そろそろ半年がたとうとしているが、5月からヨルダンという国に赴任している。
ヨルダンでは、ジャパン・プラットフォームの助成を受け、主にシリアから逃れてきた子どもたちへ向けた教育支援を行っている。
ヨルダン政府の発表によれば、同国には今までにおよそ140万人の人々(うち国連が支援対象としているのは約61万人)がシリアから逃れてきていると報告されており、ヨルダン人人口(およそ820万人)の17%程度となる。
それだけの人々が一つの国で生活しているわけだから、むろん人々の生活は簡単ではない。シリア人だけではなく、もともと生活が苦しかったヨルダン人にもその影響は及んでいる。教育サービスも例外ではない。
ヨルダンの教育現場は、まさに「緊急事態」である。
私たちがたまたま訪問した学校では、何百人という子どもたちが、学校に入学したくても、学べないでいた。
もともとヨルダンにあった学校校舎では、急激な生徒数の増加に対応できていないからだ。彼らは補欠リストに登録し、学校側が受け入れてくれるのを待つ。中には去年1年間ずっと学校に行けなかった女の子もいた。
緊急措置として、多くの学校は、午前・午後の二部制を取り、より多くの子どもたちを受け入れられるように奮闘している。
さらに、学校の先生は、いまだかつて、50人以上の子どもたちが一つの教室にぎっちり机を並べて勉強している姿に直面したことがない。そして2部制になったことで、一コマの授業時間が少なくなるので、先生が各生徒に割ける時間は、通常よりとても短いのが現状だ。
そのような状況では、今までのような教授法では立ち行かない。子どもたちが授業をきちんと理解しているのか、把握が難しくなる、各生徒への対応も困難である。結果として、勉強についていけない子どもたちの増加が著しく目立っている。
シリア人の子どもたちについて言えば、シリアのカリキュラムとヨルダンのカリキュラムが違うため、ヨルダンの学習システムになれるのに時間がかかっている。また、紛争で目の前で人が殺される場面に直面したり、爆撃にあったり、多くの子どもたちが心理的に不安定であるとされている。
私たちの事業は、そのような状況を少しでも改善するために、補習授業を開催する。さらに絵をかいたり、簡単なアクティビティを行う時間を通して、子どもたちに安全に過ごせる場所を提供する。と同時に、保護者やコミュニティへも、どうして今の緊急時に教育を受けることが重要であるかを伝える、啓発活動なども行う。
人の生活に必要不可欠なものはなんだろうか。
水や食糧、衣類や住む家、仕事、色々あるが、私はその中に「教育」を挙げたい。
水や食糧が体に栄養を与えるものであるとすれば、教育は心の栄養を蓄えることだと思う。
学校へ行くこと、知識を得ること、お友だちと遊んで、一緒に成長すること。それらは彼らの成長に必要不可欠だし、知識を得、健やかに育った子どもたちの心は、豊かな社会を築く基盤となると、私は信じている。
ともすると緊急時の教育は、ほかのベーシックニーズに押されがちな現状があるが、私は教育は水や食糧と同じくらい大切なものだと思って働いている。
これから、少しずつ事業について、ヨルダンで出会う子どもたちについて、お伝えできればと思う。
この記事を書いた人
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イギリス、マンチェスターメトロポリタン大学にて政治学部卒業。
大学在学中にWFP国連世界食糧計画にてインターン。
2010年9月より支援事業部 緊急人道支援課(旧 海外事業部 緊急人道支援課)ジュニア・プログラム・オフィサーとして勤務。2012年9月よりプログラム・オフィサーとして勤務。2016年7月退団。
趣味:読書、映画鑑賞、ダイビング
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