鋭い質問。さぁ、どう答える…?!
その瞬間、自分の目の奥に焦りの色がうかんでいることは、たとえ、zoomの画面越しの、あるいは、目の前の学生の皆さんには見えなくても、私自身には明らかでした。
「鋭い質問、正解は一つではないわ。どうお答えしましょう…」
と、心の声が言っています。
講師派遣で学生さんや大人の方にお話しさせていただく時に、このような場面が訪れることは少なくありません。
「すべての子どもに豊かないのちを」という団体のビジョン
答えのない問い、解決の見えない課題。ワールド・ビジョンの「すべての子どもに豊かないのちを」という大きな「ビジョン」の実現を目指す、日々の働きの中で、朝に夕に難題はやってきます。
事業の現場で~それは、途上国のコミュニティであったり、避難民居住地であったり、災害の現場であったり、政府関係者との協議のテーブルかもしれません~最も弱い立場にある子どもたちや人々への支援活動に従事している同僚は、時に命を左右する重責や、コミュニティの人々に囲まれた緊迫感の中で、文字通りの難題に対して、最善の答えや解決策を導き出すべく、尽力しています。
ワールド・ビジョン・ジャパンのコミュニケーション課の一員として、広報とグローバル教育に従事する私にとっては、日本の若者や人々にお話し、お伝えする場所が現場。支援の現場と異なり、私の質問の答えが子どもたちの命を左右するということは確かにありません。しかし、
「世界の平和は実現可能ですか?」
「徳永さんが政権の中枢に入ったらまず何をしますか?」
「徳永さんは日本の私たちは幸せで、途上国の暮らしは不幸だと思うのですか?」
この質問に德永はどう答えるのだろうかと待っていてくださる生徒・学生、大人の皆さんに、何か次につながるお答えをできれば、と、痺れるような緊張感(時にたっぷりの冷や汗を伴います)をもって向き合っています。
派遣授業の際にいただいた様々な質問から、今日は上述のビジョンに関わる2つを選んで、お答えしたこと、また、考えさせられたことを、書いてみようと思います。皆さんもぜひご自身のお答えを考えてみてください。
目の前の子どもを救えないときは?
目の前のすべての子どもが救えるわけではないですよね。
そんな時に、いったいどんな気持ちで活動に携わっているのですか?
難しかったこと、失敗したこと、絶望したこと。その時にどう感じ、何をしたのか、というご質問は、ほぼ毎回いただくものの一つです。先日は、ひとつの経験談をお話しました。
数年前、出張で訪れたカンボジアで出会ったあるお母さんと子どもたち。家は壁もなく、雨風や侵入者にぜい弱です。庭のコオロギを採って売って何とか食べています。お母さんは受診が必要な健康状態ですが、保健センターに行くためのバイクタクシー代を支払うことができません。貧しい世帯が多いコミュニティの中でも、とりわけ厳しい状況にあるこの母子に、しかし、私が当時担当していたプロジェクトでは、支援を提供することができませんでした。彼女を目の前にして、何もできなかったのです。
しかし、ストーリーには続きがあります。その後、視察に同行していたジャパンそしてカンボジアの同僚の尽力と、私自身もささやかながら働きかけたこともあって、別のプロジェクトとコミュニティの人々の協力により、この母子に支援が届けられたのです。バトンを受け取り、つないでくれた仲間がいたのです。「“何もかも”はできなくとも、“何か”はきっとできる」ボブ・ピアスの言葉を、身をもって体験した出来事でした。
この経験とあのお母さんのまなざしに今日も背中を押されています。最善を尽くし、自分の限界に直面しても足を止めないこと。そこに次の走者がいることを祈りつつ、あと1キロ、2キロを進んでみています。
お話を聞いてくれている学生さんが、一緒にバトンをつなぐ仲間になってくださることを願いながら、そうお答えしました。
一番必要なのは?
すべての子どもが救えないという現実こそ、僕は、おかしいと思う。
一番必要なのは、何だと思いますか? お金ですか? 人ですか?
この質問に私がどうお答えしたかは後ほど。まずは、私の胸を熱くした同僚の答えをご紹介します。
事務所に戻り、こんな質問をいただいたのよ、という私の話を聞いた同僚から迷いなく返ってきた答え、それはこうでした。
「一番必要なのは、愛でしょ!」
そうなんです。すてきな同僚とお仕事をしています!
1億6000万人の子どもが児童労働を強いられる
6~17歳の子どもの6人にひとりにあたる2億5800万人が学校に通えない
世界で4秒にひとりが飢餓で亡くなっている
「愛の反対は憎しみではなく、無関心です」*という言葉がありますが、子どもたちの命、そして、未来がこのような規模で失われている背景には、確かに、何世紀にもわたる私たちの無関心があります。
確かに、一番必要なのは、愛。一番の障壁は、無関心かもしれません。
* ” The opposite of love is not hate, it’s indifference” エリ・ヴィーゼル
無関心を越えていく
無関心を越えていくこと。この難題の突破口は、どこにあるのでしょうか。私は、今、まさに関心を払われず取り残されている、厳しい現実を生きる子どもたちの自身の姿に目を留める時に、希望を見ます。
カンボジアに住むソリカちゃん12歳。4つの仕事をかけもち、耳の不自由なお父さんと支え合って生きています。
統計ではない、ひとりひとり可能性に満ちた、懸命に生きる子どもたちの姿には、無関心の壁を越えて、私たちの心に飛び込んでくる力強さがあります。
そして、そのような子どもたちの未来を切り拓く後押しを、チャイルド・スポンサーシップ**による支援は届けています。
**チャイルド・スポンサーシップは、開発途上国に暮らす子どもたちを取り巻く環境の改善を目指してワールド・ビジョンが実施している支援プログラムです。
ひとりでも多くの子ども、やがては、すべての子どもに豊かないのちを届けるため、ひとりでも多くの方の関心と想い、そして、ご支援を必要としています。
先ほどの質問に対して、私が、いくつかの統計や、支援に必要ないくつのリソースの説明とともに、想いとしてお答えしたことはこうでした。
「仕方がない、と諦めてしまわないこと。子どもたち自身が諦めていないのだから」
「すべての子どもの豊かないのちのために、一番必要なもの」
それは多くの方の力が合わさって、実現していくものです。
「すべての子どもたちを救えない現実こそ、僕はおかしいと思う」
質問をしてくださった高校生の青年のまっすぐな言葉に私はとても力づけられました。
皆さんが、この問いにご一緒に向き合ってくださり、答えと思われたことをぜひ行動に移していただければ幸いです。
コミュニケーション課 德永美能里
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德永スタッフの過去のブログ
・種を撒かないところに花は咲かない
・見たい未来を。さぁ、一緒に。
・世界中の子どもたちが、愛情をもって名前を呼んでもらえるその日まで
この記事を書いた人
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世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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