この間の9月で入団して1年が過ぎた。
入団初日のランチで、「ワールド・ビジョンにはセキュリティトレーニングというものがあって、拉致されたり、銃撃戦に巻き込まれたことを想定して実践を通して学ぶ機会がある」と、課の先輩のハードコアな体験談を聞いて、「これはちょっとすごいところへ入ってしまったものだ」、とこっそり思っていたのだが、とうとうそのトレーニングへ参加する事になった。
開催地はプーケット。ちょっとだけプーケットという響きに思いをはせてはいたものの、物見遊山もできない、あまりに濃い4日間を過ごしてきたので、少しだけご紹介できればと思う。
緊急人道支援活動を行う中で、支援関係者が銃撃戦に巻き込まれたり、誘拐、地雷被害、窃盗、暴行などに会う可能性は、ゼロではない。もしそういう事態に遭遇してしまった場合、どういう風に自分の身を守るのか、どのように生き延びるのかは、支援を行う者が知っておくべきことだと思う。
このトレーニングは、生き延びるのに有効な知識を座学で学ぶのが2日、実践の研修を行うのが残り2日となっていた。
脳というのは面白いもので、人間が学んだことを実際に行動に移して100%成果を出すには、脳がその時と同じ状態でなくてはいけないらしい。つまり、緊急時に対応する知識を習得したければ、緊急時を体験しなくてはいけないという事だ。
だから「かなり現実に近い形で」トレーニングをするらしいが、実際に起こったら失敗できない現場に赴く前に、ここでたくさん失敗できる場を与えられていた事は、良い機会だったと思う。
例えば、手りゅう弾が投げ込まれた、と想定して、まずどう動くのか、どこへ逃げて、どのように身を守るのか、プーケットの美しいビーチが見渡せる木陰でひたすら練習はしたものの(観光できている人々にしてみれば、20人強の集団が突然伏せたり叫んだりしているのは異様に映ったと思う)、実践で、道で突然手りゅう弾的なものが投げ込まれた時、私は自分を守り切れていなかったと断言できるし、グループ全員が右往左往していたように思う。
ただ、手りゅう弾的なものはその後何度も投げ込まれるため、最後には全員体が覚えていた。この瞬間に、おそらく私の脳は「手りゅう弾への対応」を学んだんだろうな、と感じた。
トレーニング中には、その他にもバスジャックにあったり、検問所を通ったり(通れなかったり)、尋問されたり、誘拐されたり、など色々起こったが、特に学んだことは、そういう場面に遭遇したときのリアクションは、個人によって違う事だ。
頭に布をかぶせられてどこかへ連れて行かれた時には、完全に孤立化した中で、私はただどんどん、判断能力が鈍っていって、無気力になっていったのだが、同じ環境でも、ひたすら自分の世界にのめりこんでいった人もいれば、冷静に動じなかった人もいた。
同じ事象の中で、これほどまでに違うリアクションを取ったり、考えたりしているんだな、と不思議に思った。
実際に研修に行って、帰って数日は物音にやたら敏感になったりしていたが、いつでも危機感をそこそこ持っていることは大切なので、過敏にならない程度に、年を越せればいいなと思う。
「“何もかも”はできなくても“何か”はきっとできる」
クリスマスまでにあと約1500人の子どもたちが、チャイルド・スポンサーを待っています
この記事を書いた人
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イギリス、マンチェスターメトロポリタン大学にて政治学部卒業。
大学在学中にWFP国連世界食糧計画にてインターン。
2010年9月より支援事業部 緊急人道支援課(旧 海外事業部 緊急人道支援課)ジュニア・プログラム・オフィサーとして勤務。2012年9月よりプログラム・オフィサーとして勤務。2016年7月退団。
趣味:読書、映画鑑賞、ダイビング
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