街がクリスマス色に染まり始めた12月6日、私は一足早いプレゼントをもらった。それは、家族からでも友人からでもなく、その日初めて言葉を交わした人たちからだった。
この日、ワールド・ビジョン・ジャパンの事務所で「WVフェス」が開催された。多くの方に国際協力に関心を持っていただきたい、WVJの活動をもっと知っていただきたい、という想いから、私たちスタッフが企画・運営する一大イベントだ。
映画上映会、民族衣装体験、体験型アクティビティなど、プログラムは盛りだくさん。そして、この日のハイライトは、ルワンダの子どもたちとの生中継だった。皆、チャイルド・スポンサーシップによる支援を受けている地域に住み、チャイルド・スポンサーを紹介されている子どもたちだ。
実は私、このプログラムの司会を仰せつかっていた。気軽に引き受けてしまったものの、「イベントのトリに相応しい内容にしないと…。現地とも調整しないと…。そもそもちゃんとルワンダに回線はつながるのかな」と、日を追うごとに不安の種が膨らんでいた。
もちろん、私は1人ではなかった。私が台本を用意する傍ら、別のスタッフが現地との細かい調整を、また別のスタッフがシステム系を担当した。また、この中継にかける現地スタッフの意気込みはすごく、本当に熱心に対応してくれた。メールでの打合せに始まり、実際に回線をつなげて見え方やカメラワークの練習をしたりした。
「私たちにとってもすごく良い機会なのよ。こんなチャンスをもらえて感謝しているわ」。この言葉を聞いて、彼らのためにも、良い中継にしなければと思った。
そして、その時が来た。100人ほどが入れる大会議室には、人が溢れている。「頼むから回線が落ちませんように!」ひたすらそう願いつつ、プログラムはスタートした。
しかし、そんな私の願いも空しく、なかなかつながらない。「ああもうダメかな。即席の紙芝居やらなきゃかな・・」と思った瞬間、お行儀よく座った5人の子どもたちが画面いっぱいに映し出された。(回線がつながらなかった場合、「ルワンダのエリック君」という紙芝居をする予定でした…)客席からあがる歓声にかき消されたが、私もつい、安堵の歓声を上げてしまった。
そこからは、順調に進んだ。事前にこちらからの質問を共有していたので、子どもたちは流れるような言葉で回答してくれた。きっと、何度も何度も練習したに違いない。「どんな1日を過ごしているの?」「好きな食べ物は何?」「将来の夢は?」子どもたちは、キラキラした美しい瞳で答える。カメラワークを念入りに練習したスタッフが、それをズームアップする。私は、子どもたちの純粋な美しさに心を打たれた。
ふと会場に目を向けると、何人かの方が目に涙を浮かべていらっしゃった。
チャイルド・スポンサーの方も多く参加してくださっていたので、ご自身のチャイルドと重ねていたのかもしれない。「この会場と画面の向こう側は、しっかりとつながっている」そう確信した。
約30分間のプログラムは、会場の皆さんとともに現地の言葉でさよならを言って終わった。会場の皆さんの「ムラベホ!」という声と手を振る映像を見て、ルワンダの子どもたちは満面の笑みで手を振りかえしてくれた。
人と人とのつながりは、物理的な距離では測れない。いつも一緒にいる人でも、心の中を読めない時がある。しかしこの日、私は確かに、日本の小さな事務所の一室がルワンダの小さな事務所の一室と同化したのを感じた。たった30分間だったが、そこに居るみんながお互いを想いやり、幸せな気持ちになっていた。忙しい日々の中で忘れかけていた、「心のつながりの温かさ」というプレゼントを、私はルワンダの子どもたちからもらったのだ。
この中継が日本では大成功だったと聞かされたルワンダのスタッフは、「それを聞いて私たちもとっても嬉しい。子どもたちも、日本の人たちと話せたことをとても喜んでいたよ。テクノロジーって素晴らしいね」と言った。確かに、テクノロジーがなければ今回のように、日本とルワンダとをつなぐことはできなかった。しかし、そのつながりに心を宿すことができるのが人間だと思う。人と人とのつながりを意味のあるものにするのは、テクノロジーではなく、人間の心なのだと感じた1日だった。
コミュニケーション課 市山 志保
クリスマスまでに、あと1200人の子どもを救いたい。
子どもたちの成長を支え、未来を一緒にひらいてくださる
チャイルド・スポンサーを募集しています。
この記事を書いた人
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