「地図から踏み出す」がここ数年の私たちのテーマでした。一歩踏み出し新しいことに挑戦する、という趣旨です。しかし2020年は、「地図から放り出されて」始まりました。
新型コロナウィルスで世界は激変しました。私たちの活動現場は、衛生環境が悪く医療資源の少ない途上国にあります。感染リスクは高く、経済社会への影響も深刻です。
新型コロナウィルスは、当然日本にも大変大きな打撃を与えました。先行き不透明な中、私自身、途上国の実情を発信することに、迷いや躊躇がありました。けれど実際には、私たちの予想をはるかに超えるご支援や応援の声が届いたのです。「自分も大変だからみんなの苦労もよくわかる」というご支援者の言葉が、ほんとうに心に滲みました。
温かいご支援に支えられ、ワールド・ビジョンは70カ国で対コロナ緊急人道支援を開始。これまでに5,800万人以上に医療物資や食糧、遠隔教育、生計支援等を行っています。
(参考リンク:【新型コロナ】5,800万人以上を支援、ぜい弱地域でのワクチン接種支援も開始)
そして気がつけば、新しい地図を歩いていました。感染防止のためモバイルテクノロジーを駆使した支援活動、報告会やイベントのオンライン化、リモートワーク・・・。
リモートワークで実施できたイベント例と、活動紹介スタッフブログ:
・緊急オンライン報告会 COVID-19x難民支援:351名の皆さまが視聴
・おうちでワールド・ビジョン・フェス♪~支援地報告やイベントをあなたのご自宅で~
・コロナ時代の世界はどうなる?日本人の知らないアフリカの新たな貧困と国際支援
・地図から放り出された、その先に
・子どもたちの学びを支える3つの力
・孤高のテレワーク、想像力をフル稼働
想像もしたことのない景色が広がりました。そして多くの学びと気づきがありました。その中で、「地図から踏み出すにはダイジかも」と考えさせられたことがありました。
キーワードは「信じる」です。
第1に、「私たちが信じる」ことを臆することなく発信する、です。
発信するナカミは、私たちが勝手に考えたことではなく、支援地にいる子どもや若者の「声」です。私たちが信じることは、子どもや若者の声を聴くことが、未来志向のよりよい社会を作っていくために不可欠だということです。
第2に、「仲間を信じる」、です。
リモートワークになってコミュニケーション方法が大きく変わり、みんな本当に苦労しました。でも1年を振り返ると、コロナ前に計画していたほぼすべてが実行でき成果が出ています。実は言うほどタイヘンじゃなかったのか・・というとスタッフに叱られますが(笑)、どんな逆境にあっても、『すべての子どもにゆたかな命を』というビジョンのために知恵と心を尽くす同僚がいるーこれが信じられるからこそ、地図から踏み出す勇気が出るのだと思いました。
↑「うちで踊ろう」改め「うちで働こう」。世界の子どもたちのためにがんばりたい!の気持ちを込めて、自宅から、海外から集合して動画を作りました(左下が筆者)
第3に、「きっとよくなると信じる」、です。
ただしこれには、私たちが信じチカラを尽くしていること/方向性が正しければ、という前提条件がつきます。正しければ、賛同くださる方々が拡がる、よりよい支援を多く届けることができる、それが子どもや若者にとって希望ある社会の実現につながるーそう信じて、踏み出してみるということかな、と今は考えています。よい結果が出ない場合は私たちのやり方が間違っているのでしょう。そのこともしっかり受け止め、見直して変えていく謙遜さと柔軟性を持っていきたいと思います。
2021年も、(ナニが待っているかわかりませんが(汗))勇気を持って一歩を踏み出し新しい道を拓いてまいります。引き続きよろしくお願いいたします。
この記事を書いた人
- 青山学院大学を卒業後、国際協力銀行(JBIC)前身のOECFに入社。途中英国LSE(社会政策学)、オックスフォード大(開発経済学)での修士号取得をはさみ、アフリカ、インドネシア、フィリピンにおいて円借款業務を担当。母になったことを契機に転職。東京大学にて気候変動、環境、貧困など21世紀の課題に対応するSustainability Scienceの研究教育拠点形成に従事。「現場に戻ろう」をキーワードに08年10月よりWVJに勤務。アフリカ、中南米、ウズベキスタンを担当。2011年5月より、東日本緊急復興支援部長。2013年4月より副事務局長。2017年4月より事務局長。2020年4月より現職。青山学院大学非常勤講師、JICA 事業評価外部有識者委員、JANIC理事、日本NPOセンター副代表理事
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