【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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エールの達人

「ニューノーマル」、「新しい生活様式」。

聞く時によって、少し違う気持ちになる、不思議な言葉だと思う。

朝、フレッシュな気持ちでニュースを見る時には、「これを機会に変わっていかないといけないんだ」と、わりとすんなり受け止められるのに、一日の終わりの夜のニュースで聞くと「新しい生活様式に切り変えるのが難しい立場にいる人は大丈夫かな?」と、不安な気持ちになる。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は誰もが予期していなかっただけに、心の準備や見通しのない中、決断だけをとにかく迫られているような、そんな状況だからかも知れない。

私のニューノーマル:朝ドラ「エール」

新型コロナウイルスの影響で、私が所属する支援事業部では2月末から在宅勤務を本格的に導入している。通勤も海外出張もなくなったので、朝の連続テレビ小説「エール」を毎回欠かさず観ている。

日本の音楽史を変えた古関裕而の生涯をベースにしたドラマで、第一話は東京オリンピックが舞台だった。その後コロナ感染拡大の影響で、ロケや撮影自体が中止となり、しばらくは再放送を余儀なくされていたようだ。おそらくドラマ製作チームは、撮影スケジュールの大きな変化のみならず、先の見えない状況を生きる視聴者の心に寄り添うという、より大きな使命と向き合うことになったことだろう。

緊急事態宣言や在宅勤務の経験を通して、人は衣食住だけでなく、芸術を通した美、愛、友情、信じる心などが、私たちを支え、日々の生活と心を豊かにしている、という事実に、多くの人が気づいたのではないかと思う。そのような時期に「音楽を通してエールを送る」というドラマが放送されているのは、なんだか運命的だなと感じている。

NGO職員は「エールの達人」?

ずっと、NGOの仕事の本質ってなんなのだろうと考えている。ワールド・ビジョンでは食糧支援、教育支援、保健医療支援、人材育成、アドボカシー活動などいろんなことを行っているけれど、「NGO職員のプロ」ってどんな人なのだろうと。完全に「エール」人気に乗っかってしまうが、それは「励ましのプロ、エールの達人」なのではないかと最近考えている。

エチオピアの事業地内にある小学校の特別支援学級を訪問した筆者

エチオピアで小学校の特別支援学級を訪問した筆者

困難な状況に置かれている人々は、往々にして「諦めモード」になってしまうことがあると感じる。どんなに頑張っても、努力が評価されない。状況は変わらない。やっぱり自分は価値のない人間なのではないか…。そんな状況に長くいつづけると、「多く期待しない方が、がっかりしなくて済む」と考えてしまうのも無理はないと思う。多かれ少なかれ、このような気持ちになったことがある人はたくさんいるのではないかと思う。

これまで事業地で出会った、予算も人手もない古びた保健センターで頑張る助産師さんたちや、おばあちゃんと孫たちだけで住む貧困家庭の人々の眼からも、この「無力感」のようなものを感じた。そういう出会いがある度に、どのような言葉をかければいいのか迷う。

「心」と「勇気」を届ける

そうした時には、自分がこれまで聞いてうれしかった励ましの言葉を思い返してみる。英語のEncourage(元気づける、勇気づける、励ます)という言葉の語源は、「勇気(心)を中に入れる(込める)」なのだそうだ。

本人たちが本来持っている力を発揮することができるように、募金に協力してくださった方やチャイルド・スポンサーの皆さまから送っていただいた「心」と「勇気」を届ける。
NGOスタッフの仕事は、人に寄り添い、「励ます仕事」なのではないか―。

こんな大変な中、本当によくがんばってきましたね。
もう一人じゃないですよ。
これから、どう生きていきたいか、一緒に考えていきましょう。
支えているから、立ち上がってみませんか。
一歩だけ踏み出してみましょう。
応援しています。
あなたの幸せを祈っています。

そんな思いを、事業を通して伝え続ける仕事なのかな、と考えている。

エチオピアの女の子。こちらもニッコリしてしまう!

エチオピアの女の子。こちらもニッコリしてしまう!

新型コロナウイルス感染拡大で、私が担当する事業にも遅れが生じている。早く支援を必要としている人々に届けたいというもどかしさも感じながら、現場で頑張っている同僚たちと共に、日々、今の状況でも出来ることは何かを模索している。

これから一年後、世界はどうなっているだろう。
それは分からないけれど、一日一日、ていねいに、小さくても、現場に希望のエールを届けていきたい。先行きが見えない中でも、遠くに住む人たちの幸せを願って、エールを送ってくださる人たちの存在に励まされながら。

 


WVJは厳しい環境に生きる子どもたちに支援を届けるため、11月1日~12月28日まで、3000人のチャイルド・スポンサーを募集しています。

みんなでYELL! みんなにYELL!! 子どもたちに届けよう!! クリスマスキャンペーン!!

おまけ:ワールド・ビジョン・ジャパンのオフィスには、出勤したスタッフがエールを送りあうメッセージボードを設置しています。みんなでYELL! みんなにYELL!!

この記事を書いた人

木戸梨紗プログラム・コーディネーター
上智大学比較文化学部卒業(専攻:社会学・文化人類学)。ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院でMSc. Reproductive & Sexual Health Research修士を取得。
2010年1月 ワールド・ビジョン・ジャパン入団。2012年12月より2016年3月までベトナム、2016年4月から2018年3月までエチオピア駐在。専門領域は母子保健。
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