国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフブログ

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値札のないセーター

仕分け作業に携わったボランティアの皆さま (写真提供:MS&ADゆにぞんスマイルクラブさま)

仕分け作業に携わったボランティアの皆さま
(写真提供:MS&ADゆにぞんスマイルクラブさま)

先日、ベトナムへ手編みのセーターを贈るプロジェクトを担当させていただいた。これは三井住友海上ほかMS&ADインシュアランス グループ社員の社会貢献活動団体 MS&ADゆにぞんスマイルクラブと社団法人 日本編物文化協会の皆さまのご支援によるプロジェクトで、ワールド・ビジョンが担当させていただいて、もう10年ほどになる。セーターは日本全国から有志の皆さまが途上国の子どもたちのために編んで送ってくださるものだ。

ワールド・ビジョンではいくつかの部署が協力して、このプロジェクトにあたっている。国内での対外的なやりとりは国内事業部、セーターを送る相手国とのやりとりは海外事業部の開発課、そして実際にセーターを送るために箱詰めしたり、運送業者に輸送を依頼したりという部分を、我が緊急人道支援課が担当している。

今年は緊急人道支援課からは私がこの仕事を担当させていただけることになった。「体力的にはややハードだけど、感動するよ」と伝え聞いていたので楽しみだった。11月初旬のある日、ワールド・ビジョンをいつも陰に日向に支えてくださっている頼もしいボランティアさんお二人と、いよいよその作業場へと足を踏み入れた。

全国より集まった手編みセーター (写真提供:MS&ADゆにぞんスマイルクラブさま)

全国より集まった手編みセーター
(写真提供:MS&ADゆにぞんスマイルクラブさま)

部屋に入るとまず圧倒されたのは山のようなセーターの量と色彩の豊かさだ。既に編物協会のボランティアの方々や先生方がテキパキと働いておられ、MS&ADゆにぞんスマイルクラブの担当者の方も来ておられた。

ボランティアさんと私は、セーターの仕分けに加わった。ほつれなどがないかを確認して、サイズ別に分け、たたんで10着ずつ組みにする。万一、ほつれなどがあった場合には、先生方が神業のようにササッと直してくださるのだ。色とりどりの糸で編まれ、趣向を凝らしたデザインのセーターの数々にうっとりした。

セーターには1着ずつ、編んだ人の名前がローマ字で書かれた札と「日本からの贈り物」と英語で書かれた可愛いタグが付けられている。大きな段ボール箱にビニール袋を敷いて、その中にサイズ別に分けたセーターを並べて入れ、数を箱に記入する。箱詰めが終わったら、一箱ずつ重さを量る。

こうしてみんなで力を合わせて1日働いた終わりには、山のようなセーターはきれいに箱詰めされて34箱に納まった。その1週間後、セーターを乗せた船はベトナムへ向けて横浜港から出航した。

手編みセーターの仕分け作業をするボランティアの皆さま(写真提供:MS&ADゆにぞんスマイルクラブさま)

手編みセーターの仕分け作業をするボランティアの皆さま(写真提供:MS&ADゆにぞんスマイルクラブさま)

このセーターは毎年、違う国や地域に送られるのだが、今年はベトナムの山岳民族の子どもたちに贈られる。ベトナムと言えば暑い国というイメージが強いが、高地の冬は寒い。冬服を買う余裕のない家庭の子どもたちは、冬でも薄着で寒さに耐えなくてはならない。

このようにニーズがあるところに届けるので、歓迎されるのはもちろんなのだが、この手編みセーターのプロジェクトはとりわけ喜ばれるのだと聞いていた。実際に手にしてみて、その理由が分かった気がした。確かにセーター自体もとても素敵なのだが、それ以上にこのセーターには大きな意味があるのだ。

古着でも既製品でもない、一針一針想いを込めて編まれた新しいセーター。そんな贈り物を受け取ったら。相手は大切な家族や友人と同じように扱ってもらったと感じるだろう。「かわいそうな恵まれない人」としてではなく、対等なひとりの価値ある人間として。そのことはどんなに贈られた人を勇気づけるだろうか。

ニーズを満たすなら、古着でも既製品でも、あるいはもっと合理的にお金を送って現地でセーターを購入してもらっても目的は果たせる。

でもこのセータープロジェクトの本質的な価値はもっと違うところにある。海の向こうに、自分を大切な友人のように扱い、応援してくれる人たちがいる。そのことがどんなに人々を励まし、勇気づけるだろう。

手編みセーターや帽子、マフラーを受け取ったベトナムの子どもたち

手編みセーターや帽子、マフラーを受け取ったベトナムの子どもたち

通関手続きや保険に必要なため、私たちは便宜的にセーターに値段をつける。サイズ別に必要な玉数分の価格を機械的に当てはめるのだが、他には労賃も何も含まれていない、原価である。こんな手編みのセーターをお店で買ったら相当値が張るだろうが、実際にはこのセーターはそんな最低限の価格どころか、無料で人々に贈られる。商品ではなく、贈り物だからだ。

このセーターには値札はない。いわばゼロ円。そしてそのゼロ円に込められた愛情と友情、そこから生まれる喜びの何と大きいことだろうか。物事の本当の価値はお金では測れないと改めて思った。

チャイルド・スポンサーシップにも同じことが言えるだろう。私たちは月々4500円をスポンサーの皆さまからいただいて、子どもたちやその地域を支援しているが、現地の人々や子どもたちにとっては、プログラムによる恩恵もさることながら、「自分たちの生活が良くなるように応援してくれる人たちがいる」という事実こそが、大きな励ましであり、希望なのだ。

手編みセーターや帽子、マフラーを着たベトナムの子どもたち スポンサーシップに寄せていただくご支援金は決して少ない額ではないが、しかしそれ以上に大きな「想い」をスポンサーの皆さまから私たちはお預かりして、そして現地へ届けているのだ。

手編みセーターや帽子、マフラーを着たベトナムの子どもたち

手編みセーターや帽子、マフラーを着たベトナムの子どもたち

さて、セーターを積んだ船は11月末に無事ベトナムに到着した。現地では贈呈式の準備が進んでいる。一針一針に愛情のこもったあの温かいセーターにくるまれて、ベトナムの子どもたちに今年はどんな笑顔が輝くだろう。

このプロジェクトは、MS&ADゆにぞんスマイルクラブさまと日本編物文化協会さまによるご支援プロジェクトです。手編みセーターの編み手ボランティアにご関心をお持ちの方は、直接日本編物文化協会にお問合せください。

社団法人 日本編物文化協会
電話03-5261-5088 ホームページはこちら

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