「涙とともにパンをかじった者でなければ人生の本当の味は分からない」(ゲーテ)
2017年1月31日。
この日のマックを忘れない。
初めて、難民(正確には、難民申請者)と話した日。
品川マックで難民に関する資料を読んでいたら、身長190cm以上ありそうな大柄なアフリカ系の男性が隣にすわった。大きな身体に対してスモールサイズのコーヒーを飲んでいた。不自然と思ったからか、よく覚えている。
彼は、私が読んでいた資料を横目でずっと見ていた。可愛いほど分かりやすく。そして5分後、私の人生が変わる。
彼「あなた、なんみんをたすけるひとですか」
私「まぁ、はい、そんな感じです」
彼「ぼくはなんみんです。日本にきて7ねんたちました。たすけてください」
私「・・・え?」
身体が動かなかった。息もできなかった気がする。
忘れていた、というか、完全に盲点。
日本にもたくさんの難民がたどりついていること、私は知らなかった。
彼と30分近く会話した。7年もいればこんなにも日本語うまくなるものなのか?いや、きっと必死に学んだのだろう…お金に困っているからスモールのコーヒーだったんだ…家族にも7年会えてないって…彼から聞いたような話は、それまで読んできたどの資料にも載っていなかった。
彼は、涙とともにスモールサイズのコーヒーを飲んでいた。
私は、ショックとともにレギュラーサイズのコーヒーを飲んでいた。
スモールとレギュラー。
「彼のためにできることはなんなのか」と半ばパニック状態で迎えた翌日のとあるシンポジウムの質疑応答で、「私は日本にたどりついた難民の支援を行っている者です」と名乗る女性が立ち上がる。
「(゜o゜)!!!」
この顔文字でしか表現できないその時の私の心境。彼女との奇跡的な出会いが、私の想いや行動を一気に加速させた。
すぐに食事をして、双方の独自の報告会ではとらえきれない「世界の難民危機と日本の難民受入れの現状」をテーマにした難民シンポジウムを4カ月後に共催、今年6月に第2回目を開催した。
2019年6月2日 難民ユースシンポジウム参加者募集中です!!
そして、今は、「未来ドラフト~わたしと難民がつながるアイデア・コンペティション~」が開幕中。
若者が難民となった子どもたちのことを「知る」だけでなく、その子どもたちの立場になって気持ちを想像し、課題テーマに対してアイデアをエントリーするというアクション型のプロジェクト。グランプリに選ばれたアイデアは、その応募者が現地へ渡航し、WVJやその他協力者とともに自ら実現させるという日本初の取り組み。
このように、団体等の垣根を越えて、難民問題を広く、正しく伝えたいと思わせてくれた品川マックの彼は、きっとこれらのイベントについて何も知らない。
大事なことを教えてくれた彼は、今どこにいるだろう。
私は彼の苦しい状況を助けることができなかった。その他、できないことはたくさんある。
だから、できないこと以外のことは何でもしよう。
レギュラーサイズのコーヒーを選択できる者として。
「他人のためにならない人生は、死よりも劣る」(ダグ・ハマーショルド:第2代国連事務総長)
コミュニケーション課 堂道 有香
紛争で難民となった子どもたちを、日本から支援する方法があります
突発する紛争で難民となる子どもの命を救うために。
避難生活が長期化する子どもたちの未来をつくるために。
寄付金額を選び、負担のない期間だけ支援する方法があります。
【関連ページ】
・未来ドラフト2019-わたしと難民がつながるアイデア・コンペティション(決勝大会観覧申込受付中!)
・世界の問題と子どもたち:世界の難民危機と子どもたち
・TAKE BACK FUTURE キャンペーン
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この記事を書いた人
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