今日は、日本の皆さまからの募金と外務省から助成金により、エチオピアで行っていた事業についてご紹介します。
「カイゼン活動」
エチオピアではお母さんと赤ちゃんの健康が守られるよう様々な活動を行いました。
エチオピアの支援地域に建設された、産科棟の引き渡し式の動画
その中の一つに保健センターでのカイゼン活動があります。ごく簡単に紹介すると、カイゼン活動は「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5Sを基本として、スタッフの労働意欲を高め、生産性を高めることを狙いとしています。
皆様も病院に行ったときに書類が床に散らばっていて、道具の整理もなされていなかったら医療事故が起こりやすいことは想像できるかと思います。私たちがカイゼンを行った保健センターではまさに物が床に散らばり、患者のカルテを1つ探すのに5分以上かかってしまうような状態でした。このような状態では助産師に安全なお産のためのトレーニングを行ってもどれほど効果があるのか覚つきません。なぜなら、お産の時に使う道具がきちんと消毒されていなかったら、注射の針がどこにあるかすぐにわからなかったら、お母さんの状態が書かれたカルテがすぐに見つからなかったら、一刻を争う状況の際に適切な処置ができないからです。
そこで事業では、エチオピアカイゼン機構(EKI)と協力して5つの保健センターと2つの病院でカイゼン活動を行いました。
EKIが行うカイゼンのやり方では、ガードマンや掃除夫を含む対象施設で働く関係者すべてを集めて講習を行います。そして主に5Sがきちんと計画通りに進んでいるかを定期的に訪問して確認するのです。これにより、施設全体でカイゼン活動を行う体制が作られてゆくことが狙いです。
「カイゼン」の結果は・・・?
この活動の結果、カイゼン活動の対象の1つであったアイケル保健センターではわずか2カ月で見違えるほどの成果を上げることができました。写真でいくつか紹介したいと思いますが、床に散乱していた書類はきちんと分類されてラベルも貼られました。
薬も適切に分類され、作業がしやすいよう作業机は役割ごとにスペースが分けられました。倉庫もきれいに整理整頓され、すぐに物が出せるようになりました。
このような改善が保健センターのすべてで行われ、結果として、カイゼン前に5分かかっていたカルテ探しは1分に、3分かかっていた道具探しも1分に、というようにほとんどの作業の時間が半分以下に短縮されました。
中でも私が感心した工夫はカルテ部屋の明かり取りです。写真を撮った時にはまだちょっと整理しきれていない感じではありますが、お見せしたいところはそこではなくて、天井からの明かりです。これは今まで停電になると暗くなってしまうカルテ部屋の屋根を、半透明な素材に変えることで働いている昼間はいつでも明かりが取れるようにしたものです(撮影時は曇りでした。雨が降っていてもカルテの番号が見える程度には明るいです)。
素晴らしいことに、この屋根を新しくする工事の代金は、カイゼン活動をする中で見つけられた、壊れて使えなくなった机や棚、発電機などを売却することで得たお金で支払われています。
この保健センターの看護師のフェンサウンさんは「カイゼン前はあちこちに使えないものが散らばっていたけど、カイゼンによってほとんどは再び使えるようにメンテナンスすることができるようになった。部屋も整理整頓が行き届いて、スタッフのやる気が上がりました。カイゼンは私たちのサービスの質を良くしてくれました」と話してくれました。
現在エチオピアではこの活動を州レベルの大きな病院で行い、その後、下位の病院に広めてもらえるよう新しい事業の計画を作成中です。これによりエチオピアの赤ちゃんとお母さんが一人でも多く健やかに育つことができるよう願っています。
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この記事を書いた人
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2006年に国際基督教大学卒業後、電子部品メーカーに勤める。
2009年1月より2年1カ月国際協力機構(JICA)青年海外協力隊員としてウガンダへ派遣され陸稲(ネリカ米)普及を中心とした農村開発活動を行う。
2011年9月よりブランダイス大学ヘラー校(Brandeis University, The Heller School for Social Policy and Management)に入学し、開発学修士(MA in Sustainable International Development)を取得。
2012年9月から7カ月間Heifer International Nepalにて修士論文の研究のためインターンシップを行う。
2013年9月よりワールド・ビジョン・ジャパン入団。プログラムオフィサーとして助成金事業を担当。
2016年3月からから2019年3月までエチオピア駐在。
2020年1月からタンザニア駐在。
2022年11月退団。
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