ミャンマーと聞いて、どんなイメージが思い浮かぶでしょうか?
ワールド・ビジョンをご支援くださっている皆さまは国際情勢に詳しい方が多いので、本当にお恥ずかしいのですが、入団2年生の筆者が思い浮かべるミャンマーのイメージは、アウン・サン・スー・チー氏の半生を描いた映画『The Lady アウンサンスーチー 引き裂かれた愛』(2011年、仏・英)に描かれている軍事政権下のヤンゴンの街並みの様子がせいいっぱいでした。
本作は、イギリスにいる夫と子どもたちとの面会を阻まれ、家族との平穏を想いながらも祖国の民主化にむけて自分の使命を果たそうとする主人公の姿を、マレーシア出身の女優ミッシェル・ヨーがこれまた見事に演じているのですが、同時に、ヤンゴンのコロニアル様式の瀟洒なお屋敷が連なる街並みや、南国のまとわりつく湿った空気の表現も秀逸です。
さてそのような「ミャンマー初心者」の筆者が、かの国に初めて訪れる機会がやってまいりました。タバウン地域開発プログラム事業地内で特別プロジェクトとして小学校の校舎建設をご支援いただいた企業の社員の方おひとりが代表として開校記念式典に臨まれるにあたり、3泊5日間の行程を滞りなく進めるための同行出張です。
ご支援をいただいた小学校は最大の都市ヤンゴンから西に自動車で8時間進んだイラワジ川流域の森林を進んだ奥にある小さな村に建ちました。
この村には現在40世帯ほどが暮らしています。約70年前に隣の村から一部の世帯が移って水田を開拓したことが始まりだそうです。村には学童期の子どもが現在約30名います。新しい小学校ができたことで、毎日悪路を30分以上歩いて近くの学校まで通学する負担から解放されます。村の将来を担う子どもたちがより良い教育を受ける環境を整えることで、村全体が周辺から取り残されることを防ぐことができます。
開校記念式典では、ご支援者から子どもたちに向けて、学ぶことの大切さを説かれたスピーチをいただきました。遠い日本からいらしたご支援者のメッセージを、保護者たちにとっても重みのあるものだったようです。
式典の後に若いお母さんが筆者の脇に寄ってきて、「ウチの子どもは二人いるけど、ちゃんと学校に通わせるわ」と笑顔でささやいてくれたことが忘れられません。
地域の教育行政担当官やタバウン地区選出の地方議会議員の列席も、ワールド・ビジョンが現地のステークホルダーとの関係をさらに強化する格好の機会ともなりました。こういった関係構築は、ワールド・ビジョンが現地でチャイルド・スポンサーシップによる支援活動や、今回のような特別プロジェクトによる支援活動を効果的に行うためにもとても大切です。
式典の後半では子どもたちから踊りや歌の披露など、住民全員からのせいいっぱいの歓迎を受けて、行程は滞りなく終わりました。
話をヤンゴンに移します。前述の映画にも街の様子が描写されていますが、ヤンゴンは大英国の統治時代に建てられたコロニアル様式のノスタルジックな雰囲気を醸し出すお屋敷街が特徴です。
塀で囲われた広い敷地内には広くスペースがとられた車寄せ、一軒一軒ユニークな意匠の瀟洒な洋館、その裏には庭があります。南国の優雅な空間です。住居としての利用のほか、企業がオフィスとして借りているケースも多いようです。が、よく見れば屋根や壁が傷んでいる建物も少なくなく、手入れが届いていない建物が多い印象を受けます。ミャンマーのスタッフに訊くと、このような洋館は維持が難しいことと、より効率のいい不動産運営をしたがる家主の思惑から、解体される傾向にあるそうです。取り壊して、敷地いっぱいに高層のオフィスビルや賃貸マンションを建築し効率的な不動産収入を求めるケースが増えているとのことでした。 ワールド・ビジョンのヤンゴン事務所が入居する建物の向かいも、おそらくは情緒あふれるお屋敷であったものが、マンションの建設中でした。
この5,6年で急激に外資の助けを借りながら所得が増加し、経済成長を遂げているヤンゴン。人間の生活が年を経て変化するとともに、建築物や街並みも変容していくことは自明の理です。
“十年ひと昔”という言葉がありますが、このヤンゴンでは年月の流れを感じるほど環境が変わるまでには10年もかからないかもしれません。
一方、子どもたちの健全な成長に不可欠な小学校がやっと近くにできたタバウンの小さな村。
発展途上国の特徴として、都市部と農村部では経済や社会発展のスピードが異なるということは学んでいましたが、今回の出張であらためて深く考えさせられました。
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おしまいに、今回の出張に付き添ってくれたミャンマーのスタッフW氏とともに筆者を空港で出迎えてくれたティーンエイジャーの娘氏との会話を。
彼女の最近のお気に入りは、BTSという韓国のアイドル歌手グループだそうです。韓流ドラマにも夢中で、韓国語会話のクラスにも通い始めた娘氏。お父さんが横からためいき混じりにはさみます。
「ヤンゴンのテレビ番組は韓国から輸入したドラマのオンパレードでね。若い子たちの流行言葉はみんな韓国語ですよ。外国語の習得に熱心なのはいいんだけども。親としては、英語の勉強も怠らないようにと娘に口酸っぱく言っているんです。なにせ国際社会の共通語だしね」
宿泊先のホテルでテレビをつけてみると、日曜のゴールデンタイムに、少なくとも2局は韓流ドラマがビルマ語字幕付きで放映されていました。英BBCの報道によると、韓流ドラマの年間海外輸出額は2憶4千万米ドル(約260億円)、17年前の3倍にもなるとか。韓国エンターテイメントの席巻を目の当たりにしました。
もう15年以上前でしょうか、日本でもチェ・ジウ主演の『冬のソナタ』が放映されて、韓流ブームが起きましたよね。先述の娘氏に、当時人気だった俳優の名前をいくつか挙げてみたら、予想しなかった反応が返ってきました。
「ぺ・ヨンジュンは好き?」
「??」
「あらら、知らない?」すこし焦って、「そしたら、ウォンビンは?」
ぺ・ヨンジュンより少し年下の俳優の名を挙げてみます。
「あ、知ってます。オジサンですよね」
うーん。15年前は“若手”俳優だったのですが。。。 どうやら今どきのヤンゴンっ子が乗っている韓流ブームは、筆者が経験したものとは違う波のようです。
ああ、これも“十年ひと昔”だわ。
マーケティング第1部
平田 優子
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この記事を書いた人
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NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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