【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

Read Article

もしもこの子が、私だったら。 ~一人残された少女、キムヤンちゃん~

タイとの国境に近い、カンボジア北部の小さな村。
キムヤンちゃん(9歳)はここで、おばあちゃんと2人で暮らしている。
まんまるの顔にあどけなさが残る、可愛らしい女の子だ。おばあちゃんにピッタリくっついて離れない様子も相まって、年齢より随分小さく見える。

6月、私は厳しい環境の中で生きる子どもたちの生活を追ったテレビ番組の取材のため、キムヤンちゃんの住む村に出かけた。

キムヤンちゃん(9歳)とおばあちゃん。

キムヤンちゃん(9歳)とおばあちゃん。

出稼ぎに出たお父さんと、突然連絡が途絶え・・

キムヤンちゃんのお母さんは、彼女が生まれてすぐ、マラリヤにかかって亡くなった。
病院に行くお金がなく、どうしようもなかったとおばあちゃんは話す。
お父さんはタイに出稼ぎに行ったまま、行方不明だ。
お父さんの携帯電話に電話することが、小さなキムヤンちゃんの楽しみだったというが、ある日、その電話番号にかけても、繋がらなくなってしまった。以来、連絡は途絶え、仕送りも止まったままだ。
国境の町まで、おばあちゃんと一緒にお父さんを探しに出かけたこともある。でも、お父さんの姿はなかった。
両親を次々に失ったキムヤンちゃんは、その心細さからか、おばあちゃんから片時も離れない。

もしもこの子が、私だったら?

お母さんを亡くし、大好きだったお父さんにもある日、突然会えなくなってしまったら。

その心細さを思うと、キムヤンちゃんが片時もおばあちゃんから離れようとしない気持ちが伝わってくる。

おばあちゃんの愛。貧しくても、他の子と同じように・・

おばあちゃんも、そんなキムヤンちゃんを可哀想に思い、出来る限りの愛情を注いでいるが、仕送りが止まった今、日々の食事もままならない。裏の畑で野菜を育て、それを売って生活しているが、今年、この地域一帯を襲った干ばつのため、農作物は次々と枯れてしまう。売れる野菜がない日には、2人の食事はない。

おばあちゃんの畑仕事を手伝うキムヤンちゃん

おばあちゃんの畑仕事を手伝うキムヤンちゃん

しばらくして慣れてきた頃、ようやくキムヤンちゃんに話しかけることができた。

「水玉のワンピース、似合ってて可愛いね。他にはどんなお洋服を持ってるの?」
すると、笑顔でたくさんの洋服を運んで見せてくれたキムヤンちゃん。
食べるものもままならない、というおばあちゃんの話を疑うほど、服の数が多かった。中に1着、ドレスのような新品のワンピースまであった。

おばあちゃんは言った。
「こんな小さいのに、両親を失って可哀想で。せめて、他の子と同じように、可愛らしい洋服を着せてやりたい」

食べるものがないなら、なぜ新しい洋服を買うのか?と思うかもしれない。
でもそれが、おばあちゃんができる精一杯のキムヤンちゃんへの愛情だった。

危険な、スイカ売り

スイカを頭に乗せて幹線道路を売り歩くキムヤンちゃん。車の往来が激しく危険を伴う。

スイカを頭に乗せて幹線道路を売り歩くキムヤンちゃん。車の往来が激しく危険を伴う。

おばあちゃんに寄り添って離れないキムヤンちゃん

おばあちゃんに寄り添って離れないキムヤンちゃん

畑では、枯れ草の間に小さな実をつけたスイカがなんとか生き残っていた。

スイカを売りに行くというキムヤンちゃんに、その様子を見せてもらった。
農村部とはいえ、近くには車の往来が激しい幹線道路がある。乗用車や大きなトラックが音をたてて猛スピードで過ぎる。
その脇を、キムヤンちゃんは一人、スイカを売りに歩くのだ。今日、おばあちゃんと食べる食糧を買うために。

広い道路に出ると、小さなキムヤンちゃんが、より小さく見えた。

もっとも、優しい「夢」

取材で子どもたちに会うと、必ず将来の夢を聞くことにしている。
「学校の先生になりたい」「病気の家族のためにお医者さんになりたい」
小さな体に秘められた、大きな可能性を見るのが嬉しい瞬間だ。

しかし、キムヤンちゃんは、なかなか答えられない。
恥ずかしそうにおばあちゃんにくっついて、何も言えなくなってしまった。

もう答えを聞くのは無理そうだな、と思った時である。

「おばあちゃんを車に乗せて、いろんなところに連れて行ってあげたいの」

予想外の答えに驚きながらも、おばあちゃんのことをこんなにも慕う小さな女の子の思いに胸が締め付けられた。

先生でも、お医者さんでもない、とても優しい、彼女の「夢」
この子の夢がかなうようにと、心から願った。

 

クリスマスまでに、あと3000人の子どもを救いたい

ワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサーシップは、
キムヤンちゃんのように、厳しい現実を生きる子どもたちが、
未来の可能性を信じて生きていけるように、長期的な支援を行っている。

子どもたちが、自分の力で歩いて行けるように。
ひとつひとつの夢がかなってわたしたちの支援が必要でなくなるその日を目指して。

クリスマスまでに、あと3000人の子どもを救いたい。
チャイルド・スポンサーになってください。

 

ワールド・ビジョン・ジャパン チャイルド・スポンサーシップ課
山下泉美
テレビ番組「バングラデシュに生きる子どもたち(2015)」「ルワンダの祈り(2015)」他の取材を担当。
キムヤンちゃんの動画を見る

 

■山下スタッフの過去のブログ
子どもを想う力、音楽の力:ワールド・ビジョンの新テレビ番組、挿入歌に「ひまわりの約束/秦 基博」
・バングラデシュ スラムの少女 怖いと感じたら生きていけない

この記事を書いた人

WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
Return Top