国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフブログ

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この気持ち

プロジェクト・アシスタントのTちゃん。

子どもと猫と犬が大好きな、小柄な20代半ばの女性。
村落に行く途中の車中では、よく「この間、インターネットでカワイイ動物の動画を見つけた」と話したりしています。

もう去年の夏の話になりますが、村落での活動の進捗状況を聞いている時に、そのTちゃんがぽつりと話してくれました。

事業地の子犬

事業地の子犬

「村落保健員の中には、やる気がない人もいて、ちゃんと準備会議をしても、スキルアップのための研修をしても、アドバイスしても、学んだことを活かそうとしない人もいるんだ。

保健クラブの後、村落のお母さんたちに、『今日は何を学びましたか?』と聞いても『分からな~い』としか答えてくれない時もあるし。

住民の中には、『何がもらえるか』しか考えていない人もいるし。本当言うとね、たまに疲れちゃって、怒りを感じることもあるんだ。『なんで分かってくれないの』って」

いつもはニコニコ冗談を言うTちゃんのこんな発言を聞いて、ハッとしました。

この地域は、少数民族が大多数を占めるベトナム国内でも貧しい地域で、長年の政府の支援政策で、地域住民にも「支援依存」なところがあります。地域のパートナーの中にも理解を示してくれない人や協力的でない人もいます。

ワールド・ビジョンは、住民たち自身が開発を行っていくために人材育成を通した地域開発を住民とともに行っていますが、このような意識を変えていくには、根気強い説得と時間が必要です。

「この地域の子どもたちとお母さんたちのために働くんだ」という熱意を持って、プロジェクトに参加してきた彼女でも、こんな状況ばかりでは心が折れるのは無理もないな、と共感しました。

しかし彼女と話しているうちに、実は村落保健員たちも同じ気持ちなのかもしれない、と思いました。どんなに啓発活動を頑張っても、地域住民には「当たり前」だと思われているし、何回も「産前検診に行きましょう、保健施設で出産しましょう」とアドバイスをしても、なかなか実行してくれる人は少ない。(これにはほかにも様々な要因があるためですが)

保健省からお給料をもらっていても、それだけで生活できるほどではないので、自分たちの生活のためにも働かないといけない。誰からも感謝されないし、「がんばってるね」とも褒められない。村落保健員に「やる気」がない人がいるのも、啓発活動がマンネリ化してしまうのも理解できるな、と思いました。

そんなことをTちゃんと話し合った結果、私たちが村落保健員のモチベーションを上げるために出来ることは「活動を通して励ますこと」なのかもしれない、という結論にいたりました。

彼らが使いやすいツールを作って彼らが行う啓発活動をサポートし、スキルを身につけて自信をもってもらうために研修やコーチングを行い、彼らに活動の成果をフィードバックし、彼らの頑張りを地域住民や重役に認めてもらうイベントの機会を作ること。

そして事業の成果を保健省にアピールし、彼らの活動へのサポート強化を保健省に啓発していくこと。こうした活動を通して、「自分は地域の人の役に立っているんだ」と実感できれば、村落保健員たちにも、モチベーションを維持してもらえるのかもしれない。

Tちゃんの「なんで分かってくれないの?」という「怒り」の気持ちは、Tちゃんの、地域住民に対する想いが強いからこその感情なのだと思いました。

そしてTちゃん自身も、「私の頑張りも分かってほしい、きちんと認めてほしい」という気持ちがあるのでしょう。私はそれを理解していなかったな、と反省しました。

Tちゃんが撮影したモン族の女の子

Tちゃんが撮影したモン族の女の子

その後、難しい地域パートナーと交渉して調整してもらわないといけない事態が発生し、その調整役をTちゃんに頼むことになりました。

「ごめんね、いつも大変な役をしてもらっちゃって」と私が言うと、
「大丈夫。これは私の仕事だから」とTちゃんは言ってくれました。

その顔はキリっとしていて、かっこいい、と思いました。

この記事を書いた人

木戸梨紗
木戸梨紗エチオピア駐在 プログラム・オフィサー
上智大学比較文化学部卒業(専攻:社会学・文化人類学)。ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院でMSc. Reproductive & Sexual Health Research修士を取得。
2010年1月 ワールド・ビジョン・ジャパン支援事業部開発事業課(旧 海外事業部開発援助事業課)、ジュニア・プログラム・オフィサーとして勤務。2012年1月より、プログラム・オフィサー。2012年12月より2016年3月までベトナム駐在。2016年4月からエチオピア駐在。
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