【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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障がいとともに生きる人々と災害

障がいを持つ子どもやおとなたちは発展途上国の地域の中でもより貧しくされ、発展から取り残されることが多いため、支援活動を進める際にワールド・ビジョンは必ず障がいにも配慮をするようにしています。

毎年10月13日は国際防災の日(International Day for Disaster Reduction)と定められていますが、今年、2013年のテーマは「障がいとともに生きる人々と災害」だと知らされました。

予期せぬ災害により危機的状況におかれる人々の中でも、子どもや老人はその脆弱性のゆえにより深刻な影響を受けます。さらに、障がいを持つ人々にはその影響が何倍にもなる可能性があります。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、2万人近くにのぼる犠牲者の中でも、 障がいを持つ方々の死亡率は住民全体の約2倍であったとの報告を聞きました。

障がいとともに生きる子どもとその家族が出会った災害について、興味深い記事に出会いましたのでご紹介したいと思います。すべての災害を予知し、防ぐことは困難です。しかし、障がいのあるなしにかかわらず、すべての子どもとその家族が困難を乗り越えていける仕組みづくりが私たちの使命だと思いを新たにしています。

障がいを持ち難民キャンプで暮らす少女の物語

「自分の村にいたときは何の問題もなかったわ。反乱軍が私たちの村を襲撃するまでは、私は1年生で小学校に通っていたの。ある日、友達と一緒に学校から帰る途中、反乱軍に襲われて荷物を持って逃げ惑う人たちに出くわしたの。それで私はすぐに家に走ったの。姉を見つけると、手近にある荷物をまとめてみんなととともに逃げました。お母さんは病気でついてくることができませんでした。私が松葉づえがないと歩けないので、お母さんはお姉ちゃんに私をおぶって逃げるように言いました。私たちはウガンダの国境沿いを 3日間歩き続けました。そして左足とお腹が痛くてそれ以上歩けなくなりました」とエステリは語りました。

10歳のエステリの父は、彼女がまだ小さい頃に亡くなりました。彼女の母親は、彼女がけがをしたり、ほかの子どもたちのいじめの対象になることを避けるために、彼女がほかの子どもたちと一緒に遊ぶことを好みませんでした。

コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)に生まれ、学校に行き始めた彼女ですが、内戦が始まり、国境を越えてウガンダに逃れることになりました。生まれたときから左足が右足よりも短かったため、木製の松葉杖なしでは歩くことができません。さらに長い距離を歩くと、左脚と腹部に深刻な痛みを覚える彼女です。

逃げる途中、エステリたちを助けてくれる人は誰もいませんでした。皆、自分の荷物を抱えて逃げることで精いっぱいだったからです。彼女たちはしばしば休息のために足を止めざるを得ませんでしたが、人々は彼女たちを待つこともしてくれませんでした。

「私たちは疲れている上にお母さんのことが気が気でなりませんでした。ほかの人のように歩けないので、反乱軍にいつ追いつかれるかと思うと怖くてふるえが止まりませんでした。3 日後、私たちはキャンプに到着しました。そこで偶然にもお兄ちゃんたちに再会することができ、それからはお兄ちゃんたちに助けてもらって暮らすことになりました。

1週間ほどして、ウィルソン先生が私たち家族のテントを訪ねてきました。彼は、私と弟がワールド・ビジョンの運営するチャイルド・フレンドリー・スペース(CFS)に来るように勧めてくれました。それから私は毎日、CFS に通うようになりました。

そこではほかの子どもたちと歌ったり、踊ったり、そして新しい友達を作ることができました。読み書きや歌、ダンス、体のケアや人形遊び、手洗いや衛生などいろんなことも学んでいます。先生はみんな良い人たちです。私たちと一緒に踊ったり、お話しをしてくれたり、絵画や読み書きもしてくれます。だれも私のことを気にかけてくれなかったコンゴの学校に比べて、私はこのCFSが大好きです」エステリは続けます。

子どもたちの輪の中で幸せなエステリ

子どもたちの輪の中で幸せなエステリ

後にエステリの母も自力で彼女たちが避難するキャンプにたどり着くことができました。家族が離れ離れになってから30 日後のことでした。

「最初、私は娘がその障がいの故に危ない目に遭ったり、ほかの子どもたちからいじめられるのではないかと不安でした。しかし、CFSを実際に訪ねてみると、地面には砂がひいてあり、倒れてもけがをしないように配慮されていることや、先生も生徒もとても良い人たちであることを知って安心しました。コンゴにいたときのように社会から切り離されてテントの中で退屈に過ごすのではなく、彼女は今、ほかの子どもたちと同様に学び、そして遊ぶことができるのです」とエステリのお母さんは語ります。

安全な地を求めてウガンダとの国境にある難民キャンプにあふれるコンゴからの難民。繰り返されるコンゴの紛争は、子どもたちの中でも特に、障がいをもつ子どもたちにとって、心に深い傷を残しています。子どもに焦点を当て人道支援を行うワールド・ビジョンはCFSを通してその傷をいやす働きを行っています。

CFSに通い心のケアに関する活動に参加したり、遊んだり、学んだり、歌ったり、踊ったり演じたりすることは子どもたちにとって今や日常の一部となっています。そしてそれらを通してウガンダへの避難の途中や、もといた地域で負った傷が癒されていくのです。

この記事を書いた人

平本実支援事業部 プログラム・コーディネーター
国立フィリピン大学社会福祉・地域開発学部大学院留学。
明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了。
社会福祉専門学校の教員を経て、2000年1月より社団法人日本キリスト教海外医療協力会のダッカ事務所代表としてバングラデシュへ3年間派遣。
2004年12月から2007年3月までは国際協力機構(JICA)のインド事務所企画調査員。
2007年9月から2年半は、国際協力機構(JICA)のキルギス共和国障害者の社会進出促進プロジェクトで専門家として従事。
2010年9月、ワールド・ビジョン・ジャパン入団。
支援事業部 開発事業第2課 プログラム・オフィサー。
2020年3月、退団。
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