私は2006年にワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)に入団しましたが、当初は国内でのファンドレイジングや広報を担当していました。当時、担当スタッフから支援事業について聞く機会は多くありましたが、正直なところ、その支援事業がどのように行われていて、どんな子どもたち(自分のチャイルドは別にして)、人々に届けられているのか、自分の実感として理解するのは難しい部分がありました。
しかし昨年4月に支援事業部に異動し、チャイルド・スポンサーシップの支援地域に出張し、現場で色々なチャレンジ(と、私には思えること)をものともせず働くスタッフ、家族の幸せを願うお父さんやお母さん、たくさんの子どもたちに出会うようになりました。
わずかな時間であっても彼らの話を聞かせてもらうと、一人ひとりにこれまで歩んで来た、そしてこれから歩んで行く人生があり、ストーリーがあることを知ります。そして「支援地域に住んでいる子ども/人」ではなく、生身の一人の人間として心に迫ってくるのです。
先月フィリピンのサマール地域に出張した際も、一人の女の子との出会いがありました。
支援地域の中でも最も奥地にある集落に行った時のことです。ここは村の中心部から約1時間、森を歩いた所にあります。その日は朝から雨が降っていたため、冠水した泥道を歩き続けてどうにか到着しました。電気、トイレ、水道といった基本的なインフラはほとんど整っていない、周辺地域からは分断されているような集落です。
その集落に唯一ある小学校を訪問すると、小さな校舎でたくさんの子どもたちが勉強していました。教室をのぞいてみると、興味津々といった表情でこちらを見てきます。フィリピンでは9月から(!)クリスマスムードになるため、「皆、クリスマスのお願いは何かある?」と聞いてみました。すると子どもたちは口ぐちに、「スパゲッティが食べたい」「ジョリビー(フィリピンのファーストフードチェーン店)のハンバーガーを食べてみたい」と答えました。
これは、正直ショックでした。首都マニラはもちろん、この集落から車で1時間ほど走った街の中心部に行けば大きなモールもあり、たくさんの人がショッピングを楽しんでいます。同じ地域の中でもこんなに違うのか…と、彼らの置かれた環境の厳しさの一端を見たような気がしました。
やや落ち込みながら休憩していると、昼休みの校舎を使って子どもたちの身体測定が行われていました。その様子をなんとなく眺めていると、ふと、一人の女の子がこちらをじっと見ているのに気づきました。
「あれ?この子、知ってる気がする…。でもこの集落に来るのは今日が初めてだし…」と考えていると、現地スタッフが教えてくれました。
彼女は、WVJが制作したテレビ番組でご紹介したジョナリンちゃんだったのです。
今年3月に撮影した時より、髪も伸び、ちょっとお姉さんになっていました。聴覚障がいがあるためうまく話すことができませんが、学校に通えていることをスタッフの助けを借りながらゆっくり伝えてくれました。
厳しい環境の中でも成長しているジョナリンちゃんに出会えたことは、私にとって大きな励ましでした。そして、ジョナリンちゃんや子どもたちが地域全体で育まれ、成長し、将来的には1つでも多くの選択肢を持てるような支援をしていかなければいけないと思わされました。
支援が届くその先には、“ヒト”がいます。そしてその“ヒト”一人ひとりが、住んでいる環境や言葉、宗教、習慣、色々なことはちがっても、私たちと同じように笑ったり悲しんだりしながら、同じ時代を生きています。
彼らの声や思いを伝えていくことも、私たちの役割であると思います。同時に、少しだけ想像してみてほしいのです。もし、自分がそこに生まれていたら?その子どもが、もし自分の子どもだったら?自分の家族だったら?大切な人だったら-?
自分や大切な誰かの幸せを願うこの季節、一人でも多くの方と一緒に、子どもたちの幸せのためにできる「何か」をしていきたい、と願っています。
※12月6日(土)から8日(月)にかけて、台風20号(英語名:ハグピート)がフィリピン中部を横断しました。ワールド・ビジョンはレイテ島タクロバン市内の避難所で緊急支援キットの配布を行いました。チャイルド・スポンサーシップで支援しているレイテ、サマール地域に住むチャイルドは全員の無事が確認されました。(12月15日現在)。
クリスマスまでに、あと1200人の子どもを救いたい。
子どもたちの成長を支え、未来を一緒にひらいてくださる
チャイルド・スポンサーを募集しています。
この記事を書いた人
- 恵泉女学園大学卒業後、2006年7月にワールド・ビジョン・ジャパン入団。国内でのファンドレイジング、広報を担当した後、2013年4月より支援事業部スポンサーシップ事業課に所属。南アジア諸国での支援事業の監理を担当。2018年4月よりマーケティング第1部に所属。
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