【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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【東ティモール】事業終了、その後は

皆さまからのご支援と外務省からの助成金により3年間にわたって実施して参りました東ティモール事業は、無事に3月9日に事業終了を迎えました。改めまして、3年間にわたるご支援に団体として、駐在員個人として、そして受益コミュニティ(東ティモールの13集落)からの感謝を申し上げます。

引渡し式の様子・ゲストを迎えての入場

引渡し式の様子・ゲストを迎えての入場

事業終了前に、マンパワーと支出の面で当事業の主軸である水供給システムを正式に地元政府とコミュニティのものとする引渡し式を行いました。引渡し式には地元の政府関係者や在東ティモール日本大使館にもお越し頂き、NGOである「ワールド・ビジョンのプロジェクト」から「地元コミュニティの資産」へと無事に引渡しが完了しました。

さて、今回は最後ということで、この一年間に私たちが何をしてきたか、そしてこれからどのように地域のみなさんが水を使っていくのだろう?ということを書きたいと思います。

東ティモールの農村部の水供給は、政府の農村部水道局(DNSA)という部署が担当部署となっています。しかし、小国とはいえ道路などのインフラが整っておらず、前回も書いた通りアクセスの悪い場所に集落が点在しているので、政府機関が限られた予算で水道を作り、メンテナンスをすることは容易ではありません。

水管理委員に対するトレーニング

水管理委員に対するトレーニング

そこで、農村部については「集落の水管理委員会が水供給システムの維持管理をする」と政府の法令で定められているのです。各集落の有志による「水管理委員会」は、日本で言う町内会のような感覚ですが、約6~7名のメンバーで構成されていて、主に①水道のメンテナンスと②水道使用料の徴収を行います。

日本では水道会社が当たり前に行っている水道のメンテナンスを、素人である住民に任せてしまうあたり、政府の力に限りがあることは明らかです。しかし、政府による支援がいつ来るか分からない農村部では、もともと「自分たちで何とかする」意識が強いことが多く、私たちNGOの手助けを借りながら水供給システムを作り、管理のしかたを学んでいくのです。

NGOによる水供給システム建設ではありますが、最終的に引き渡すコミュニティの意思を尊重することはとても大切です。活動の進め方も細かく政府によって定められています。まず、事業地の集落ではキャップ(CAP)と呼ばれるワークショップを、すべての世帯が参加して行います。このキャップ・ワークショップで、水道のルートや公共水栓をどこに設置するか、キーマンとなる水管理委員は誰にするか、使用料はいくらにするか、といったことを全員で話し合い、決めていきます。

特に面白いのは、公共水栓の場所を決める時です。東ティモールの農村部では、一般的に各家庭に蛇口をつけるのではなく、複数の家庭(3~10家族)で1つの公共水栓を一緒に使います。ですから、どこに公共水栓を置くかというのはとても重要で、現地調査に基づいた事業スタッフによる設計を見ながら「そこは遠すぎる」とか「坂道がきついから無理」だとか皆が言い合って、最終的な公共水栓の場所が決まるのです。同じく、水管理委員の選出も他の人による推薦と、本人の合意を経て、全員による投票で行われます。

合意したとはいえ、いきなり責任を負わされてしまう水管理委員(有志なのでボランティアです)にはもちろん水道管理の知識などありません。そこで、水供給システムの建築を通して、委員たちには自信をつけてもらい、ほかの住民の皆さんには彼らを認めてもらう、というプロセスが必要になります。水管理委員会は使用料の徴収(月に約50セント~1ドル)を行いますが、「あの人たちがお金を勝手に使っているんじゃないか?」と周りから疑いの目を向けられてしまうと、支払い拒否などが起きてしまいます。

そして、集落の全員が知り合いという事も多い中、お金に起因する人間関係のひずみは、ほかのところにも簡単に悪影響を与えてしまいます。「この人たちなら、お金もきちんと管理して、水道の補修に使ってくれるだろう」という共通認識があってはじめて、「じゃあ、水道代をはらおう」と住民の皆さんが考えてくれるのです。

水供給システムの建設は、住民の方々の協力なくしては前に進みません。私たちは資材を買って運び、事業スタッフが集落に住み込みで建設の指導を行います。しかし、住民の皆さんが毎朝現場に来てくれなければ、パイプは一本もつなぐことができません。そこで、率先して現場に立つのが水管理委員で、他の住民の動員や集落に保管してある資材の管理なども行います。

パイプと公共水栓の建設中

パイプと公共水栓の建設中

建設作業に参加する住民の方々にはお給料を支払うわけではないので、ワークショップの時は「よし、やろう」と思っていたとしても、その後5、6カ月にわたる建設期間中ずっとモチベーションを維持するのは正直、難しいところです。「今日は畑に行くから」と休んだが最後、まったく戻ってこない人もいますし、そもそも遠巻きに見ているだけの人もいます。事業期間は、乾期の後半(家などの建設シーズン)と雨期(農業のシーズン)にまたがるので、忙しいという言い訳はいくらでもできるのです。

パイプと公共水栓の建設中

パイプと公共水栓の建設中

年度始めは私たちも手探り状態ですが、工事が進んでくると事業地の5集落それぞれのカラーが出てきます。最初は「お年寄りが多いから、工事はきっと厳しくなるだろう」と予想していた集落の出席率が毎日とても良かったり、大きい集落では人がたくさん動員できるだろうという予想に反して、団結力が弱く誰も来なかったりします。

あまりに人が集まらない集落では住民ミーティングを招集して、あらためて工事の内容と、どうして住民の方々の協力が必要かというのを根気強く話します。また、そういった機会に使用料の徴収についても話し、それぞれが「水道を使うためにはお金を払わないといけない」という考えを当たり前に持ってもらうように啓発を行います。

集落によっては驚くほどあっという間にできてしまったところもあれば、数々の困難を乗り越えてようやく完成にこぎつけたところもあります。事業スタッフも平日、時には週末も住み込みで働いていたため、引渡し式の最後にコミュニティの方々と別れる時には胸がいっぱいになってしまうというシーンも何度もありました。

引渡し式にて

引渡し式にて

無事にシステムが完成して、引き渡した後のケアは基本的に各集落の水管理委員会が行います。長期間システムを維持するためには、コミュニティ一人ひとりが気を付けて公共水栓を使い、水は使ったあとにきちんと止めること、毎月の使用料をきちんと納めること、問題があったら水管理委員にすぐ知らせること、など日々気をつけてもらうことが一番大事です。ずっとモニタリングできないことが残念ですが、女性や子どもたちが家からすぐ近くで水をくんでいる様子を見ると、システムが問題なく少しでも長い間動き続けてくれるといいな、と思います。

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