皆さんは「ティッピー・タップ(Tippy Tap)」をご存知でしょうか?
ティッピー・タップとは、水汲みに使うポリタンク、竹や枝、紐などを使って作る簡易手洗い設備で、各戸に水道設備がない途上国の農村部などでよく使われています。地面に二本の枝を立ててもう一本の枝を鉄棒のように置き、その枝にポリタンクの持ち手を通します。穴をあけたポリタンクの先に結んだ木の枝を踏むと、タンクが傾いて水が出るという仕組みです。
皆さまからのご支援と外務省からの助成金で実施中の東ティモール事業は、「水と衛生」に焦点を当てています。このうち「水」の部分は「事業地の住民の方々が、綺麗な水を手に入れられるように」水供給システムの建設を行っています。
一方、「衛生」の部分は「住民の方々が、保健衛生に関する習慣を改善する」ことを目的としています。この「習慣改善」という言葉、まさに「言うは易し、行うは難し」。
水供給システムのように「完成した!よし、水が手に入る!」と素直に喜ばれるようなものではありません。これまで毎日のように草むらで用を足していたお父さんに「トイレを使った方が衛生的ですよ」と言ったところで分かってもらえるか?ずっと泥の混じった水を料理に使っていたお母さんに「沸かして使うとお子さんが病気にかかりにくいですよ」と言って納得してくれるか?同じ国でも集落が違えば住民の方々の反応もまったく違います。あの手この手でアプローチを考える、事業スタッフの柔軟性と発想力が問われるのが衛生事業です。
さて、先月の話になりますが10月15日は「世界手洗いの日」でした。
2008年の国際衛生年に定められ、毎年各国で様々な関連イベントが催されています。当事業は毎年小学校で活動しており、三年目の今年も事業地の小学校で子どもたちを対象にしたイベントを行いました。
10月初旬からスタッフは事業地にある3つの小学校の先生方と協力し、「手洗いソング」のコンテストの練習をしたり、手洗いをテーマにした劇を準備したり。イベント前日の夕方からティッピー・タップの準備も行いました。
準備の甲斐もあり、当日は子どもたちが主役のイベントとなりました。
「手洗いソング」コンテストでは、小学校低学年の子どもたちの可愛らしい歌や、東ティモールの伝統衣装「タイス」をまとったチームの歌など、個性ある発表を見ることができました。
劇では、普段人前で演じるという経験のない子どもたちが、少し恥ずかしがりながらも「きちんと手を洗わないと、病気になってしまう」というストーリーを演じてくれました。
そして、最後には前日から準備した100基以上のティッピー・タップを使って、みんなで手洗い。手の甲や指の間など”手洗いの7ステップ”を、来賓の方々も巻き込んで実演しました。
準備したTシャツにプリントした「手洗い必須のとき」は5つ。
1. ご飯を食べる前
2. 小さい子にご飯をあげる前
3. ご飯を準備する前
4. 小さい子の排泄を手助け(おしめを替えるなど)した後
5. 排泄の後
3.は主にお母さんに伝えるポイントですが、2.や4.は日本では思いつきにくい、兄弟姉妹の多い東ティモールならではの手洗いタイミングです。そして、手洗いを「石けんを使って」することもこの日強調したポイントでした。
作ったティッピー・タップにはそれぞれ石けんを取り付けたので、ポリタンクを持ってきた子どもたちが一緒に持ち帰ったのですが、さて、ふつうは25セントする石けんを各家庭で購入・使用してくれるかどうか。
少しずつでも習慣を変えるきっかけになれば良いなと思いつつ、今後の事業地訪問の際にさりげなく観察していきたいと思います。
そして、ティッピー・タップを使うために必要な「水」の供給システムも日々、建設中。
来年2月には毎日長い距離を歩かずとも、家の近くの公共水栓で水を手に入れることができるようになります。子どもたちが健康に育つためには、きれいな水と習慣改善のどちらも欠かすことができません。バランスを取るのが難しい「水と衛生」事業ですが、今後も両方の活動についてご報告を続けていきたいと思います。
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