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新産科棟-新しい命の誕生

日中は産前・産後の、そして出産を間近に控えたお母さんたちで混雑している産科棟が、今日の夕方に限ってガランとしていた。

事業一年目にクーイヘルスセンターに建設した産科棟

事業一年目にクーイヘルスセンターに建設した産科棟

日本NGO連携無償資金協力の助成金により、2013年3月に開始したマラウイのンチシ県母子保健関連施設整備事業では、これまでに、2つの産科棟の建設、医療機器の整備、医療施設の利用を促した啓発ポスター・カレンダーの配布、そして、事業2年目の現在は、3つの待機所と2つの水道設備の整備を行っている。

日中の新産科棟の様子

日中の新産科棟の様子

それと並行して、皆さまからの募金で、県内の医療施設に無線機を整備し、コミュニティに対して出産に関する知識普及活動を実施している。

その背景として、マラウイは、出産が原因で命を落とす女性、また、生後28日までの間に亡くなってしまう新生児の数が、世界で最も高い国の一つであるからだ。この事業を通じて、その数値を少しでも下げることが私たちの目的である。

マラウイに来て1年半、県内の医療施設を幾度も回り、その都度産科棟に足を運んできたが、分娩台で出産を待っているお母さんや、出産をしたばかりのお母さんに出会えたことはあっても、出産自体に立ち会えたことは一度もなかった。

それは事業1年目に建設した新しい産科棟でも同じで、開設からわずか1カ月弱でたくさんのお母さんたちに利用してもらっているにも関わらず、私自身は、出産現場にいまだ居合わせることができずにいた。

そんないつもは忙しいはずの新産科棟が、今日に限って静まり返っていた。不思議に思って産科棟内を回ってみると、苦しそうにしている女性の声が遠くの方から聞こえてきた。

病棟の一番端に位置する分娩室を覗くと、分娩台の上で辛そうに横たわっている女性と、その女性の手をギュッと握っている付添人の姿があった。ひょっとすると、もう陣痛が始まっていてもうすぐ産まれるのかもしれないと思い、別棟にいた助産師を呼ぶと、彼女はせっせと出産の準備をし始めたのである。こうして、自分が担当する事業で建設した産科棟で、人生初めての出産に立ち会うことになったのだ。

体重計に乗せられた産まれたばかりの赤ちゃん(藪崎スタッフによってマリアと名づけられました)

体重計に乗せられた産まれたばかりの赤ちゃん(藪崎スタッフによってマリアと名づけられました)

待っている間、言葉では言い表すことのできない期待と不安な気持ちが交錯し、ただただ母子ともに健康であることを祈るしかできなかった。

10分ほど経過した頃だっただろうか。
お母さんがいきみ始めたと思ったその瞬間、赤ちゃんが産まれたのだ!!

すぐに産声をあげ、助産師によってお母さんの胸元へ。すると、さっきまでとっても苦しそうにしていたお母さんの顔には満面の笑顔があった。赤ちゃんはとっても元気な女の子。付添人である彼女のお母さんもとても嬉しそうだった。

一所懸命に体を動かそうとしている様子

一所懸命に体を動かそうとしている様子

産まれたばかりの赤ちゃんはしっかり呼吸をし、手や足を一所懸命に動かし、目を必死に開こうとしている。そんな姿を見て、改めて生命の素晴らしさを実感したと共に、こんなに温かく、幸せに満ち溢れた空間に居合わせることができたことが本当に嬉しくてたまらなかった。

そして何よりも、この事業で建設した産科棟がしっかり利用されていることをとても誇らしく感じた。

嬉しそうに赤ちゃんを抱えるおばあちゃん

嬉しそうに赤ちゃんを抱える付添人/おばあちゃん

マラウイにおける母子保健関連の医療設備は、まだまだ十分に整備されていない。しかし、少しずつその状況を改善していくことができれば、もっとたくさんの女性が安全な出産をでき、より多くの母子の健康を守ることができるのではないだろうか。

一日中事業地を走り回った最後に起きた、胸がほっこりする出来事。
新しい産科棟で、新しい命が誕生したこの日の夕方は、私にとって、決して忘れられない日となった。

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