ベトナムでは、少数民族の多く住む山間部では、道のアクセスの悪さや言葉の違いのため、住民がなかなか保健施設を利用しないことが問題となっています。そのため、このような遠隔地においては、各村落から選ばれた村落保健員が、村落での保健活動の推進や保健施設へのリファラルを担っています。
今回は、チャイルド・スポンサーシップによる支援活動を行っている、ベトナムのムオンチャ地域開発プログラムにモニタリングに行った際に会った、村落保健員の活動の様子を写真でお伝えします。
午後2時。ワールド・ビジョンが支援する「保健クラブ」に参加するため、村長さんのおうちに、小さな子どもを持つモン族の女性たちが集まってきます。5月から開始したこの活動は、毎月4回行われています。
左端が村落保健員。「今日は、生後6カ月以降から始める離乳食をみんなで作っていきます。これが米粉です」とモン語で説明。この地域のモン族の女性の多くは学校に行ったことがなく、ベトナム語を理解することができないので、モン語での解説はとても重要です。
「…では、さっきの説明のとおり、実際に調理してみましょう。まず、豚肉をミンチにしましょう」
参加者の調理実習開始。食材や薪などは参加者の持ち寄ったもの、調味料、食器や調理器具などの備品はワールド・ビジョンの支援によるものです。
米粉を水に溶いたものにミンチにした豚肉を加え、調味料を加えています。
火加減の調整をする村長さん。村長さんが率先して保健クラブをすすめているこの村では、参加者のやる気度も高いように感じました。
火が通ってきました。後は、刻んだ空芯菜を加えて煮立たせれば完成。
「早く食べたいよう!」
待ちきれなくて泣き出した女の子。
そんな孫をなだめる村長さん(左端)と、
村の若いパパたち。
若いパパたちは、ママたちが旧正月のテトで売るための
ナッツを森に採りに行ったので、
子守をしながらの畑仕事の合間に顔を出したのでした。
やっとおかゆが完成。
お母さんが赤ちゃんに食べさせている間に、お姉ちゃんもパクリ。
赤ちゃんたちの試食後、今度は2歳以上の子どもの幼児食についての勉強と調理実習を始めます。
「…おかゆができ上がるのを待っている間に、女性の健康についての勉強をしましょう。えーっと、これは…」 年上の女性たちにからかわれながらも、村落保健員は話を進めます。この村落保健員は話の仕方が上手のようで、参加者も積極的に質問に答えています。
そうこうしているうちに、もう午後4時。
すぐ近くにある幼稚園に通っている子どもたち約30人が、お母さんのもとに帰って来ました。
仲良く いち、に、いち、に。
村長さんのおうちの周りに、一気に子どもたちが集まってきます。
実習で作った幼児食を食べる子どもたち。子どもたちが帰ってきたために、母親の勉強会はあえなく中断。今度の「保健クラブ」の集まりの際に、続きを行うことになりました。
保健クラブの解散後、村落保健員は、話してくれました。
「人の役に立ちたいと思って、3年前に省の医療学校で研修を受け、村落保健員になりました。この村には、子どもの栄養失調が多いので、それを改善する方法を教えたり、みんなに保健施設に行くように伝えています。保健クラブは、たくさんの人を集めて行うので大変ですが、参加者も、家庭で学んだことを実践していると言っていました。人にもっといろんなことを伝えるために、これからも、もっと勉強したいです」
地域住民の健康改善を草の根で支える村落保健員。ワールド・ビジョンは、これからも村落保健員をはじめとするカウンターパートと協力しながら、地域の人々の健やかな生活を目指して事業を行っていきます。
この記事を書いた人
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上智大学比較文化学部卒業(専攻:社会学・文化人類学)。ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院でMSc. Reproductive & Sexual Health Research修士を取得。
2010年1月 ワールド・ビジョン・ジャパン入団。2012年12月より2016年3月までベトナム、2016年4月から2018年3月までエチオピア駐在。専門領域は母子保健。
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