アフリカの地方の多くの村(コミュニティ)がかかえる問題は、水、食糧、教育、です。
ルワンダもその例外ではありません。
でもルワンダにはこれらに加え、国民全員が直面する厳しい現実があります。
今回のブログは、この厳しい現実に真摯に立ち向かうルワンダの人々についてご紹介したいと思います。
みなさんは、「ルワンダ」と聞いて、ナニを思いますか?
多くの方が、1994年におきたジェノサイド(大量虐殺)のことを思い出されるのではないでしょうか。
映画「ホテル ルワンダ」をご覧になった方もたくさんいらっしゃると思います。
近代史上最悪の大量虐殺、と言われる悲劇です。
80万人とも100万人とも言われる人々が犠牲となりました。
たった3ヶ月の間に。
1日約1万人の方が命を落としたことになります。
しかも、極めて残虐な方法で。
国土も壊滅状態になりました。
その後の国を挙げてのがんばりで、いまは目覚しい復興を遂げつつあります。外国の投資も入りつつあります。
けれど、17年を経た今でも、人々の心と生活には、ジェノサイドの爪あとが深く残っています。
だいたい、目の前でジブンの家族が、ナタで刻まれ、棍棒で殴り殺されたら、、、。
想像しただけでも、鳥肌がたちます。
生涯、一瞬たりともその光景を忘れることはできないでしょう。
大体正気でいられるかどうかさえ、さだかではありません。
それに加えて。
これまで収監されていたジェノサイドの加害者たちが、刑期を終えて出てきているのです。
帰ってくるところは、ほかでもない、以前の自分の家です。
被害者にしてみれば、家族を殺した「かつての近隣者」が、村(コミュニティ)に帰ってくるのです。
日本では考えられないことです・・・。
もうひとつ、日本と(とくに都市部と)違うのは、途上国での「コミュニティ」は、運命共同体みたいなもの、というところです。
病気になったときに、代わりに水汲みに行ってくれる隣のおばさん。
オカネを貸してくれる隣のおじさん。
コミュニティの結束が、人々の生きる力に直結しています。
そんなダイジなコミュニティに、ジブンの家族を殺した人が帰ってくる。
助け合って生きていく仲間に戻れるのか。
私だったら、最低限のお付き合いだってお断りです。
ていうか、そんなことが現実にあるなんて考えられません。想像さえできません。
けれど、ルワンダの人々には、それが現実なのです。
しかもほとんどの人たちにとって。
加害者だって心に深い傷を負っているのだそうです。
ジェノサイド当時は、殺戮に加わらなければ自分が殺される、ということも多数あったそうです。
人を殺めたときの光景が脳裏から離れず、悪夢にうなされる人も、罪悪感にさいなまれ苦しむ人も、たくさんいるそうです。
劣悪な環境の刑務所で10年以上を過ごし、心身ともに疲れ果てて出所し、
村に帰ったところで、自分は受け入れられるのか・・・
不安は大きいでしょう。
10年近くを経て帰ったところ、かつての妻は再婚しており、帰る場所がないことも少なくないようです。
いま、ルワンダでは、コミュニティのひとつひとつで、ふたたび融和と平和をとりもどすべく、さまざまなことが行われています。
誰にも言えなかった心の傷を吐露し、分かち合い、励ましあい、理解しあおうとする試みです。
加害者は、勇気をふりしぼって、被害者に赦しを乞いにいくそうです。
そして被害者のなかには、すべてを水に流して赦し、和解に至るケースもあります。
あるいは、ジェノサイドで破壊された被害者の人たちの家を、加害者が修復の手伝いをする。共同作業をつうじて、少しずつ、心に通うものがでてくるのだそうです。
ルワンダの厳しい歴史を考えると、これらの試みがそんなに簡単にいかなくても、ある意味当然だと思います。
それでも必死に前を向いて、歴史を受け入れ、自分を変えていこうとするその姿勢をみると、人間は強いんだなぁ、いや、ルワンダの人は強いなぁ、という感嘆の思いしかありません。
ワールド・ビジョンが行うルワンダでの事業にはすべて、この、「コミュニティの融和と和平の再構築」のための活動が入ります。
ワールド・ビジョン・ジャパンが、この秋から始める「グウィザ地域開発事業(ADP)」もそのひとつです。
グウィザ地域は、ジェノサイドで最も深刻な被害を受けた地域のひとつです。
それに、水汲みに往復4時間もかける少女がいるような厳しい地域でもあります。
でも私が訪ねた学校では、子どもたちは横目で珍しそうに東洋人を見つつも、目を輝かせて先生の授業に聞き入っていました。
ジェノサイドのころ子どもだった人々が、今、親の世代になっています。
彼らの心の傷を癒し、コミュニティの融和をはかっていくことが、子どもたちの未来に不可欠な第1歩です。
ルワンダの人々は、果敢に前向きに生きていこうとしています。
この記事を書いた人
- 青山学院大学を卒業後、国際協力銀行(JBIC)前身のOECFに入社。途中英国LSE(社会政策学)、オックスフォード大(開発経済学)での修士号取得をはさみ、アフリカ、インドネシア、フィリピンにおいて円借款業務を担当。母になったことを契機に転職。東京大学にて気候変動、環境、貧困など21世紀の課題に対応するSustainability Scienceの研究教育拠点形成に従事。「現場に戻ろう」をキーワードに08年10月よりWVJに勤務。アフリカ、中南米、ウズベキスタンを担当。2011年5月より、東日本緊急復興支援部長。2013年4月より副事務局長。2017年4月より事務局長。2020年4月より現職。青山学院大学非常勤講師、JICA 事業評価外部有識者委員、JANIC理事、日本NPOセンター副代表理事
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