【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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WVインターンが聞く! シリア難民支援の現場から

国際協力と聞いて、皆さんはどんな印象を持つでしょうか。
「実際のところ現地ではどんなことが行われているのか分からない」
「私がした支援って、いったいどんなふうに届くんだろう?」
そんな疑問を持ったことはありまんせか?

こんにちは、初めまして。
昨年4月からワールド・ビジョン・ジャパン(以下WVJ)のマーケティング第一部新規ファンドレイジング課でインターンをしている前岡です。

冒頭に書いたような疑問、国際協力に興味がある、または何らかの形で参加したことのある方なら、一度は持ったことがありませんか? 私は大学に入学してからかれこれ丸3年以上、WVJでは1年以上国際協力の活動に関わっていますが、国際協力のお仕事は未だに見えないこと、わからないことだらけです。そこで、同じ思いを持っている方々のお役にたてればと、「WVインターンが聞く!」と題して、WVJの現場で働く職員の方々へのインタビューを通じ、現場のリアルな声と体験談をお届けする連載を始めることになりました!
ワールド・ビジョンの活動に興味がある方、ご支援者の方、国際協力への理解を深めたい方々などのお役にたてれば幸いです。

さて、初回にお話を伺ったのは、ヨルダンに駐在している渡邊スタッフです!
今年6月の一時帰国時に渡邊スタッフは、WVJの事務所でシリア難民支援の活動報告会を開いてくださいました。
そんな渡邊スタッフに、支援現場での苦労ややりがいなどについてお聞きしてみたいとインタビューをお願いしました。

インタビューの様子(左が渡邊スタッフ、右が筆者)

インタビューの様子(左が渡邊スタッフ、右が筆者)

本題に入る前に、昨年の夏に旅行で3週間ほどアンマンに滞在した経験もある筆者から、ヨルダンがどんな国なのかについて、軽くご説明します。

70年以上前から難民を受け入れ続けてきたヨルダン

ヨルダンは中東地域にある内陸国です。面積は8.9万平方キロメートルと、北海道よりも一回り大きいくらい。ここに約970万人の人々が暮らしており、その7割以上が隣国のパレスチナからやってきた難民やその子孫であると言われています。
ヨルダンは周囲をパレスチナ、イスラエル、シリア、イラクなどの情勢不安定な国に囲まれており、それらの国々の政変や紛争などの様々な影響を受けて、古くから多くの難民を受け入れてきました。

シリア・ヨルダン地図

シリア・ヨルダン地図

そんなヨルダンで暮らすシリア難民の方々にワールド・ビジョンがいったいどんな支援を行っているのか、またそもそもなぜ支援が必要なのかを、渡邊スタッフにお聞きしました。

難民だけど、難民キャンプにはいない?

渡邊スタッフ(以下、渡邊)「2011年にシリア危機が発生して以降、ヨルダンにも多くのシリア人難民が流入しており、現在その数は130万人近いと言われています(難民として認定されているのは66万人程度)。多くの難民受け入れ国と同じようにヨルダンにも「難民キャンプ」があり、もちろんそこで生活している人もいるのですが、特徴的なのは、難民の8割以上がヨルダン国民と同じ圏域で生活している「都市難民」であるということです」

前岡「それを知った時はとても驚きました。というのも、昨年の5月、アンマンが中東地域で最も生活コストの高い都市になったという調査結果を見たことがあったんです。実際、夏にアンマンを訪れた際は、日本と比較してもそう変わらないかむしろ値が張るぐらいの生活用品もたびたび目について、「こんな中で難民の方々はいったいどうやって生活しているんだろう」と思った記憶があります」

現地スーパー(旅行中に撮影したもの)

現地のカフェで(筆者が旅行中に撮影したもの)

渡邊「もちろん、難民認定をされている人に対しては、困窮度に応じてWFP等の国連機関やNGOから家賃補助、食糧補助が出ています。また、家族が中東の別の国へ出稼ぎに行ってある程度の生活費を稼いでいるケースもあります。ビジネスでもともとヨルダンにいたり、経済的に余裕がある家庭もごく一部にはあって、そうした方々はわざわざ難民申請をしていない可能性もありますね。しかし、やはり難民の大半はヨルダン国内の雇用保護のために就労が制限されていたりして、非常に生活が困窮している人々です」

ヨルダンのシリア難民の方

ヨルダンのシリア難民の方

子どもたちに教育の支援が必要な理由

渡邊「シリア人難民の子どもたちは特に厳しい状況に置かれていて、前に述べた貧困のほかに、教育問題やコミュニティ内部でのいじめ、紛争・難民生活で負った精神的な問題を抱えているケースもあります。知らず知らずのうちに家庭内のフラストレーションを敏感に感じ取ったり、生活環境の劣悪さから強い精神的ストレスを抱え込んでしまうのです」

前岡「そうした様々な問題がある中、WVJが「教育」にプライオリティを置いて支援を行う理由はなんなのでしょうか?」

渡邊「もちろんすべての問題に対してアプローチは必要なのですが、WVJが教育面に力を入れているのは現地に強い教育支援のニーズがあるためです。数多くの難民を受け入れたことでヨルダン国内の学校はパンク状態になっていて、生徒一人に割ける労力や授業時間数がどんどん少なくなっています*1。WVJがこれまでの活動経験で養った強みでもある教育支援のノウハウを、そのサポートに充てているのです。

「難民支援」と聞いて一般的に思い浮かぶのは物資の配給や医療などの分野だと思うのですが、長期の目線で見ると、紛争終結後の復興にポジティブな影響を及ぼす点で教育支援も非常に重要です。短期・中期的には子どもたちが紛争で負った心の傷を癒したり、危険な外部組織から身を保護したり、教育を通じて「暴力ではなく対話で紛争を解決する」道を学んでもらうことも期待できます」

*1:シリア難民の子どもたちを受け入れているヨルダンの公立校では、「シフト制」で授業が実施されています。例えば、午前中はヨルダン人の子どもたち、午後はシリア難民の子どもたち、という風に交代制で学校に通っているのです。このシステムを実施するとたくさんの子どもたちに教育が行き渡るメリットがある一方で、一人が勉強に費やすことのできる時間が短くなってしまうという難点もあります。

前岡「ただ「教育支援」と言っても本当に様々な効果があるんですね。私はただ授業をしてテストの点数を上げるようなケースを想像していたので、支援の力が子どもたちの意識醸成にまで及ぶことがとても意外でした」

渡邊「公立学校の授業では先生一人が50名ほどの生徒を抱えているので一人ひとりと深くかかわることが難しい一方、補習授業の場ではそれが可能で、細かい学習指導はもちろんのこと、ソーシャルスキルを培うチャンスにもなるんです。補習授業の先生が子どもたちを観察して、問題があると感じた子をカウンセラーにつないだりすることもあります」

前岡「でも、点数化ができない「内面」と向き合うとなると、やはり難しいことも多いのではないですか?」

渡邊「そうですね。成果の測定も難しいですし、なにより導入に苦労します。少しでも学びの楽しさを知ってもらうために授業に遊びの要素を入れ込んだり、先生と積極的にコミュニケーションを図る機会を持ってもらったりと工夫はしていますが、子どもたちは本当に正直で元気で、苦労も絶えないです(笑)」

前岡「そういった大変な活動でも、続けよう、頑張ろうと思えるのは何か原動力になっているものがあるのですか?」

渡邊補習授業に参加してくれた子どもたちにだんだんと自信がついていくのがわかる時はとても喜ばしいです。補習授業にやってくる子は、最初ものすごく引っ込み思案か荒れている子が多いんですが、参加していくうちにレクリエーションや先生との関わり合いを通じて、だんだんと明るく前向きになっていきます。始めは全く積極的ではなかった子が補習授業を卒業するころには先生への感謝を述べてくれるようになって、それに喜ぶ先生を見ていてもとてもうれしい気持ちになりますね」

前岡「本当に様々な人たちの連携と努力で支援が行われているのですね。支援の背景、そして重要性をとてもよく理解することができました」

私たちが日本からできること

いかがでしたでしょうか? 今回はヨルダンに駐在している渡邊スタッフから、シリア難民支援の現場の声を届けていただきました。
皆さんが国際協力の現場を理解する、一助となれば幸いです。

シリア内戦が勃発してから約8年半が経過した今、日本国内では内戦や難民に対する関心が薄れ、関連する報道を目にすることも明らかに減りました。またそれに伴って、年々他国のドナーからヨルダンへの資金供給も減っている傾向にあります。

シリアの情勢が安定しない現状では、難民の方々はこれから先何年もヨルダンで生活を送ることになるかもしれませんが、世界中からの寄付がなくなってしまうとヨルダン国内に難民を保護する力がなくなり、難民の方々が居場所を失ってしまう可能性もある、と渡邊さんはおっしゃっていました。内戦の復興には、戦闘に費やされた何倍もの時間と労力がかかります。そしてその実現のためには、復興を担う人々がしっかりとした教育を受けていることが必要不可欠です。

6月に行った報告会には、高校生や20代の会社員の方など、若い方々がとても多く足を運んでくださいました。
みなさんがメモを取りながらとても熱心に難民や現地の事業について知ろうとしてくださったこと、その時のことをSNSでシェアしたりコメントを寄せてくださったことに、スタッフ一同とても励まされました。

今も続くシリア内戦、そして難民の方々の生活、子どもたちの教育のために、あなたの力を貸してください。
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マーケティング第一部 新規ファンドレイジング課
前岡 和

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この記事を書いた人

WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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