【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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難民との出会い~その4~  南スーダン難民の教育事情

「万人のための教育*」とはよく言ったものだ。すべての人が教育受けられるようになるために、立ちはだかる壁はあまりに大きい。

意識啓発活動の様子_未来のための教育と生徒が書いたバナーを持って行進

意識啓発活動の様子_未来のための教育と生徒が書いたバナーを持って行進

以前のブログで書いたように、私は、エチオピアにおける南スーダン難民キャンプで小学校の環境整備、運営等を担当している。学校のスペースは、地域の住民を雇って空き地の草むらを刈り取ってもらい、確保した。教室は、コンクリート製の本校舎が出来上がるまでは、壁をプラスチックシートで覆った仮教室やテントを使用している。水タンクを設置し、ほかのNGOが定期的に給水車で給水をしてくれる。ほかのNGOの協力で、仮設のトイレや手洗い場も設置した。

難民キャンプを移動していると、事業で配付した黄色い制服を着たたくさんの生徒が通学している姿を見ることができる。生徒数が非常に多いため、午前・午後の2シフト制を導入しており、生徒は午前あるいは午後のいずれかの時間帯に学校に通っている。学校に着き、朝礼を済ませ、授業を5-6コマ受ける。そして自分たちの住むテントや仮設住宅に帰っていく。子どもたちにとっての新たな日常が生まれたことは、とても嬉しい。

8年生の授業風景

8年生の授業風景

教室の中をのぞいてみると気付くことは、生徒の年齢層が高いことだ。ワールド・ビジョンは小学校高学年(5-8年生)の学校運営を行っているが、本来の対象年齢11-14歳よりも高い年齢(14-18歳くらい)の生徒が集まっている。それは、そもそも学校が身近に無い、学校に通えても退学率が非常に高いなど、南スーダン国内の厳しい教育事情を物語っている。中には、これまでずっと小学校に通えなかったので今から学びたい!という高い志を持ったシニアの方々も学校に通っている。

また、残念ながら、女性の割合が2割程度に留まっているのも一つの特徴である。それは、そもそも女子教育の重要性が浸透しておらず親が学校に通わせてくれない、家事の手伝い、子どもの世話などで忙しいなどといったことが主な原因と考えられている。

私はある日、ほかの生徒とは別の空き教室で学期末試験を受けている18歳くらいの女子生徒を見かけた。なんと、その生徒には2人の子どもがおり、試験当日も、生まれて間もない赤ちゃんを年長の子どもと一緒に連れて、世話をしながら試験を受けていたのだ。南スーダンのヌエル族の間では、「早婚」は一般的であり、14歳を過ぎれば結婚できるという。この女子生徒も、その例外ではなかったのだろう。

一般的に、早婚は女子生徒の退学の大きな原因と言われている。女子教育への理解が少ない文化の中で、幼い子ども2人を育てながら学校に通い続けることは、並大抵の努力ではできないだろう。

私は、非常に驚くとともに、この若い母親の教育への情熱に、深い尊敬の念を抱いた。この情熱の火を消さぬよう、何とかしなければ。そう強く思いながら、教室を少し急ぎ足で後にした。

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*「万人のための教育」(Education For All)-国連ミレニアム開発目標に基づき、2015年までに初等教育を受けられる、字が読めるようになる環境を整備する国際的な取組み。

**ワールド・ビジョンは、学校の環境整備とともに、特に女性が学校に通いやすくなるよう、コミュニティへの意識啓発活動を実施しています。

この記事を書いた人

村松良介支援事業部 緊急人道支援課 プログラム・オフィサー
【経歴】
2010年、北海道大学法学部卒業。
2012年1月、英国のエセックス大学大学院(人権理論実践学)修了。在学中は札幌のNPO法人やガーナ、バングラデシュの人権関連NGOにてボランティア、インターンを経験。
2012年1月ワールド・ビジョン・ジャパン入団。支援事業部緊急人道支援課 プログラム・オフィサー。2014年8月より10カ月間、南スーダン難民支援事業担当駐在員としてエチオピア駐在。

【趣味】
音楽鑑賞、歌うこと、卓球

【好きな言葉】
ある舟は東に進み、またほかの舟は同じ風で西に進む。ゆくべき道を決めるのは疾風ではなく帆のかけ方である(『運命の風』E.W.ウィルコックス)
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