【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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支援終了(さよなら)の向こう側

肌で感じた、支援地域の嬉しい変化

2019年7月、インドネシアトウナ地域開発プログラムの支援地を訪れました。
チャイルド・スポンサーシップを通して2009年から活動を行っている地域です。

前回訪問は2年前、有機野菜栽培グループや貯蓄グループなどの活動が軌道に乗り始めていた時期だったので、2年経ってそれらがどうなったか、日々の生活がどう変わったか、現地の方々から直接お話を聞くことが、出発前からとても楽しみでした。

実際にトウナ地域を訪れた私を待っていたものは、「そうきたか!」というたくさんの嬉しい変化でした。

もっとも印象的だった変化のひとつは、有機野菜栽培グループに関することです。
ある有機野菜栽培グループを訪問しお話を伺っていたところ、このグループが自分たちの発案で、共同菜園に「妊産婦のための野菜栽培コーナー」を設けていたことがわかりました。共同菜園の15本ほどある畝のうち、3本の畝から収穫した野菜を地域の妊産婦さんたちに無償で配る活動を始めていたのです。

続いて、村役場を訪問してみると、この活動のことが話題にのぼり、とても高く評価されていることがわかりました。さらに、村全体でこの活動を広めようと、村の開発予算で「妊産婦のための野菜栽培畑」の設置をサポートするしくみが作られた、というのです。

ワールド・ビジョンの支援で始まった有機野菜栽培をきっかけとして、地域の方々自身が、自分たちの地域の課題や資源を理解し、豊かな発想力と行動力でより良い地域づくりに取り組み始めた - 2年前には想像していなかった、嬉しい変化でした
ワールド・ビジョンの支援が、地域の活動として本当の意味で根付いたことを、肌で感じたできごとでした。

共同菜園に「妊産婦のための野菜栽培コーナー」を設けた有機野菜栽培グループ

共同菜園に「妊産婦のための野菜栽培コーナー」を設けた有機野菜栽培グループ

有機野菜栽培の活動は、その販売収入による生計向上を第一の目的としていますが、自家消費による栄養改善や、コミュニティの協働の促進、(自宅近くの共同菜園で過ごす時間を設けることで)保護者が子どもと過ごす時間の確保など、実は様々な生活全体の改善をねらったものでもあります。そのために、単に有機野菜栽培のノウハウを伝えるだけでなく、母子保健・栄養、子どもの保護など様々な啓発活動と組み合わせて支援を実施しています。
そうした複合的なねらいと地道な取り組みが、この2年間でじわじわと浸透して、このような形で実を結んだのかもしれません。

有機肥料を作っているところ

有機肥料を作っているところ

支援が終了することを、地域の方々はどう受けとめているのか・・・?

実は、トウナ地域開発プログラムは2021年9月で支援終了を予定しています。準備期間を含め12年間にわたる支援活動が、あと約2年で終了するという、重要な時期を迎えているのです。

ワールド・ビジョンの支援は常に、地域の方々の主体的な取り組みを側面からサポートする姿勢を大切にしていますが、それでも、一度始めたことを終えるというのは、簡単なことではありません。いつまで支援を行うべきか、永遠に関わり続けることはできない外部者の立場と、地域住民の方々の思いがすれ違ってしまうこともあります。また、支援の成果が定着するまでもう少し見守りたいと思っても、資金的・人的な制約などから終了せざるを得ないということは、珍しくありません。

トウナ地域開発プログラムは、当初2025年に終了の予定でしたが、支援の成果が現れ、予定よりも早く支援から卒業できる目処がたったため、2021年に終了を前倒しした経緯があります。それでも、実際に終了が2年後に迫ってきた今、あらためて、地域の方々はどのような気持ちでいるのか、過去の経験から、少し気がかりでもありました。

誇らしげな笑顔に、ぐっときた

そんな私の気がかりをよそに、今回、お話を伺ったトウナ地域の方々は、
「ワールド・ビジョンは、私たちに時間をかけて寄り添いながら、農業や健康に関する知識・意識を高めてくれた。地域を良くするために私たち自身が取り組めることがあると、背中を押してくれた」
といったありがたいお言葉や、
「有機野菜栽培も、貯蓄グループも、子どもの見守りも、今ではとても重要な地域のしくみになっている。これからももちろん、自分たちで続けていくよ」
といった力強い決意表明を、たくさん聞かせてくださいました。

言葉だけでなく、実際にそれに向けた具体的な動きが様々な形で始まっていて、あぁ、この地域の支援は本当に終了するんだな、ここからが、新しい地域づくりの第一歩なのだなと、皆さんの誇らしげな笑顔を見ながら、ひそかにぐっとこみ上げてくるものがありました。

有機野菜栽培グループの皆さんと筆者

有機野菜栽培グループの皆さんと筆者

もう必要とされなくなることが、目標であり、喜びである。
不思議な仕事だと常々思います。

トウナ地域開発プログラム終了まであと2年。今のこの機運がさらにぐっと高まり、地域の方々も私たちも、支援終了(さよなら)の向こう側に自信をもって踏み出せるよう、現地の献身的なスタッフとともに、引き続き見守っていきます。

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この記事を書いた人

髙橋 布美子支援事業第2部 国内支援・アドボカシー課 課長
青山学院大学国際政治経済学部卒業、政策研究大学院大学修了(国際開発学修士)。
国内自治体の行政経営・戦略計画策定支援のコンサルタントとして活動後、国際協力銀行/JICAにて南アジア地域の開発援助に従事。
家族と米国生活中に東日本大震災が発生したことから、復興支援への思いを胸に帰国し、2013年1月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。
東日本大震災緊急・復興支援部を経て、現在は支援事業部国内子ども支援チームのチームリーダーとして、日本社会における子どもの権利の実現に向けて活動中。保育士。
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