2015年10月22日。この日の南スーダン・ジュバUNハウス内の国内避難民キャンプでは、いつものようにさんさんと照る太陽は見当たらず、小雨から大粒の雨へ変わり、一度止んだと思ったらまた降り出す、その繰り返しでした。雨が降っている間は、食糧が濡れてしまうため、食糧配布を中断しなければなりません。
「いいえ、ここで待つわ!」
ワールド・ビジョンのスタッフが、すぐそばにある簡易テントで雨宿りするように提案しても、食糧を受け取りにきた南スーダンの女性たちは、頑なにそう答えました。激しさを増してきた雨が、彼女たちの色鮮やかなスカーフを濡らしてもです。
食糧配布では、先着順で品切れになることなんてまずありません。登録されているすべての国内避難民の食糧は確保されています。それでも、彼女たちは必死です。月に一度の食糧配布が、彼女たちにとって、また彼女の子どもたちにとって、どれほど大切なことなのか、私にもひしひしと伝わってきました。
南スーダンは、40年以上も続いた内戦の後、2011年に独立した世界で一番新しい国です。平和の定着に向けて活気づいていた2013年12月、残念ながら紛争が再発してしまいました。部族間の対立が激しくなり、身の危険を感じ居場所をなくした人々が、安全を求め国内各地の国連施設に避難しました。ワールド・ビジョン・ジャパンは、そうして設置された国連施設内の国内避難民キャンプで、WFP(国連世界食糧計画)と連携して食糧支援を実施しています。
ニャウアル(Nyaual)さんも、身の危険を感じて避難してきた国内避難民のうちのひとりです。25歳で、お子さんは3人いらっしゃいます。最初はジョングレイ州のボー(首都ジュバより北に約200km)で避難していましたが、避難先の国連施設も武装グループに襲撃されるなど、治安がさらに悪化したため、お茶を売って稼いだお金を使って子ども3人とジュバの国内避難民キャンプに逃げてきたのだそうです。いつ故郷に戻り安全な生活を取り戻せるかは、彼女もまだわかりません。
別れ際にニャウアルが私を呼び止めて言いました。
「私のテントは、雨が降ると雨漏りがひどいの。もし、あなたが新しいビニールを手に入れることがあったら、ぜひ私にちょうだいね!」
統計的に、難民の80%は女性と子どもだと言われています。ここの国内避難民キャンプも例外ではなく、外で元気に遊ぶ子どもたちをよく見かけます。
帰り際、「ちゃんと食糧が行き届いているのかな?元気そうな子どもたちが多いね!」と私は、ワールド・ビジョンのジュバ食糧支援プロジェクトのマネージャー、ギフト・シバンダに話しかけました。そうしたら、意外な返事が返ってきました。
「たまに、子どもの喧嘩がエスカレートして、攻撃し合うようなこともあるんだ。きっと紛争の影響を受けているんだね。遊び方が暴力的になってしまうのは、子どもたちの成長においてすごく深刻な事態なんだ」
国連児童基金(UNICEF)「世界子供白書2015」によると、南スーダンでは5歳未満の子どもの10人に3人が、今も栄養不良に苦しんでいます。今回南スーダンを訪問し、私たちが南スーダンの皆さんといっしょに取り組むべきことは、食糧支援を始めまだまだたくさんあるのだと感じています。
今、ワールド・ビジョン・ジャパンでは、子どもたちの栄養不良を防ぐため、安全な水と食糧をお母さんと子どもたちに届けるため、水と食糧のための募金を募集しています。ぜひご協力お願いいたします。
この記事を書いた人
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大学卒業後、民間企業に2年間勤務したのち、NGOのキャンペーンスタッフやインターンとして開発支援に関わる。
その後、一般社団法人での南スーダン能力開発プロジェクトのコーディネーターを経て、2015年7月にワールド・ビジョン・ジャパン入団。
南スーダンの教育支援事業とWFP(国連世界食糧計画)の食糧支援事業を担当。
2020年2月家庭の都合により退団。2021年7月に再入団。マーケティング第2部サービス開発課に所属。
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