【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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ご存知ですか? 9月9日はできたばかりの「〇〇国際デー」

皆さん、こんにちは。グローバル教育を担当している松本です。
今年も私の担当業務のなかで大きなひと山、サマースクールの開催が終わり、無事に9月を迎えることができました。

さて、9月8日は何の日かご存知ですか?「国際識字デー」です。こちらは有名ですので、ご存知の方が多いかと思います。

では、9月9日は、何の日でしょうか?
答えは「教育を攻撃から守るための国際デー」です。
International Day to Protect Education from Attackとして、2020年5月28日の国連総会で採択・制定されました。できたばかりの国際デーなのです。

戦闘によって、廃校となってしまった学校の教室に佇む13歳のハマードくん。夢はお医者さんになること。(イラク)

戦闘で廃校となってしまった学校の教室に佇む13歳のハマードくん。夢はお医者さんになること(イラク)

「紛争下における武力攻撃から教育を守り、紛争下においてもすべての人が安全な環境で教育を受けられるよう、世界各国が責任をもって取り組むこと」を目的にカタールが主導、60カ国が共同提案し、全会一致で採択・制定されたということです。

言い換えると国際デーが制定されるほどまでに、教育が攻撃から守られていない現状にあるということになります。

2015年から2019年の間に1万1,000件を超える教育への攻撃と、教育施設の軍事利用が世界中で起こりました。そして、これらの攻撃で、生徒、教師、教育関係者を含む2万2,000人以上が被害に遭ったと報告されています(出典:『攻撃される教育2020(Education under Attack 2020)』教育を攻撃から守る世界連合(Global Coalition to Protect Education from Attack: GCPEA))

被害にあっているのは子どもたち

南スーダンから命からがらウガンダへ逃れ、両親と9人の兄弟がどうなったか分からなくなってしまった12歳のブレッシングちゃん。難民居住地で支援を受けています

南スーダンから命からがらウガンダへ逃れ、両親と9人の兄弟がどうなったか分からなくなってしまった12歳のブレッシングちゃん。難民居住地で支援を受けています

紛争が広がる中で被害にあっているのは、子どもたちです。
普遍的な権利としてすべての子どもが享受する「子どもの権利」をまとめる「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約」の一般原則では、第一に、「生命、生存および発達に対する権利(命を守られ、成長できること)」が掲げられており、すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障されると記されています。紛争が広がる中で子どもたちは、上記で保障されているはずの医療も、教育も、生活への支援も受けることが困難となってしまいます。

さらに同条約の第28条では、「教育を受ける権利」について、すべての子どもは教育を受ける権利をもっていると明言し、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成することを締約国に求めています。特に「初等教育」については、「義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする」とされています。初等教育は識字の基礎のみならず、人格育成や生きる上での基礎力を身に付ける大切な場です。紛争が教育の機会を奪い、子どもたちの持っている可能性が閉ざされることは、決してあってはならないことです。

高まる教育支援の必要性

特に近年では、紛争の影響下にある子どもたちの数が増大えており、子どもたちの未来を守るために教育支援の必要性が高まっています。

空爆によって、お父さんの命と自分の右腕を奪われた15歳のファディくん。家族を助けるために義手を必要としています(シリア)

空爆によって、お父さんの命と自分の右腕を奪われた15歳のファディくん。家族を助けるために義手を必要としています(シリア)

・シリアでは、長引く内戦の影響で国外へ逃れたシリア難民の多くの子どもたちが学校に通うことができていません。
・2011年に独立を果たした南スーダンでは、2013年12月、再び内戦状態となり、多くの子どもたちが教育を受ける機会を奪われました。
・アフガニスタンでも、多くの子どもたちが教育を受ける機会を再び奪われかねない状況があります。

ワールド・ビジョン・ジャパンでは緊急人道支援の一環として、難民・国内避難民支援を行っており、その中で失われた教育機会の回復に努めています。

ウガンダの難民居住地の子どもたちへ提供している短期集中教育プログラムでは、参加した子どもたちが笑顔を取り戻しています。学ぶ喜びを知り、将来は母国へ帰り、良い仕事に就きたいと子どもたちが希望を見出しています。

ウガンダにある南スーダン難民居住地の就学前教育センターで元気に遊ぶ子どもたち

ウガンダにある南スーダン難民居住地の就学前教育センターで元気に遊ぶ子どもたち

シリア紛争で荒廃し、復興の兆しが見えない地域で暮らす子どもたちは、紛争により学校が破壊され長期間学校に通えず、学習の遅れが顕著でした。その上、2020年は新型コロナウイルス対策のため学校が閉鎖され、厳しい生活環境下にいる子どもたちは安心して過ごすことも、自主学習をするとこさえも出来ずにいました。ワールド・ビジョン・ジャパンは、遠隔でありながら子どもたちが継続的に学べる環境を提供し、子どもたちは文章力や読解力の向上など着実に基礎学力が定着してきました。

紛争と新型コロナウイルス感染症という二重の困難な状況においても、途切れることのない教育支援が子どもたちの明るい未来につながると信じています。

9月9日、今日この日、教育を攻撃から守ることについて思いを馳せていただけませんか?
子どもたちが持つ権利を今一度見直し、教育が子どもたちの未来を切り開く鍵となり、子どもたちの笑顔が輝くことを心から願います。

マーケティング第1部 コミュニケーション課
松本 謡子

画面越しに中学生の皆さんに話しかける筆者

画面越しに学生の皆さんに話しかける筆者。コロナ禍でもオンラインでグローバル教育の実施を継続しています


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グローバル教育レポート:あの人は今
「今、私にできること」~あなたの「え!?」が聞きたくて~

この記事を書いた人

WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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