「学校に行けていないチャイルドが増えている」
という報告がラオス・パランサイ地域開発プログラム(以下ADP)からありました。原因を確認すると、ADPの地域を横断して走る国道9号線周辺の工業化が大きく影を落としていることが明らかになってきました。
南北に細長い内陸国のラオスは東にベトナム、西にタイとの国境を接しています。
国道9号線はまさにこの両国をまたいで走る道路です。日本の政府開発援助なども活用してこの国境や国道が整備されたことにより物流が増加。またそれと関連した工場やプランテーションが周辺に建てられるようになっています。
それら工場やプランテーションでは多くの労働力を必要とするために近隣の村にまで求人の声がかかっているということです。それを受けて親が土地を離れたり、労働力として子どもたちまで駆り出されるために学校に行けなくなっているというのです。
年間を通じた食料の確保もままならないラオスの農民にとって、遠い将来の子どもの教育の成果よりも目の前の現金収入を優先せざるを得ない気持ちも理解できます。
ADPではそのことも踏まえて、教育や収入向上の活動を行っているのですが、この変化が現地の人々の思惑をはるかに超えるスピードで進んでいることが大きなチャレンジとなっています。
経済成長著しいアジア。それは都市と農村、あるいはより豊かな国と貧しい国の格差を利用したものでもあります。
人口600万人足らずのラオスは市場としての規模も小さく、内陸国のため国内産業が育ちにくい環境です。そのため、周辺国からみると廉価な労働力の市場になってしまうというジレンマを抱えています。
不当な賃金で働かされたり、望まない仕事をさせられる、知らない場所で働かされたり、働かせてはいけない子どもたちまで巻き込まれる、いわゆる人身取引の危険が増加しています。
この問題を話し合うため、現地を訪問。ADP関係者と話し合いました。その結果、以下の取り組みを行うこととなりました。
*大人が現金収入を求めて地域を離れないでも済むよう、地域の中での収入向上の活動機会を着実に育てていく
*子どもたちが学校に行きたい!と大人に強く訴えられるよう、学校の設備やカリキュラムの内容をもっと魅力的にすること
*学校に行く機会が阻まれている子どもたちには放課後や週末の子どもクラブなどの活動を通して多様な学ぶ機会を提供すること
*子どもたちが教育を受けることは権利であり、大人はそれを守る責任があることを繰り返し啓発していくこと
*人身取引に巻き込まれないよう予防のための教育を強化していくこと
もちろんこれですべて問題が解決できる訳ではないことは承知しています。しかし、このような取り組みを地道に続けていくことが、必ず子どもが健やかに成長できる地域社会づくりにつながると信じています。
子どもたちみんなが笑顔で「学校に行こう!」と言えるように皆さまの応援をお願いいたします。
1日150円、ペットボトル1本分のお金で、今日も少しずつ幸せになっていく子どもたちがいます。
その幸せは、きっとあなたを幸せにする。
一緒に幸せになろう チャイルド・スポンサーシップ
この記事を書いた人
-
国立フィリピン大学社会福祉・地域開発学部大学院留学。
明治学院大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了。
社会福祉専門学校の教員を経て、2000年1月より社団法人日本キリスト教海外医療協力会のダッカ事務所代表としてバングラデシュへ3年間派遣。
2004年12月から2007年3月までは国際協力機構(JICA)のインド事務所企画調査員。
2007年9月から2年半は、国際協力機構(JICA)のキルギス共和国障害者の社会進出促進プロジェクトで専門家として従事。
2010年9月、ワールド・ビジョン・ジャパン入団。
支援事業部 開発事業第2課 プログラム・オフィサー。
2020年3月、退団。
このスタッフの最近の記事
- 開発援助2018年12月3日NGOスタッフの記憶に残るギフト(6)~命のプレゼント~
- アジア2018年10月17日置かれた場所は途上国|フィリピン -NGOスタッフとしての原点-
- 開発援助2015年12月2日教育を受けて夢をかなえたい!-障がいのある子どももない子どもも、すべての子どもに夢を、そして力を
- 事務局2014年6月9日障がいのある人もない人も住みよい社会へ