「希望のたね」、これはワールド・ビジョン・アフガニスタン事務局長が今年3月に来日した際に語った言葉です。
彼自身がどのようにしてアフガニスタンの小さな少女に希望の種を届けることができたのか、そして今でも多くの困難を抱えるアフガニスタンの人々に希望のたねを届けたいという想いを静かに、でも力強く語った彼の言葉は、ワールド・ビジョン・カフェ(支援活動の報告会)に参加したご支援者の皆さまと私を含むワールド・ビジョンスタッフの心を強く打ちました。
そして、気づいたのです、私も南スーダンに「希望のたね」を届ける支援がしたいと!
私は、昨年7月にワールド・ビジョンに入団し、南スーダン事業を担当しています。2013年に紛争が再発した国、南スーダンでは「何もかも」が不足しています。食糧、水、病院、薬、安全な住居、トイレ・・・足りないものを挙げたらきりがありません。
そんな中、私たちワールド・ビジョン・ジャパンが、ジャパン・プラットフォーム(JPF)からの助成金と皆さまからの募金による事業で選んだ支援分野は、教育です。
南スーダンの小学校就学率35%、小学校修了率10%未満、どちらも世界最低基準です。南スーダンの子どもたちは、先生から教わり、友達と一緒に学習し、遊び、成長する喜びを感じることなく、小学校を卒業することもできないまま、どのようにして将来への希望がもてるのでしょう?研究結果によると、教育を受ける機会における不平等がある地域では、紛争再発のリスクが約3倍高くなるといわれています。
教育支援の支援事業地は、西エクアトリア州(現28州制ではグブドゥエ州)のタンブラ郡です。そもそも学校に行くことができていない子どもが多いという問題だけではなく、郡内の約8割の学校に校舎がなく、子どもたちは木陰の丸太に座り青空教室で学んでいます。当然のことながら、雨期になり雨が降ると全く授業ができなくなってしまいます。教員においては、郡内の小学校教員の94%が教員免許を持っておらず、指導スキルや知識に課題が残ります。
そこで支援事業では、タンブラ郡教育局と協力しながら、3つの学校の校舎・トイレの整備、教員・PTA研修等を行い、ひとりでも多くの子どもたちが学校に通い学ぶ喜びを感じられることを目指し、支援しました。その結果、各学校の就学児童数が約2倍に増えたのです!これまでずっと取り残されていたタンブラ郡の教育現場。子どもたちの保護者やコミュニティの期待、そして誰より子どもたちの強い期待を感じています。
ところが、喜んでばかりいられません。まだまだ課題は山積みです。小学校の中途退学率は高学年の方が高くなっており、多数の児童は学校に通うことを諦め、中途退学してしまう現状があります。特に女子児童は、成長による身体の変化と必要な物資の不足から、学校を休むことが多くなってしまい、授業についていくことができず、中途退学してしまいます。
就学児童数を増やすだけではなく、維持するための長期的支援が必要です。ワールド・ビジョン・ジャパンは、郡教育局、教員、コミュニティ、児童、それぞれと協力して、タンブラ郡の教育を高めるための活動を今後3年に渡り実施する予定です。
来月7月には完成した校舎の引渡式を行います。その際に、南スーダンに暮らす子どもたちに、教育という小さな「希望のたね」が届けられたことを確認できればと思っています。長い紛争を経験して独立した世界で最も新しい国、南スーダンは、7月9日の独立記念日にやっと5歳になります。だからこそ、決して簡単なことではないのですが、この小さな希望のたねが、やがて大きくなり、芽を出して、成長し、花を咲かせることを信じて、私は今日も南スーダンと一緒に活動します!ぜひ皆さんも、南スーダンに「希望のたね」を届けてみませんか?
※今、ワールド・ビジョン・ジャパンでは、紛争により教育の機会を奪われた子どもたちに支援を届けるための募金を募集しています。ぜひご協力お願いいたします。
この記事を書いた人
-
大学卒業後、民間企業に2年間勤務したのち、NGOのキャンペーンスタッフやインターンとして開発支援に関わる。
その後、一般社団法人での南スーダン能力開発プロジェクトのコーディネーターを経て、2015年7月にワールド・ビジョン・ジャパン入団。
南スーダンの教育支援事業とWFP(国連世界食糧計画)の食糧支援事業を担当。
2020年2月家庭の都合により退団。2021年7月に再入団。マーケティング第2部サービス開発課に所属。
このスタッフの最近の記事
- 事務局2022年3月24日私が見たい未来。それは、世界的ハリウッド女優が愛した詩に描かれた世界
- 事務局2021年10月11日「おかえりアイコ」私がワールド・ビジョンに戻った理由
- アフリカ2019年12月24日忘れられない事業地訪問~南スーダン・タンブラ州での校舎引渡式に参加して~
- 緊急人道支援2019年1月10日食糧支援に取り組むスタッフが共有する思いとは?