもを救いたい
チャイルド・スポンサーを募集しています
——————————————————————-

この記事を書いた人

木戸梨紗
木戸梨紗エチオピア駐在 プログラム・オフィサー
上智大学比較文化学部卒業(専攻:社会学・文化人類学)。ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院でMSc. Reproductive & Sexual Health Research修士を取得。
2010年1月 ワールド・ビジョン・ジャパン支援事業部開発事業課(旧 海外事業部開発援助事業課)、ジュニア・プログラム・オフィサーとして勤務。2012年1月より、プログラム・オフィサー。2012年12月より2016年3月までベトナム駐在。2016年4月からエチオピア駐在。
Return Top