【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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普通になる事

先日、自分が担当している東ティモール事業の一環で水道を建設した集落において、住民との対話を行う機会があった。建設がすでに終わっているこの集落では、今年は基本的に「水道が正しく使用されているか?」「管理作業が行われているか?」といった点の確認を定期的に行っている。確認の際、集落内における水道の使用が不公平だという問題を指摘する声があったため、解決のために現地人のスタッフと2名で住民との対話を行った。

東ティモールでは10月から11月にかけての乾季後半に水不足がさらに深刻となるため問題が起きやすい。集落の水道が湧水を水源としているため、乾季になると水量が減少し、水道の上部に住む住民が多くの水を消費することで、下部に位置する住民の水量が足りなくなる問題である。この集落も同じような問題が生じた。

正直、事業地で住民間の問題が起きると内心困ってしまう。基本的には村落内でお互いを思いやることで防止できる問題なのだが、水はやはり貴重であり生活に直接関係しているため、不公平に思えてしまうのだろう。住民間の問題の解決には、住民自身で解決しようとする気持ちが不可欠で、どれだけワールド・ビジョンが解決しようとしても、住民側に気持ちがなければ上手くいかない。

コミュニティーとミーティングを行う

コミュニティーとミーティングを行う

そこで頼りになるのは建設当時からやる気を持って建設作業に関わってきて、今でもまだメンテナンスや管理を行う役目を担っている水管理委員会の一握りの住民である。彼ら(彼女ら)を見ていると、自分がもし同じ立場だったら彼らがやっているように、メンテナンス作業や、水道使用金の徴収ということを出来るだろうか?と思わされる。

無償で何度も繰り返し作業するのは大変なことだ。今回の話し合いでも彼ら(彼女ら)が住民の意見を聞きつつ、まとめる役目を担ってくれた。

自分は現地の事業責任者なので、問題が起きると事業終了後の水道運営に不安を感じてしまう。水道運営がうまくいかず結局前と同じように、子どもや女性が遠い距離を10~20㎏の水を毎日2回運ぶようなことになると完全に事業の無駄である。そんな不安がある中、水管理委員会の数名の今までの熱心な活動、そしてやる気を見るとこちらも勇気づけられ、彼ら(彼女ら)が独り立ちできるように全力を尽くそうという気持ちになる。

この事業は、クリスマス募金等の皆さまからの募金と、外務省のNGO連携無償協力という助成金で行っているのだが、助成金の運用ルールに基づいた期間が設定されており、事業には明確な終わりがある。

遠い水源まで水汲みに来た子どもたち

遠い水源まで水汲みに来た子どもたち

しかし現地の住民にとっては事業が終わっても、生活は続く。むしろ活動が終わることは逆に彼ら(彼女ら)の自立の始まりである。今はワールド・ビジョンが水道の使用状態や管理体制の確認を定期的に行っているが、活動終了後は住民が管理を引き続いで行っていく必要がある。建設が終了してからワールド・ビジョンの活動が終了するまでは、言ってしまえば独り立ちへの準備期間だ。準備期間中にメンテナンスや管理の作業の習慣をつけてしまえば、それを行うのが特別ではなく普通なことになるだろう。そうすれば自立しても継続できるようになるのではないかと思っている。

水不足で苦しむ東ティモールの子どもたち、
深刻な食糧不足にあるソマリアなどの途上国の子どもたちのために
食糧と水のための募金を受け付けています。

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