【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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種を撒かないところに花は咲かない

2022年の仕事始めから 最初の週末。私は国際基督教大学高等学校1・2年生の皆さんの前に立っていました。校内の水たまりに薄氷が張るような寒さでしたが、私は感動に胸を熱くしていました。

講演する筆者

講演する筆者

皆さま、こんにちは。コミュニケーション課の徳永美能里です。コミュニケーション課の大切な活動のひとつにグローバル教育があります。子どもや若者の皆さんに、世界の子どもたちやワールド・ビジョンの活動についてお話しさせていただく時に、しばしば、私たちスタッフも、気づき、そして、深い感動をいただきます。それは、その場で子ども・若者の皆さんからいただく、素直な感想であり、深い共感であり、するどい質問であり、そして、私たちのお話から、何かをうけとって、一歩踏み出してくださったという後日談だったりします。

この日は、昨年初夏に私の講義を聞いてくださったHさんSさんの二人の発案で講演会を企画してくださり、始業式につづく特別講演のためにお招きいただきました。私の紹介に先立ち、お二人は、どうしてこの講演会を企画したのかを、仲間の生徒さんの前で語ってくださいました。私自身も深く感動しましたが、後日送っていただいた生徒の皆さんの感想にも、彼女たちのこのメッセージと行動に触れている方が多数いらっしゃいました。
今回のブログのタイトルは、実は、生徒さんのうちのお一人の言葉です。ご本人と学校様のご許可をいただきましたので、お二人のスピーチを紹介させていただきます。

講演会を企画してくれたHさん、Sさんと筆者

講演会を企画してくれたHさん、Sさんと筆者

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こんにちは。SとHです。よろしくお願いします。今回の講演会は私たちが企画し、先生方の協力を経て開催することができました。講演会を始める前に、まず、私たちが何故この企画をしたのか、この講演会に込められた思いや、また企画された経緯をお話させていただければと思います。

Hさん:
この中に德永さんのお話しを聞いた方が数十人ほどいると思います。德永さんは貧困や国際援助などについて、6月のマルチイベント(筆者注:2021年に講演させていただいたイベント)でもお話ししてくださいました。私もその講演に参加し、マルチイベントで他の講演を聞いていた人にも、これはぜひ聞いてもらいたいお話しだと思い、この講演会を企画しました。

さて、少しだけ、去年、一昨年のコロナ禍の様子を振り返らせてください。
二年ほど前からのコロナパンデミックによる影響は、どれほどのものだったでしょうか? 私たち2年生はオンラインで家からの初登校でした。賑やかだった町にはシャッターが下ろされ、人々は外出を控えるようになりました。少し状況が改善し、登校できるようになった今でも、友達と仲良くお喋りしながらお昼を食べることはできないままです。今まで当たり前としていたものがことごとく禁止されました。そんな状況を悲観し憂鬱に感じたのは私だけではなかったと思います。

しかし、德永さんが、世界の弱い立場に置かれている子どもたちが、コロナの悪影響をどれだけ受けたのか伝えてくださいました。日本と同じように学校は休校になりました。オンラインで授業するにも機材が足りず、教育の機会を逃してしまう子どもたちが沢山います。教育を受けられないと将来の仕事にも影響し、その子どもたちが教育を受けることができなくなり、悪循環になります。休校になったことを機に、このあと再開しても学校に行かなくなる人も増えてしまいます。児童労働や児童婚も増え、より深刻な問題となります。

開発途上国では、十分な医療が受けられないため感染が広がってしまう、といった、コロナそのものの影響はもちろん、コロナが収まったとしても、先に述べたような二次災害がとても大きくなっています。すでに深刻な問題が、コロナパンデミックの影響を酷く受け、より過酷な状況になっています。

日本の状況と開発途上国の状況の差に愕然とし、私は「とにかく何か行動しなきゃいけない」という危機感を覚えました。しかし、残念ながら、私が直接できることはとても限られています。私にできることはほぼないかもしれません。でもここにいる500人がいずれ、何かしら行動に移したとしたら、それは大きな力となり、少しはこの状況が良くなるのではないかと思います。そのためにまず私は、みなさんにこの状況を知ってもらうために、この講演会を企画しました。

Sさん:
次に私の話に入らせていただきたいと思います。

少し個人的な話になりますが、私は恵まれない子どもたちのことをことあるごとに聞かされて育ちました。「選んで生まれてきたわけじゃないんだからあなたももしかしたらそうだったかもしれないんだよ」と言われながら育ちました。両親は、結婚した頃からワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサーをしているため、そのチャイルドに手紙を書いたり、クリスマスの時期にはそれとは別に靴箱にプレゼントを詰めて送ったりして育ちました。そんな家庭に育ったため、物心ついた頃からいつも頭の片隅に恵まれない子どもたちの存在がありました。

しかし、頭では理解しているものの、「家に帰ったら美味しいご飯があり、あたたかい布団がある」という環境にいたため、その貧困が本当にどういうことなのか、ということは理解できていませんでした。成長するにつれて、それが本当はどういうことなのかわからないのにプレゼントを送ったり、金銭的な支援をするのは恵まれた立場にいる私たちのエゴなんじゃないか、そんなことを思うようになりました。自分がどのような思いで、どのような立ち位置で、国際援助に関わればいいのかわからないまま過ごしていました。そんな時に、德永さんの講演に参加しました。

そこで、「現在子どもたちがどのような環境にいるのか」というお話を聞き、漠然とした危機感をもったと同時に「恵まれた立場にいる私たちは恵まれない子どもたちに対して申し訳なく思う必要はなくて、感謝して生きればいい」という言葉に、はっとさせられました。

私がこれまで悩んでいたことの正解を突然突きつけられたような気がしました。私はこれまで無意識に、国際援助をするときはその人の痛みを自分も感じて痛い、と思いながら、だいそれたことをしなくてはいけないものだと無意識に思っていたことに気づきました。でも本当は「理解して同情すること」なんてできなくて当然で、それこそ恵まれた私たちのエゴなのだと気づきました。

そこで一人でできることは本当に小さいことかもしれないけれど、もっと多くの人に知ってもらえばその輪が広がるのではないか、という気持ちでHさんとやりたいことが一致し、この講演会を持たせていただけることとなりました。

私たちは今回の講演で、種まきができたらいいなと思ってます。その種がどのような形で皆さんのこれからに繋がっていくのか、またそもそも繋がるのかどうかもわかりませんが、種を蒔かないところには花は咲かないので、皆さんには今日はその種をぜひ受け取っていただきたいなと思っています。よろしくお願いします。

講演後、生徒の皆さんから積極的に質問をいただきました

講演後、生徒の皆さんから積極的に質問をいただきました

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HさんSさんのスピーチを聞いて、私の頭には聖書のある言葉が浮かびました。その言葉を紹介して、今回のブログを終わりたいと思います。

「別の種は良い地に落ちて、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍の実を結んだ」マタイによる福音書

国際基督教大学の美しいキャンパス。早く到着したのでお散歩しました

国際基督教大学の美しいキャンパス。早く到着したのでお散歩しました

コミュニケーション課 課長
徳永 美能里


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世界中の子どもたちが、愛情をもって名前を呼んでもらえるその日まで

この記事を書いた人

WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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