【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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コロナ禍の初駐在~現場で感じた信頼関係と事業力~

新年明けましておめでとうございます!
昨年は、皆さんにとってどのような1年だったでしょうか?

私はと言うと、前回のブログ執筆時から大きく状況が変わった1年でした。
入団時から所属していたアフリカ担当チームを離れ、2021年2月、駐在員としてカンボジアに赴任しました。


長いようであっという間に時間が過ぎ、気がつけば季節も乾季と雨季を一周しました。
新しい年を始めるにあたり、個人的な備忘録の意味も込めて、初めての駐在を通じて感じたことを少しばかり共有できればと思います。

隔離中のホテルから見えたプノンペンの景色

隔離中のホテルから見えたプノンペンの景色

私が入国後2週間の隔離を終えた日の翌朝、カンボジアでは2021年初の市中感染が見つかりました。それ以降、私は今も基本テレワークを続けていて、感染拡大を防ぐため州を超える移動が厳しく制限されました(現在はかなり緩和されています)。

3週間の首都ロックダウンのため道路を封鎖する警察官

3週間の首都ロックダウンのため道路を封鎖する警察官

首都プノンペンから車で6時間離れた事業地のプレアビヒア州を訪問できたのは、赴任して約半年後でした。

期待と責任を抱いてカンボジアに来たにも関わらず、事業地を見たこともなければスタッフとも一度も会わずにプロジェクトを管理する日々。日本で慣れたつもりだったウィズ・コロナの生活も、環境が変わるとまた一から…といった気持ちでした。

困難の中でこそカギとなる信頼関係

そうして始まった1年を振り返り、自分が最も意識したこと、悩んだこと、気づきを得たことは何かと考えると、それは現場における信頼関係ではないかと思います。

まずは、プロジェクト・チーム内における信頼関係です。
スタッフとの関係構築やコミュニケーションについては、駐在前に本を読んだり話を聞いたりして、心づもりをしたつもりでした。しかし、「外国人マネジャー」としてカンボジア人スタッフたちをまとめることは、決してシンプルではありませんでした。

コロナ禍でスタッフたちに長らく会えなかったことも、その気持ちを助長させたかもしれません。おまけに私はチーム内では最年少で、年齢や職位に応じた礼儀を大事にするカンボジアでの自身の立ち振る舞いにも当初は必要以上に気を遣いました。

オンライン会議の際に意識的に表情を映す、メールやチャットの文章ではカンボジア流の相手を敬う表現や感謝・配慮の言葉を必ず入れる、簡単なクメール語をコピペしてみるなど、些細な工夫を試しました。仕事を通じて信頼を勝ち取ることも重要と思い、メールやチャットへ迅速で的確なレスポンスをすることを心がけたりもしました。

そのような試みは無駄ではなかったと思う一方、やはり直接会わずして彼らの反応を知るには限界がありました。

スタッフ・現地関係者とのオンラインで会議

スタッフ・現地関係者とのオンラインで会議

そうした中で、ようやく事業地を初訪問した7月末。
頭でイメージしていた現場を目の当たりにして、「このためにカンボジアに来た」と実感できた瞬間でした。同時に、やっと一緒に仕事をするスタッフたちに会えた喜びを感じました。

プロジェクト・スタッフたちと(右から3人目が筆者)

プロジェクト・スタッフたちと(右から3人目が筆者)

そして思い立ち、全員と1対1で話す時間を設けることにしました。
「どんな話でも良い。仕事でもプライベートでも、好きなこと、困難に感じていることを自由にシェアしてほしい」
そう伝えると、予想していたよりも色んな話を聞くことができました。

自身の生い立ち、辛かった経験、ワールド・ビジョンで働く理由やモチベーション、将来の目標などなど。当然ですが、スタッフ一人ひとりにもストーリーがあり、様々な思いやビジョンを抱いて働いていることを改めて知りました。

加えて、「話を聞いてくれた」「自分のストーリーをシェアした」ことが、スタッフたちにとっても嬉しかったようでした。私がスタッフのことを知ることが第一の目的でしたが、スタッフたちからも少しばかり安心感を引き出せた気がしました。

その後も、現場に行く際はスタッフの話を聞くことをより意識するようになりました。

1年近くいると、それぞれの生活にも色んなことがあります。家族がコロナにかかったスタッフ、出産を控えて体調が安定しないスタッフ、身内に不幸があったスタッフ、転職を検討するスタッフ…。

プライベートの問題にまで耳を傾けることは時にエネルギーを要するものの、そうした小さな気遣いや配慮の積み重ねが心理的・文化的な壁を越えられるかもしれない、と感じました。また私にとっても、スタッフを含めこの国に住む人々の暮らしをよりリアルに把握する一助になっています。

もちろん「仕事仲間」としての関係性のバランスを保つことも必要であると感じる一方、思いを共有してともに前進するチームであるためには、一人ひとりがプロジェクトの重要なピースであることを認め合うことが大事だと感じました。

私を含め、まだまだチームとして改善点もありますが、これからも信頼関係をベースに頑張りたいと思います。

 

そして、現地の関係者たちとの信頼関係です。
これはコロナ禍において特に重要だったと感じています。

州・郡の行政側パートナーたちは感染拡大のリスクに敏感で、普段からコロナ対応に忙しい様子でした。活動実施のためには事前に毎月の詳細な活動計画を提出して承認を受けなければならず、その都度細かい質問や要求に迅速に回答する必要がありました。

実際、コミュニティ内に入って行う活動が多いNGOの仕事柄、なかなか活動が許可されない団体が事業地でも少なくありませんでした。私の担当プロジェクトでも、行政側の指示に従い活動を延期し、実施場所や参加人数を変更せざるを得ないことがありました。

それでも、結果的には活動が滞ることはあまりなく、これまで比較的大きな影響なく事業を進めることができました。

その理由の一つは、事業地でワールド・ビジョンがこれまで時間をかけて築いてきた信頼関係にあると感じます。事業地では、我々のプロジェクトの前から長らくワールド・ビジョンが活動を行っています。その多くは、主にチャイルド・スポンサーシップによって成り立っている地域開発プログラムで、州内の全7郡で行政関係者や住民と構築してきた関係性が既に存在していました。

そうしたワールド・ビジョンが現場で築いてきた信頼の恩恵を受けることができ、地域に根差して住民や関係者とともに計画し活動を進めてきた団体の強みを改めて認識することができました。
それはワールド・ビジョンのスタッフだけでなく、日本を含む世界のチャイルド・スポンサーの方々がともに築いてきたものでもあると思います。

この基盤の上で、プロジェクトとしても関係者を巻き込むことに注力してきました。
我々が一方的に活動を進めるのではなく、なるべく関係者の声を聞き、彼ら自身が考え協力し合って問題解決できるようになることを意識したコミュニケーションを心がけています。

現地の要求や新たに見つかった問題に柔軟に対応することは、ある程度明確な計画のもと動くプロジェクトとしては難しい判断の連続でもあります。
それでも「何のためにこのプロジェクトを実施しているか」を定期的に思い出しながら、地域の人々とビジョンを共有して協働していくことを目指しています。

活動の合間に訪れた観光地で州の行政関係者と(中央が筆者)

活動の合間に訪れた観光地で州の行政関係者と(中央が筆者)

またその裏には、プロジェクト・スタッフたちの忍耐強い働きがあります。
スタッフたちは、一つの村に行くために片道1-2時間を移動することもあれば、雨季に舗装されていない道を一人オートバイで行き来することも多々あります。
現場で実際に見ると、「私にはとてもできない」と思えるような仕事を笑顔で行う姿に、いつも尊敬の念を覚えます。

事業地の道路

事業地の道路

そのようなスタッフたちの真摯な姿勢は住民たちにも確実に届いており、プロジェクトのみならず団体としての信頼向上にも貢献しています。

そう実感できた一例として、活動対象地のなかでも遠隔にあるラオス国境の村を訪れたとき、印象に残ったことがありました。この村では、地理的な背景によりクメール語よりもラオス語が使われていて、遠隔地であるゆえにNGOの活動も多くありませんでした。また私たちのプロジェクトが始まる以前、ワールド・ビジョンの活動が直接カバーしていない地域でもありました。

それにもかかわらず、私が初めて訪問した時(プロジェクト開始から約1年)にはすでに住民と良好な関係が築かれていて、活動に対しても住民の積極的な関心と参加が見られました。
根気強く通いつめて住民の信頼を勝ち得たスタッフの姿が思い浮かぶとともに、「このような丁寧で深い支援は初めて受けた。地域でこの活動をもっと広げていきたい」と話してくれた住民の言葉が胸に残りました。

遠隔地に住む活動対象の家族

遠隔地に住む活動対象の家族

一つの団体やプロジェクトの「事業力」を定義する要素は、資金力、活動内容・範囲、スタッフの能力など様々あると思います。
しかし、コロナのような困難に直面した際には、これまで現場で地道に築いてきた信頼関係が事業を推し進めるカギとなるのではないか。
それが、駐在1年目を通じて特に学ばされた点でした。

様々な思いが国を越えて繋がる世界に生きる

現場に来て、改めてここカンボジアに世界から多くの人々が異なる目的で集っていることを感じます(コロナで撤退・帰国した人も多いと聞きますが…)。

そしてワールド・ビジョンの活動についても、ローカル・スタッフ、事業地の関係者、私のような外国人の駐在員、そして日本を含む海外から活動を支える人たち全員がいて成り立つことをより強く実感するようになりました。

カンボジアにおける事業活動を管理する傍ら、私は個人としてネパールに住む男の子のチャイルド・スポンサーをしています。
彼は、昨年12月31日に10歳の誕生日を迎えました。年末には、2年前と2021年に撮影した2枚の写真が印刷された「成長報告」が届き、「大きくなったなぁ」と嬉しくなりました。

筆者がスポンサーをしているネパールのチャイルド(大きくなりました!)

筆者がチャイルド・スポンサーシップを通して支援しているネパールの男の子(大きくなりました!)

 

1年の終わりに彼を思い出し、色んな感情が芽生えた自分の10代の姿を重ね、彼がどんなことを考えているのか聞きたいと思ってEレター*を書きました。
*ホームページで例文とデザインとを選ぶだけで簡単にチャイルドに手紙を送ることができる仕組み

私にとってネパールは、訪れたこともなければ仕事でも関わりのない国です。
しかし、きっとネパールでもカンボジアと同じく現場で奮闘するスタッフや関係者がいるのだろうなぁ…と、思いを馳せてみます。
私も微力ながら現場での活動の一部になっていれば良いな、と思いつつ。

新しい一年も、日本、カンボジア、世界の子どもたちが豊かないのちを体験することを願って、与えられた働きに励みたいと思います!


 

【李スタッフ登壇イベント 録画動画のご案内】
2021年11月、李スタッフがインスタライブに登壇。新人インターンからインタビューを受け、仕事にかける想いを語りました。ぜひご覧ください!

この記事を書いた人

李 義真
李 義真カンボジア駐在 プログラム・コーディネーター
大阪大学法学部卒、東京大学公共政策大学院CAMPUS Asiaプログラム修了。その後、約半年間の民間企業での勤務を経て、2018年10月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。2021年2月からカンボジア駐在。
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