【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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「未来ドラフト」エピソード0~誕生秘話~

撃沈。のスタート

あれは、京葉線の中。

とある大胆な「難民問題啓発プロジェクト」を某企業に提案に行った帰り道。
広告代理店の制作会社に勤めているICU大学、女子サッカー部の後輩、松田千広さん(以下、セン)と撃沈中

撃沈したものの、色々と見落としていた部分に気づかせてもらい、次に繋がる有意義な訪問だった。

・・・とはいえ、テンションは低め。しかも、京葉線。
都心に住んでいる私たちにとっては、なんとなく、アウェー。

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「世界難民の日(6月20日)」。この国際デーに合わせて、日本の若者向けに、斬新で大胆な「難民問題啓発プロジェクト」を始動したい!と、意気揚々と某企業に突撃したのだ。

しかし、そこでいただいた指摘に、とても納得させられた。

「日本の若者だって難民問題があることは知っているだろうし、10円の寄付を嫌がる人はいないでしょう。必要なのは10円を寄付するきっかけであって、『啓発』ではないのでは? 知らせてどうするの? それに、どこまで詳しく知ればいいの?

と。

確かに、難民と移民の違いを正確に言えるようになってほしいわけではないし
最新の難民数を覚えてもらいたいわけでもない。

じゃあ、何?何を日本の若者に求めている?

「半ば強制的に知らされて募金させられるより(撃沈した提案は、斬新な形で難民問題と出会ってしまうという仕組みだった)、『難民問題について、難民の暮らしについてもっと知りたい』と思わせるようなきっかけ・仕掛けのほうがいいよね」

目は開いているけど何も見てない、口だけが動いている、夕方の京葉線。

しかし6月20日が刻々と近づいてきている中、落ち込んでいる時間などなかった。

「未来ドラフト」

するとセンが

「アイデアコンペみたいなの、どうですかね」と。

某企業で撃沈してからわずか30分程度。もう次の案で盛り上がった。

東京駅で京葉線を降りて、すぐさまにカフェに入り、某企業に同行していた上司に新たな企画を説明し、検討課題は色々残すものの、これでいこう、となった。

数日後、センスにあふれるセンが、アイデアコンペの名前を「未来ドラフト」で提案してくれた。
その時に出ていた他のタイトル案はいくつかあったが、「未来ドラフト」で満場一致。

センと。(左が筆者)

センと。(左が筆者)

寝ても覚めても、「未来ドラフト」

苦戦したのは、サブタイトル。「未来ドラフト」だけではアイデアコンペであることが分からない。本質を表現しつつ、堅くなりすぎず…かれこれ、「わたしと難民がつながるアイデア・コンペティション」に行きつくまでに実は何十時間もかかっている。

苦戦② サブタイトル

苦戦② サブタイトル

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ここで、何十時間の苦戦を共にした重要人物をもう一人紹介したい。
学生インターンとして協力してくれた、大西みなみさん(以下、みなみん)。彼女も、たまたま、ICU大学。当時、現役3年生。
「難民問題」というテーマに対するそれぞれの経験や価値観

みなみん

みなみん

大学生(みなみん)・アーリー社会人(セン)・ギリミレニアル社会人(わたし)というレイヤーの異なる「若者」

ニュージーランド留学(みなみん)、ドイツ帰国子女(セン)、アメリカ帰国子女(わたし)というグローバルな背景。

全てが集まって誕生したのが「未来ドラフト」

事務所でのミーティング、24時間体制での怒涛のLINE、スカイプ。

カフェでおいしいケーキ食べながら、ちょっとおしゃれな中華料理を食べながら、

期間にしたら3カ月弱ぐらいの準備期間、寝ても起きても「未来ドラフト」のことを考えていた。

ミーティング中

ミーティング中

テーマは、「平和」?

サブタイトルの次に苦戦したのが、なんといっても、課題テーマ。
これにも数十時間かかっている。

お風呂の中でも、電車の中でも、トイレの中でも、いつでもひらめきを待っていた。
ジムで筋トレしている時は、
「ビディビディにジムつくるのはどう?」とか言ったり
レストランでメニューを見ているときは
「いろんな分野から選べるようにするのもありかもね」とか言ったり。

課題テーマのアイデア集

課題テーマのアイデア集

初めは「平和」をテーマにしていなかった。
目指すべき大事な世界観だからこそ、日本の若者に考えてもらうには少し荷が重すぎるのではないか、難しいのではないか、そもそも「平和」ってどういう状態なのか、などなど何回堂々巡りしたことか。

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そこで、私は「平和」とは何かを考え直すために、ゴールデンウィークを使って沖縄へ旅行した。

南スーダンと同じ「地上戦」を経験した沖縄。高校の修学旅行で一度は訪れていた平和記念公園もひめゆりの塔も、まったく違う場所に思えた。子を目の前で殺された母親の手記や、親友を目の前で殺されたひめゆり隊の証言。私たちがやろうとしている「未来ドラフト」は、このような惨事を生き延びた子どもたちに「平和」を届けること。

言うほど簡単ではないのは承知していたつもりだった。
けど、ただの「つもり」だった…
ここでは割愛するが、沖縄では色々なことを考えさせられた。

ビディビディに住む子どもたちにとって、”一生忘れられない授業”を考えてください。

会議中、センが「ゲシュタルト崩壊*が起きている…」とつぶやいた時には
「え?なにが起きた?出たドイツ帰国」、即脱線。
おかげさまで、今でも「ゲシュタルト崩壊」という言葉は覚えているし、なんなら良く使うようさえなった。
*ゲシュタルト崩壊:同じ文字を長い間見つめすぎると、姿かたちが壊れ、個々の構成部品に切り離されて認識されてしまう現象

ゲシュタルト崩壊を起こしながら、時にはイラついて八つ当たりしながら、お菓子のパッケージを眺めながら「なんみんの里」とかワケわからないことを言いながら、議論に議論を重ね、

なんみんの里?

なんみんの里?

ビディビディに住む子どもたちにとって、”一生忘れられない授業”を考えてください。

にたどり着いた。

何が難しかったかって、某企業の指摘どおりの
「難民問題について、どこまで詳しくなればいいの?」問題。

難民問題や難民支援というのは、「難民」を支援することだけを指すのではなくて、難民を受け入れている国や地域に住む人たちにかかる負担をどのように国際社会が支えるか、というのも大きなテーマ。

つまり、「未来ドラフト」の舞台になっているビディビディ難民居住地(ウガンダ北部)というのは、南スーダンから逃れた難民だけが暮らしているのではなく、ウガンダ人も暮らしている。だから、課題テーマの中で、「難民の子どもたちに●●を届ける」という表現は分かりやすいんだけど、実際の支援内容と異なるし、表現としても適切ではない。

課題テーマ、どうすれば伝わるのか。

課題テーマ、どうすれば伝わるのか。

でも、「難民問題」と心理的距離が遠い若者たちにそこまで細かく説明する必要がある?
しかも、なるべく短くおさめたい「課題テーマ」の中で。

そして、実は言葉も少し違う。「難民キャンプ」ではなく「難民居住地」問題。
ビディビディは、難民キャンプではなく、世界有数の難民居住地。一時的な保護ではなく、永住権を与えている。

ビディビディ難民居住地

ビディビディ難民居住地

でも、日本の若者にとっては「難民キャンプ」に馴染みがあるし、「難民居住地」となった瞬間に「むずかしそうだからやーめた」とならないか。

入り口でつまずかせる必要があるのか?
そこまでして、いわゆる「正しい」表現をするべきなのか?

いやー、青春した。
今振り返ると、あの時期は、めちゃくちゃ、楽しかった。

グランプリはどうする?

そして、エントリーする人にとって大きなモチベーションとなっている
「グランプリ受賞チームは難民居住地に訪問してアイデアを実現!」というのは実は当初はなかった。

初年度審査員、2年目は監修アドバイザーとして、多大なるご協力をくださっている福島治さん(東京工芸大学で教授をされているので、私たちは福島先生と呼んでいる)。

「未来ドラフト2018」で審査員をしてくださった作曲家の宮川彬良さんと福島先生(右が福島先生)

「未来ドラフト2018」で審査員をしてくださった作曲家の宮川彬良さんと福島先生(右が福島先生)

「自らアイデアを実現できるようにしてあげるべき。うまく実現できるかどうかではなく、挑戦することに意味がある」とアドバイスくださったのは、福島先生だ。その会議のことを今でもよく覚えている。即日(その場でだったかな?)そのアドバイスを即採用させていただき、グランプリの副賞に加えた。

未来ドラフト2018のグランプリチーム。ビディビディでアイデアを実現した

未来ドラフト2018のグランプリチーム。ビディビディでアイデアを実現した

そして、福島先生は、疲弊して這うように生きている私を見て、サプライズでギフトと手書きのお手紙を送ってくださった。福島先生も大手広告代理店に勤務されていたので、無から有を産み出す大変さと苦難をよくご存知だからこそ、手紙に書かれていた言葉には重みがあり、その日、私は励まされ、再び立ち上がった(リアルに)。

「未来ドラフト2020」

ここには書ききれない多くの人たちのサポートと協力があって誕生した「未来ドラフト」。
この場を借りて、深く感謝申し上げます。
本当にありがとうございます。

今(2019年9月現在)、「未来ドラフト2019」のグランプリ受賞チームがアイデア実現に向けて挑戦中。その裏で、セン「未来ドラフト2020」を企画中。

みなみんは、2020年3月卒業予定。(第一希望への内定、おめでとう!)

今も、3人のLINEは存在し、時々集まっている。
我ながら、今後の私たちが楽しみ。個人としても3人としても。

 

マーケティング第1部 コミュニケーション課
堂道 有香


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「未来ドラフト2018」若者のアイデアで、未来を救う

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ここでは、涙の数だけ、強くなれない
「生きていれば、また会える」という嘘

この記事を書いた人

WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
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