【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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ノーベル平和賞受賞、マララさんがつなぐ子どもたちの夢

私には二つの選択肢しかありませんでした。一つは、声を上げずに殺されること。もう一つは、声を上げて殺されること。私は後者を選びました。(中略)私も教育を受けられなかった女の子の一人でした。私は学びたかった。私は学び、将来の夢をかなえたかった。

ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさん

ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさん

今年のノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさん(17歳)のスピーチからの言葉です。タリバンによって学校に行くことが禁止されていたパキスタン北西部の地域で、勇敢にも学校に通い続けることを選んだマララさんは、2年前、イスラム過激組織に銃撃され頭を打たれ重傷を負いました。しかしその後、奇跡的に回復し、現在はイギリスの高校に通いながら世界の子どもたちの教育実現を唱えています。

世界には、今この瞬間も5,700万人の子どもたちが小学校にすら通えていない現状があります。学用品が買えない、生活のために働かなくてはいけない、など貧困が理由の場合もありますし、以前のマララさんのように、地域の慣習や弾圧などによって教育の機会を断たれている子どもたちも少なくありません。

先日、途上国に暮らす子どもたちの日常生活をドキュメンタリー形式でお伝えする番組の取材でアフリカのタンザニアを訪れました。そこで出会ったメアリーちゃん(10歳)も、学校に通ったことがないといいます。お母さんも、おばあさんも学校に通ったことがなく、メアリーちゃんは、本当は「学校に行きたい」ということを家族の誰にも言えずにいたそうです。

少しずつ本音を話してくれたメアリーちゃん

少しずつ本音を話してくれたメアリーちゃん

メアリーちゃんの話を聞いている時に印象的だったこと。それは、メアリーちゃんの横にずっと一緒にいた叔父さんの存在でした。この地域では家長である男性に権威があり、女性や子どもたちは男性の許可がないと発言ができず、自由に思ったことが言えないように見えました。

これではメアリーちゃんの本当の気持ちが聞けないと思い、私は叔父さんに「どうか、メアリーちゃんが何を言っても止めたり、怒ったりしないでほしい」とお願いしました。叔父さんは「もちろん!」と快諾してくれ、ようやくメアリーちゃんが「本当は学校に行きたい」という胸の内を話してくれたのです。

往復2時間かけて毎日水汲みをするメアリーちゃん

往復2時間かけて毎日水汲みをするメアリーちゃん

メアリーちゃんは、往復2時間かけて毎日水汲みに出かけます。水を入れると10キロ以上にもなるタンクを頭で支えて持ち運びます。その途中に小学校があり、時々教室の様子を眺めていたのだそうです。「みんなペンとノートを使って何かをしているでしょ?何をしているか分からないけど、楽しそう。私もそれがしたいの」と話してくれました。

そしてなんと「夢は学校の先生になること」とも話してくれました。「学校には行ったことがないけど、いろんなことを教えてもらえるんでしょ。私の周りには学校に行けない女の子たちがたくさんいるから、私が先生になれば、みんなにも教えてあげられるから」

「夢は学校の先生」というメアリーちゃん

「夢は学校の先生」というメアリーちゃん

マララさんは言います。

「学校に行けないと聞いたとき、もう医者にはなれないんだな、と思いました。きっと、13か14歳で結婚するような人生を送るんだろうなって。学校にも行けず、なりたいものにもなれず。だから、声を上げようって決めたんです」

マララさんのように、勇敢に立ち上がることができる少女がいる一方で、そのほとんどが自分の思いを家族にも打ち明けられずにいるという現実があります。タンザニアでのメアリーちゃんとの出会いでそんな悲しい現実が静かにおこっていることを思わされました。でもそれと同時に、どんな環境にいても夢を抱くことができる彼女の秘めた強さを感じて、少し嬉しくもなりました。

メアリーちゃんの夢を実現するためには、たくさんの壁があるように見えます。家長である叔父さんやお母さんと話し、教育がメアリーちゃんの未来に大きな可能性をもたらすことを理解してもらわなければいけません。学校に通い続けるためには、家族に安定した収入が必要です。メアリーちゃんを長時間の水汲みから解放するためには、家の近くに安全な井戸も必要です。

でも、一歩ずつ、これを前に進めていくことはできます。

マララさんの願う「世界中の子どもたちが学校に通うことができる世界」、それは世界中の子どもたちが、未来を自由に選択することができる世界です。

大きすぎる夢の前に、自分が無力に感じてしまうこともあります。長い時間がかかってしまうかもしれません。でも、「“何もかも”はできなくとも、“何か”はきっとできる」、そんな精神で、自分にできることを一つ一つ、やっていきたいと思います。

筆者

チャイルド・スポンサーシップ課 山下泉美

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この記事を書いた人

WVJ事務局
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