【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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WVインターンが聞く!ベトナムとエチオピアでの母子保健奮闘記

初めまして。今年の4月から、ワールドビジョン・ジャパン(以下WVJ)のマーケティング第1部コミュニケーション課でインターンをしている岩田です。

「WVJインターンが聞く!」シリーズ第2弾です。

今回、私は支援事業部の木戸スタッフにインタビューする機会をいただき、ベトナムエチオピア母子保健活動で駐在していたときのストーリーを伺いました。

木戸スタッフへのインタビュー(手前が筆者)

木戸スタッフへのインタビュー(手前が筆者)

将来、国際保健分野で活躍したいと思っている私にとって、現地からのリアルな話は驚きの連続で、この記事を書きながらモチベーションが高まっています。
木戸スタッフの支援への想いを、ブログを読んでいる皆さま一人ひとりの心に残るように伝えていきたいと思います。

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学生時代に感じたこと

岩田「よろしくお願いします。最初に、ワールドビジョン・ジャパンに入団したきっかけ(理由)を教えてください」

木戸スタッフ(以下、木戸)「きっかけとして、信仰に関わることで大きい部分がありました。私はイギリスの大学院で、リプロダクティブヘルスについて学んでいました。たくさんの開発関係の人が一緒に学んでいたのですが、“なぜ支援をしているのか”となったときに、周りと共感できる部分が少ないと感じることがありました。いわゆる発展途上国と呼ばれている国から勉強しにきている学生もいて、彼らは信仰に根ざした生活をしているのですが、先生の教える理論や考え方は、時々、そういう人たちを尊重したものではなかったり、信仰を持つ人をあからさまに“時代遅れだ”という先生もいたりしました。それは果たして、他の価値観を持つ人たちにちゃんと耳を傾けているものなのだろうか? と疑問に思ってしまったんです。

そこで、働くなら、価値観を共有できる人と一緒に働ける方が、私の中で自分の信仰と仕事に一貫性を持たせることができると思いました。大学院を終えて就活しているとき、ワールド・ビジョンについて調べてみたら、キリスト教精神に基づく団体で、開発援助のプロとして世界各国で活躍していることを知りました。私にもここでできることはないかな、と思ってWVJを選びました」

WVJに入団して~東日本震災の経験~

岩田「実際にWVJで仕事をしてみて、入団する前に思い描いていたビジョンは達成できましたか?」

木戸「ありがたいことに、私が興味を持っていた母子保健事業に関わることが出来たことに加え、団体の方向性が自分の信念と一致していたので、よかったと思います。また、東日本大震災の支援活動に携わることができたこと。振り返ると、あのときに学んだことがすごく貴重だったと思います」

岩田「東日本大震災の時は、どんな活動をしていたのですか?」

木戸「最初は情報収集から始めて、支援に関わり始めたのは6月にチャイルド・フレンドリー・スペース(子どもたちが安心して過ごせる居場所)にスタッフが1週間ずつ交代で行って支援する活動からでした。その後、これからの復興に向けて、事業の構想・活動計画の作成に携わるチームに配属されました。活動する中で、”NGOが入る場所”がなかなか見えてこない時期もありました。支援開始期には、ワールド・ビジョンがどんな団体なのか説明するところから始めたそうです。最初の緊急期には、布団も送っていたことがあったので、「布団屋さん」と思われたこともあったそうです」

お母さんと赤ちゃんの健康のために奮闘 in ベトナム・エチオピア

エチオピアの保健センターのスタッフと木戸スタッフ

エチオピアの保健センターのスタッフと木戸スタッフ

岩田「国外ではベトナムエチオピアでも母子保健の活動をされていたんですよね(木戸さんの過去ブログにもエピソードが載っています!)。どんな活動をされていましたか? 」

木戸ベトナムでは北西部の少数民族が住む地域で活動していました。その地域は、保健センターはあるもののまだまだ自宅出産が多い地域で、保健センターで出産することを促す活動を行っていました。また、出産介助者を教育するプログラムへ村の女性たちが参加できるように支援をして、いざとなったときに介助できる人材になってもらうような、人材開発の活動もしていました。エチオピアでも同じような活動を行っていました」

岩田「それぞれの地域には、活動前にはどんな課題があったのでしょうか」

木戸ベトナムでは、郡病院や保健センターの設置など保健のシステムは整っているのですが、少数民族の住む地域では、伝統的慣習などがあって、実際に保健サービスにアクセスする人が中々少なかったのが大きな課題でした。

エチオピアは、他のアフリカの国に比べて保健人材もシステムもしっかりしていました。でも、アクセスが悪くて『保健施設で出産する方が安全だ』とわかっていても行けなかったり、そもそも慣習として、『出産は”病気”ではなく自然なことだから、わざわざお金を払って他の子どもを誰かに預けてまで遠いところまで病院まで行く必要がない』と思っている人もたくさんいたり。収穫の時期はギリギリまで働かないといけないという妊婦さんもいました。

そういう背景を受け止めたうえで、ではどうしようか、と自分たちで考えてもらったりしていました。また、“保健センターで産む方が清潔で安全である”ということを啓発していても、そもそも”清潔”という概念がない地域で、清潔さの重要性を伝えることは難しかったです」

岩田「日本では、妊娠がわかったら、無料で何回も妊婦検診に行って、病院で産んで、産後ケアもしっかり、というのが普通なので、かなり違うんですね」

木戸「国の勧告があまり知られていなかったり、出産のプライオリティが低かったりするのが現状でした。そして、保健センターが一概に良いというわけではなかったんですね…。不必要な切開が多いところもありました。それでもやはり清潔で設備があるところで出産するのが安全なので、保健センターでの出産を根気よく勧めました」

岩田「母子保健の観点から、ベトナムとエチオピアで違うことは何かありましたか?」

木戸ベトナムの事業地の少数民族は、山に家族単位で点在して暮らしているので、地域やコミュニティという意識はエチオピアと比べて低かったかもしれません。例えば、妊婦さんを何人かで協力して担架でセンターに搬送するときに、手伝いにきた住民から“これをすれば、WVはいくら払ってくれるの?”と聞かれたことがありました。

一方、エチオピアは教会の強い影響のおかげか、コミュニティの意識が強く、妊婦の搬送も当たり前のように地域で協力して行うし、遠くからきた妊婦さんが滞在・休憩できる場所を保健センターに用意するなど、”妊婦さんをコミュニティで支える”という考え方が強かったです。でも、赤ちゃんが健康に育てなかったり長く生きられなかったりすることに慣れている部分もあり、子どもを失うともちろん悲しむのですが、どこか仕方のないことだと諦めのようにとらえられている部分もあったように思えました」

岩田「赤ちゃんの死が、日本よりまだまだ身近ということなんですね…。では、ベトナムとエチオピアの活動を通して、どのような良い変化がおこりましたか?」

木戸「例えば、ベトナムでは、ある保健センターでのお産が150件中2件から、34件まで伸び、産前検診の受診率も伸びました。また、とても献身的な助産師さんがお産だけではなくコミュニケーション方法も熱心に学んだことで、コミュニティの人がいろいろな情報を得られるようになりました。事業地では、少数民族が点在して住んでいるので、事業で立ち上げた「保健クラブ」で、人が集まって話し合ったり悩みを共有しあったりできるプラットフォームを作ったことだけでも、大きな違いになったかなと。女性たちにとっては、自分の健康について考える初めての機会になったことも、新しいことだったと思います。

エチオピアでは、保健センターの助産師さんたちが、事業で実施した研修で新生児蘇生法を勉強したことで、自分たちでも緊急時に対処できるんだと自信を持つようになりました。実際に、大きな病院に搬送する前に自分たちで対処できる数が増えた、と助産師さんがうれしそうに話してくれました」

岩田「支援が終了した後も自分たちで続けていくための環境や人を育てることは、とても大切なことですね」

現地の人に、わかりやすく伝えるためには?

村落出産介助者が参加者の意見を聞いています(ベトナム)

村落出産介助者が参加者の意見を聞いています(ベトナム)

岩田「保健センターでの出産を現地の人たちに促すために、実際にはどのようなことをしましたか?」

木戸ベトナムでもエチオピアでも、啓発活動をしていました。ただ情報を伝えるだけではなく、劇やゲームを通して、楽しんで学ぶことで、何か心に残るものができたらということを意識していました。また、保健クラブを村に作って、毎月違うトピックを決めて勉強会を開催していました。

ベトナムでは地域の女性へのインタビューをもとにした紙芝居を作って、モン族の声優さんに録音してもらった音声と一緒に見せていました。モン族の人たちは、文字がない分、話をするという文化が大きいので、その文化を大切にしようと考えました」

保健クラブで村落保健員たちが使っていた紙芝居。自宅出産でトラブルが起き、郡病院に搬送されたお母さんに、実際にインタビューして作ったお話

保健クラブで村落保健員たちが使っていた紙芝居。自宅出産でトラブルが起き、郡病院に搬送されたお母さんに、実際にインタビューして作ったお話

木戸「また、“マタニティカレンダー”を作って、日本で説明されているのと同じように、赤ちゃんの胎内の成長を書いた大きな絵を書いて、時期に応じて注意を付け加えてカレンダーにしていました。なぜこの産前検診が必要なのか、を理解してもらうためのコミュニケーションツールとして活用されていました」

ベトナムで使っていた、マタニティ・カレンダー。地域の保健センターの助産師が産前検診の際にお母さん・家族に分かりやすく説明するコミュニケーション・ツールとして活躍

ベトナムで使っていた、マタニティ・カレンダー。地域の保健センターの助産師が産前検診の際にお母さん・家族に分かりやすく説明するコミュニケーション・ツールとして活躍

木戸エチオピアでは、ベトナムとはまた違う啓発のアプローチを2つ行うことができました。1つ目は、「グランドマザーモデル」という、家族の中で妊娠出産に関して影響力をもつ妊婦さんのお母さんや義理のお母さん、そして地域の健康状態を保健センターに報告する担当者に対して、産前健診・施設での出産の大切さやその理由について知ってもらおうという、働きかけの活動です。2つ目は「チャンネルズ・オブ・ホープ」いう、宗教指導者の人へ、聖典の言葉も引用しながら研修を行う、という活動です。エチオピアの人たちは信仰心が強いので、コミュニティで尊敬されている宗教指導者を巻き込むことは大切なことでした。教会に戻ると、今度は彼らが青年・男性グループに話してくれるので、男性への啓発にも繋がりました」

こんな驚くことも

岩田「お仕事の内外を通して、駐在したベトナム、エチオピアで一番驚いたことはなんでしたか?」

木戸ベトナムでは、「家族」と「食」を大切にしているなと思いました。

ベトナム人は8時に出勤して、5時きっかりに帰るんです。夕方は子どもを学校や塾からピックアップして、夕食を作って、家族全員で食べるというのが普通のようでした。
「だって家族のために仕事しているんでしょ。家族を犠牲にしてまで仕事するのはおかしくない?」言うのです。20代でこれからキャリアを積んでいくような人でも、あっさり家族のために仕事を辞めることもあります。日本ではなかなか難しいことですよね。

食については、昼食時間をいつもしっかりとっていました。11:30からオフィスでお米を炊き始めて料理して、12:30に食べ終わって、お昼寝の時間を挟み、13:30から仕事を再開し、17時にきっかり終わらせるという働き方でした。仕事が残っていても、ランチが優先されていました(カウンターパートも同じくランチ優先なので)。人間として生きる上での本質をわかっているなとすごく思って…私はベトナムの働き方が結構好きでした」

岩田「それは羨ましいですね…! 私もベトナムで働こうかな(笑)」

本当の開発支援とは何でしょうか?

岩田「最後はこの質問で締めようと思います。以前、ブログ(「本物とニセモノ」)に、“地域の人と一緒に「本物の幸せとは何なのか」を探求したい”と書いていましたが、答えはみつかりましたか? 木戸さんの考える、本当の開発支援とは何でしょうか

木戸「宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』で、“ほんとうのさいわいは一体何だろう”という、ジョバンニのセリフがあります。私も、”幸せ”というのは相対的な幸せ ー 例えば健康だったり、お給料をもらっていたり、そこそこの生活ができている幸せーで、でも、”幸い”は絶対的なもので何があっても誰にも奪えないものなのかなと思っています。

物質的な支援だけでなく、人々に寄り添うことで、人間の命や人生にはどんな意味があるのかを考えるきっかけになるような支援というか…お腹が満たされて健康で、勉強できていい仕事につけて、ということももちろん必要だと思いますが、人生にはいろいろな、壁が出てきますよね。そういう困難や苦しみに当たった時にどのように立ち向かうのか? そこにどんな意味や価値があるのか? 自分には何が期待されているのか? それを考えてもらうきっかけになる支援も大切だと思うんです。

発展というのは、結局、システムを作ることだけではないと思っています。時代が変われば、人間も少しずつ変わりますし。だから、どの時代の人間も、自分の良心や信念に従ってシステムを選び、変えていくために行動していかないといけないのかな、と思っています。そのためにも、自由で責任ある市民として、命や他の人を大切にするような人…たとえば、そういう根本的なことを考えることの出来る「人間の開発」が、「本物の開発支援」なのかな、と。これが、WVの祈りの「すべての人の心にこのビジョンを実現する意思を」なのだと今は考えています。(ビジョン=すべての子どもに豊かないのちを)

ワールド・ビジョンはキリスト教に基づいた団体として、「どの人の命も神様に望まれ、愛されているから尊い」という根本的な考え方を前提にした支援をしていて、人が人間らしく生きることを目指している支援をしていると思います。WVで働いていて、そういうことを大切にできる支援を、私はすごく好きだなあと思っています」

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木戸スタッフへのインタビューは以上です。いかがでしたか?

お母さんと赤ちゃんが、健康でいられることは、すごく貴重なことです。
日本では、命を落とす妊婦は10万人に5人。対して、ベトナムでは43人、エチオピアでは401人です。
また、1000人の新生児のうち、日本では0.9人が亡くなります。ベトナムでは10.7人、エチオピアでは28.1人です。(UNICEF Data, 2019)

日本のように医療が整った国でも、何が起こるかわからない出産。ましてや、世界には、医療があっても様々な理由で受けられず、大切な赤ちゃんとお母さんの命が危険にさらされている場所があります。出産は、命がけです。

私は、世界の人々が健康でいられるように何かしたいと思って、将来医療に携わる者として日々勉強中ですが、実際のお母さんの声や、お母さんを取り巻く人々の声を木戸スタッフから聞いたことで、まだ行ったこともないけれど、ベトナムベトナム、さらには世界に想いを馳せることができました。

 

最後に、このブログを読んでくださっているすべての方に、私からインタビューです。

「あなたにとって、“本当の幸せ”とは何でしょうか?」

マーケティング第1部コミュニケーション課
岩田

ベトナムに暮らすモン族の女の子

ベトナムに暮らすモン族の女の子

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この記事を書いた人

WVJ事務局
WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
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