【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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私がワールド・ビジョンで働く理由 ~忘れられない「悔しさ」があったから~

こんにちは、ワールド・ビジョン・ジャパンで働き始めて4年目になる大住です。

10年前、私はアメリカの大学で国際関係学を学んでいました。
そして大学2年生で、はじめて海外でのボランティアに参加しました。大学の仲間と一緒にインドの学校に泊まり込み、子どもたちに授業を教えるというボランティアでした。

将来は国際協力の仕事をしたいと思っていた私は、はじめての海外でのボランティアが楽しみで仕方ありませんでした。
人の役に立てて、大学の仲間と楽しい思い出が作れる! と、甘く考えていました。
しかし、私がインドでのボランティアを通じて得たものは「達成感」でも「楽しい思い出」でもなく、きっと一生忘れられないであろう 「悔しさ」 でした。

インドの「不可触民」の子どもたち

私がボランティアで訪れたのは、インドに古くからあるカースト制度で最下層とされる「不可触民」として産まれてきた子どもたちのための学校でした。

不可触民はその名の通り触れてもいけない穢れた人々とされ、教育、就職、結婚など全ての面で差別されます。普通の学校では酷いいじめの対象となることも多いため、このような特別な学校があるのです。

勉強を教えていた学校で、夜の自習タイム

勉強を教えていた学校で、夜の自習タイム

学校の校長先生と、不可触民の方々が暮らす地域も訪ねましたが、その暮らしは本当に厳しいものでした。
枝を集めて作られた家の入り口はなぜかとても小さく、大人は這わないと出入りできません。校長先生が説明します、
「身分の低い人なのだから、表に出てくるときは腰をかがめ、這いつくばってでてくるべきという慣習があるのです・・・」
そう聞いて、人生のあらゆる局面で常に差別がつきまとう人生が、どんなに過酷かを突き付けられた気持ちでした。

そんな過酷な環境を生き抜いてきた子どもたちは、みんな驚くほど勉強熱心でした。午後の授業が終わっても帰らず、真っ暗になるまで勉強していました。成績優秀な子は、奨学金で高等教育が受けられる、そうすれば良い仕事につける。

子どもたちは、今の生活から抜け出すには、勉強で優秀な成績をとることが唯一のチャンスだと知っていました。
私も、他のボランティアも、少しでもこの子どもたちの力になりたいと、昼は授業、夜は自習を手伝いました。

「私が遠くの学校に行ったら、代わりにお母さんや妹たちが殴られるから」

そんな子どもたちの中でも、特に優秀な女の子がいました。
家族はお父さん、お母さん、妹の4人家族。お父さんは不可触民として生きることに押しつぶされてしまい、アルコール依存症に。家族に暴力をふるうこともありますが、離婚しても差別で仕事に就けないため、お母さんや子どもたちは必死に耐えています。

そんな彼女の夢は、お医者さんになること。
その夢はもうすぐ叶うところまで来ていました。都市部の優秀な医学部に入学するのに十分な成績で、さらに校長先生が奔走し奨学金ももらえることに!!

私は当然医学部に行くと思っていたのですが、彼女はうつむいて、小さな声で言いました。
「行きません」
驚いて、どうして?と尋ねると、
「私が遠くの学校に行ったら、代わりにお母さんや妹たちが殴られるから」

私は、かける言葉を見つけられませんでした。
ずっと勉強を頑張ってきたのに、進学できない。こんなに優秀なのに、より良い人生のチャンスすらもらえない。
そしてそんな彼女に、私ができることは何もないことが本当に申し訳なく、悔しくて仕方ありませんでした
この悔しさは、今も忘れることができません。

子どもたちの「夢」を応援するために

私は彼女との出会いを通して、貧困に苦しむ子どもたちに必要なものは、お金やものだけではないと学びました。
それはお金やものを送るよりずっと大変で、時間もかかることですが貧困の根本原因を解決し、子どもたちの家庭や地域全体を変えていくことが必要だと思うのです。

だから私は、チャイルド・スポンサーシップを通じて地域全体を変えていこうとするワールド・ビジョンで働きたいと思いました。

例えばチャイルド・スポンサーシップの支援地域では、子どもたちへの支援に加え、アルコール依存や家庭内暴力など問題を抱えた家庭に対してスタッフが粘り強く啓発活動を行っています。時に、そうした家庭に泊まり込んで話をすることもあります。

これから家庭内暴力のある家に泊まり込むと話した、カンボジアのシネットスタッフと

これから家庭内暴力のある家に泊まり込むと話した、カンボジアのシネットスタッフ

こうした地道な支援の結果、生活が改善し、夢をかなえることができた子どもたちの顔は本当にキラキラ輝いています。

あの日、進学をあきらめた彼女には何もしてあげられませんでした。

けれどあの経験があったから、彼女のような子どもたちに本当に必要な支援とは何かを学ぶことができ、そしていま、その支援を届けるお手伝いができることは本当に幸せなことだと思います。

いまも世界には、彼女のように厳しい環境に生まれ、チャンスすら貰えない子どもたちがいます。
そんな子どもたちが「夢」をかなえることは決して、簡単なことではありません。

けれど、ワールド・ビジョンは今日も、過酷な環境で生きる子どもたちが「夢」をかなえられるよう世界中で活動しています。
ぜひ皆さまも、この活動を通して子どもたちの「夢」を応援していただければ幸いです。

WVJは厳しい環境に生きる子どもたちに支援を届けるため、クリスマスまでに3000人のチャイルド・スポンサーを募集しています。

“何もかも”はできなくとも、“何か”はきっとできる。

マーケティング第1部 新規ファンドレイジング課
大住 祐里奈

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【大住スタッフの過去のブログ】
「寄付は、本当に子どもの助けになるの?」
子ども+教育=驚きの効果!
日本からの支援が、フィリピンの被災地に起こした「奇跡」

この記事を書いた人

WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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