さっきから、蚊帳の中に止まっている巨大な蛾(が)から目を離せない。
はじめは壁に張り付いていたのに、追い払うのに失敗して、まさかの蚊帳内。
さらに、ベッドの下には、巨大な蜘蛛(くも)もいる。釜じいみたいなやつ。
腕立てなんてしなければ、それを知らずに済んだかもしれなかったのに。
もう、知らなかった頃には戻れない。
私は、今、ウガンダのビディビディ難民居住地(南スーダン難民が暮らす世界最大の難民居住地)というところで、「未来ドラフト~わたしと難民がつながるアイデア・コンペティション~」グランプリ受賞チームとそのアイデアを実現しに来ている。
そして、虫に包囲されている。
蛾も蜘蛛も気になっているけど、今夜は格別、気になっていることがあって眠れない。
1つ目に、日中、一緒にサッカーして戯れた難民の男の子に聞かれた質問が、ループする。
男の子:“Is Jackson alive?”(「ジャックソンは、生きてる?」)
わたし:“Jackson? Who is Jackson?” (「ジャックソン?ジャックソンって誰?」)
男の子:“Please, madam, I want to know. Is Jackson alive?”
(「マダム、お願い。知りたいの。ジャックソンは生きてる?」)
わたし:“I’m sorry boy, I don’t know…”(「ごめんね少年、分からないや…」)
これまで数々の貧しい家族や地域を訪れ、心が裂ける経験をしてきた。
(過去ブログ:「生きていればまた会える」、という嘘)
でも、この質問は、これまでの、どの衝撃ともちがった。
「ドクン」って心臓が止まって、身体がかたまる感覚。
これが、銃撃戦や放火、捕虜、射殺から逃れてきた「難民の子ども」なんだ、と。
そして2つ目に、木によりかかって座っていた女の子との会話。
女の子:“When I had to run from my house,
I left my 2 year old brother to die. He had malaria”
(「逃げなきゃいけなくなった時、2歳だった弟を見殺しにしたの。彼はマラリアにかかってた」)
彼女の目からはボロボロと涙がこぼれて、私も、泣かずにはいられない。
そして、言葉に詰まる。
わたし:“I will never forget about you and your brother.
I will be praying for you. ”
(「あなたとあなたの弟のこと、一生忘れない。あなたのために祈り続けるね」)
本心。そして、ハグして一緒に泣くことしかできない。
ビディビディ難民居住地に逃れついた南スーダン難民29万人のうち、21万人が子ども。
多くは目の前で家族を殺されたり、生き別れして、保護者や大人の存在なしに暮らしている。
そう、難民となった子どもの多くは「死」を知っている。
それも、寿命や病気、災害によるものではなく、「人」によるもの。
私が知っている「死」と何がちがうだろう。
いつだったか出回ったことばを思い出す。
「東京で10人死ぬと、日本が驚く。
ニューヨークで100人死ぬと、世界が驚く。
だけど、アフリカで1000人死んでも、誰も驚かない」
確かに、驚かない。
なぜなら、分かっているから。
だとしたら、「知っていて、分かっていて、なぜ今日も “何も” しなかったのか」が問いなのでは。
「すべての人々に“何もかも”はできなくとも、
だれかに“何か”はきっとできる」
私は、いつだって、ワールド・ビジョンのこの理念に戻ってくる。
眠れないけど、今日の会話を思い出しながらスヤスヤ眠れるよりは良い。
蛾と蜘蛛、どうしよう。
マーケティング第1部 コミュニケーション課
堂道 有香
紛争で難民となった子どもたちを、日本から支援する方法があります
突発する紛争で難民となる子どもの命を救うために。
避難生活が長期化する子どもたちの未来をつくるために。
寄付金額を選び、負担のない期間だけ支援する方法があります。
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【堂道スタッフの過去のブログ】
・私の人生を変えた品川マック ~あなたのコーヒーはスモール?レギュラー?~
・ここでは、涙の数だけ、強くなれない
・「生きていれば、また会える」という嘘
【未来ドラフト★アイデア実現ブログ】
・ダメになっていると言われがちな「最近の日本の若者」?(国際基督教大学)
・幼少期の14年間を中国で過ごし「アイデンティティ」に悩み、目覚めた私(サセックス大学院)
・持続しなくちゃ意味がない」(東洋大学卒)
・ 形式的には「韓国人」実質的には「日本人」。私は、「境界人」(東京大学大学院)
・「常識」だと思っていることを「疑う」(東京大学大学院)
・ 学ぶうちに「憤り」や「情けなさ」の一次感情が消えていた(慶應義塾大学)
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この記事を書いた人
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