ベトナムのディエンビエン省で行っている「妊産婦と新生児の健康改善事業」では、去年に引き続き、村落で啓発活動を行う村落保健員や女性連合組合員のコミュニケーション能力の強化を目指して研修を行っています。
研修の中で「物語を伝える手法」という項目があったのですが、その時にトアンザオADPのスタッフが語ってくれた短い物語(ベトナムでは有名のようです)が心に残ったので、ここで皆さまにシェアしたいと思います。
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一人の若い女性が、ある町の新しい家に引っ越しました。
隣の家には、夫を亡くした女性と二人の小さな子どもたちが、とても貧しい生活を送っていました。身なりは粗末で、子どもたちはいつもお腹を空かせているようでした。
ある晩、町中が停電になり、若い女性の家も近所も深い闇に包まれました。
停電になってからしばらくして、コンコン、と女性の家の戸をたたく音がしました。
女性が戸を少し開けて外を見てみると、隣の家の子どもが立っています。
「お姉さん、ろうそくはありますか?」
若い女性は考えました。
『うちに、ろうそくはある。けれど今夜、この貧しい家族にろうそくをあげたら、次からは、あれがほしい、これがほしいと言われるに違いない。だから、ない、と言おう』
「ありません」
と言って、女性が戸を閉めようとした時、子どもが微笑んで言いました。
「やっぱり!私のお母さんが、『一人でいる時に、明かりがないのは怖いだろうから、これをお姉さんに持っていきなさい』って言ったんです」
そう言って、子どもは女性に2本のろうそくを差し出しました。
この記事を書いた人
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上智大学比較文化学部卒業(専攻:社会学・文化人類学)。ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院でMSc. Reproductive & Sexual Health Research修士を取得。
2010年1月 ワールド・ビジョン・ジャパン入団。2012年12月より2016年3月までベトナム、2016年4月から2018年3月までエチオピア駐在。専門領域は母子保健。
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