以前から予定をしていたミャンマーへの出張してきました。
チャイルド・スポンサーシップによる支援地域を訪問し、事業進捗状況の視察が主たる目的です。
ミャンマーでWVJが支援をしているのは南部のエーヤーワーディー管区にあるタバウン地域開発プログラム(以下、ADP)。
イラワジ川によって作られたデルタ地帯に位置する同地域は水が豊かで、土地も肥沃です。
ただ低い海抜のため、雨季になると増水した川の水が軒下にまで迫ります。
農地が冠水するほど増水し、農産物、家畜への被害が及ぶ洪水となります。
2008年5月、ミャンマーをサイクロン・ナルギスが襲いました。
家屋被害80万棟、冠水した農地60万ヘクタール、死者および行方不明者13万8000人(国連、ASEANおよびミャンマー政府発表)という未曾有の災害は、この地域にも少なからず被害を及ぼしました。
今回、視察をしたパヤーヌー村は、整備された道がないため、ADP事務所から約1時間、エンジン付きのボートに乗って行きます。
豊かな水の流れを眺めながらADPスタッフと2008年当時の話になりました。
幸い、この一帯はサイクロンの直撃は免れましたが、数日間、交通や通信が途絶し、ヤンゴンの事務所と連絡が取れず不安な数日間を過ごしたとのことでした。
村を歩いていてチャイルドの一人、ケイ・カイちゃん(仮名、7歳)に出会いました。
ちょうど夏休みで彼女が通う小学校もお休みとのことで、近所の子ども達とあそんでいるところにおじゃましました。
このADPが始まって何が変わったのかと尋ねたところ、お母さんが代わって答えてくれました。
「まず、衛生的で安全な水を飲む大切さを学び、気を付けるようになりました。それから自分の家や近所の家にもトイレができたことで病気が減りました。
それからケイ・カイが就学前教育センターで楽しく学んで小学校に進学できたことです。就学前教育センターの先生は村人が協力して手当を支払っているんですよ。」
このような変化が、個人ではなく村人の協力によって実現していることが印象的でした。
途中、家の前に水瓶が置いてあるのを見つけましたが、
通りがかりの子どもがコップを取ってそこから水をぐいっと飲み干すと立ち去って行きました。
「この家の子?」と尋ねると、
「これは村の人がいつでも安全な水を飲めるように家主が濾過した水を軒先に置いているもの。
のどが渇いたといって川や井戸の不衛生な水を飲んだりしないように地域ぐるみでの取り組みさ。」
という返答が返ってきました。
この地域ぐるみの取り組み、洪水などの防災対策にも当てはまるということです。
ADPから技術的支援を受け、防災計画は住民共同で作り、緊急時に使うための穀物の備蓄を始めているとのこと。
また各戸に配布されたラジオで天気や増水の状況を知って早めに警戒態勢を取ったり、学校でも避難訓練をするようになったということです。
いつ何時来るかわからない自然災害。
それに立ち向かうのは日本でも途上国でも地域のきずなが鍵であると感じました。
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こちら(↓)は、タバウン地域開発プログラムで、洪水に備えた防災訓練を行っているようすの動画です。音声は英語ですが、現地の雰囲気が伝わってきますのでよろしければぜひご覧ください。
この記事を書いた人
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国立フィリピン大学社会福祉・地域開発学部大学院留学。
明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了。
社会福祉専門学校の教員を経て、2000年1月より社団法人日本キリスト教海外医療協力会のダッカ事務所代表としてバングラデシュへ3年間派遣。
2004年12月から2007年3月までは国際協力機構(JICA)のインド事務所企画調査員。
2007年9月から2年半は、国際協力機構(JICA)のキルギス共和国障害者の社会進出促進プロジェクトで専門家として従事。
2010年9月、ワールド・ビジョン・ジャパン入団。
支援事業部 開発事業第2課 プログラム・オフィサー。
2020年3月、退団。
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