7月7日のロンドンでの爆破事件の後、イギリスで良く使われることばがある、とイギリス在住の友人から聞きました。それは、”resilience(リジリアンス)”ということばで、辞書によると「回復力」とか「元気」とあります。何か衝撃的なこと、ショックなことにぶつかり、がっくりと落ち込みそうになった時に、そこから立ち上がり、前に向かって進もうとする力、弾力性に富んだ復元力と言う事ができます。
同時多発テロという惨劇の中で、ブレア首相、リビングストン・ロンドン市長をはじめ、多くの人々がこのことばを使って、「こんなことには負けない。私たちはへこたれないぞ」と語っているようです。特にエリザベス女王は、戦中のロンドンもそうだったと、市民・国民を称え、励ましました。事件後のロンドン市民のインタビューでも「いつものように生活する。テロリストの思惑にははまらない」という言葉を何度も聞きました。これは、2001年9月、ニューヨークでの同時テロの後多く聞かれた、「やられたら、やり返す」という姿勢と比べると、大きな違いがあると感じます。イギリス政府としてはイラク戦争に介入し、国内の一部にはイスラム教徒への攻撃があります。しかし、多くの一般の方々は、報復が報復を生むという暴力の連鎖の危険性を感じ取っているように思います。だからこそ、しなやかに、普通の生活を続けようとしているのでしょう。そこに、テロや紛争にめげず平和への強い思いを持ちつつ歩む人々の清々しさを感じます。
この記事を書いた人
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大学卒業後、三井住友海上火災保険株式会社(旧大正海上火災)入社。1982年同社を退職し、キリスト者学生会(KGK)の関東地区主事となる。海外との文化交流事業、日本人学生の海外派遣事業、在日留学生の支援事業等も行う。フィリピンにおける2カ月間の研修および中国、タイ、インド、インドネシア等の視察を行う。
1992年同会を退会し、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン入団、2000年から2017年まで事務局長。2017年4月から常務執行役員、常務理事などを歴任。2023年10月より現職。
その他の役職: 社会福祉法人キングス・ガーデン東京 理事長
公益財団法人国際開発救援財団 理事
福音主義医療関係者協議会 顧問
1999年イギリス マンチェスター大学大学院IDPMにて「社会開発」と「NGOマネージメント」を学ぶ。
2020年 立教大学大学院キリスト教学研究科修了(神学修士)
共著:「連続講義 国際協力NGO」(日本評論社)、「国際NGO が世界を変える」(東信堂)
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