去年11月、スリランカのガンガ・イヘラ・コーラレ地域に出張する機会がありました。ワールド・ビジョン・ジャパンが、2009年からチャイルド・スポンサーシップを通じて支援している地域です。
ある日、地域の人たちが協力しあって運営している、小さな幼稚園を訪れました。この幼稚園は、30年以上前に建てた園舎が老朽化して使えなくなってしまったため、保健センター内の敷地の一部を屋根と壁で仕切った、小さなスペースで運営されています。と言っても床は地面のまま、壁は草やビニールで覆っているため、雨が降ると水が入り込んでしまいます。2人の先生と17人の子どもたち(園児)が入ると、もういっぱいです。
でも色とりどりの工作が並べられ、限られた環境の中で、先生たちが工夫して授業をしていること、子どもたちがそれを楽しんできることが伝わってきました(後日、個人の方からのご支援を受け、新しい園舎を建設することが決まりました)。
現地スタッフに通訳をしてもらいながら、子どもたちに向かって自己紹介をしていた時のことです。私が日本から来たことを伝えると、間髪入れずに1人の女の子が「わたしは、日本にともだちがいるよ!」と言います。驚いて聞いてみると、彼女はチャイルドとして、日本のスポンサーの方に紹介されていたのでした。
彼女の名前はサンダルちゃん(5歳)。笑顔がとても可愛い女の子です。「スポンサーの方のお名前を知ってる?」と聞くと、「うん、知ってるよ。×××さん!」と、フルネームではっきりと教えてくれました。「この前お手紙とシールが届いて、すごく嬉しかった。もらったシールは、もうぜんぶ使っちゃった」。初めて見る外国人、しかも自分のスポンサーと同じ日本人が珍しいのでしょうか、サンダルちゃんは興味深そうにこちらを見ています。
サンダルちゃんのお母さんがこの幼稚園の先生として働いているため、授業が終わってお母さんが帰り支度をしている短い時間、一緒に過ごすことができました。言葉が分かれば、色んなことを話せるのに…と悔しく思いながら(こんな時ほど、のび太君のように「ドラえもーん、翻訳コンニャク出して!」とお願いしたくなることはありません)、写真を撮ったり、追いかけっこをしたりして遊びました。
帰り道、サンダルちゃんの「わたしは、日本にともだちがいるよ!」という言葉を思い出しながら、それでいいのかも知れない、と思いました。
まだ幼いサンダルちゃんが、ワールド・ビジョンの活動のこと、チャイルド・スポンサーシップのことを理解できるようになるのは、もっと先のことでしょう。もしかしたら、日本がどこにあるのかも、まだ知らないかもしれません。それでも、日本という国に住んでいる、会ったことのない“ともだち”の存在は、サンダルちゃんの心の中で大切なものになっていましたし、彼女が成長し、スポンサーの方との交流が深まるにつれて、少しずつ大きくなっていくのだと思います。
困難にぶつかって立ち上がれない時、誰かの存在や言葉が励みになって、支えられることが多くあります。サンダルちゃんだけでなく、世界中の支援地域の子どもたち一人ひとりがどんな人生を歩んで行くのかは分かりません。それでも、子どもたちが迷う時、負けそうになる時に、ふと“自分のことを思ってくれている人がいるんだ”と思い出して、前に進む力を得てほしい。そして、子どもたちが歩んで行く中で、1つでも多くの選択肢を持てるような支援を届けていきたい。そう思わされています。
この記事を書いた人
- 恵泉女学園大学卒業後、2006年7月にワールド・ビジョン・ジャパン入団。国内でのファンドレイジング、広報を担当した後、2013年4月より支援事業部スポンサーシップ事業課に所属。南アジア諸国での支援事業の監理を担当。2018年4月よりマーケティング第1部に所属。
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