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[ルワンダ] 虐殺の武器としてのHIV~母子感染によってHIVを持って生まれた少女、マリアちゃん (パート1)

激しい殺戮の歴史があるアフリカ中部の国、ルワンダ

22年前、この国でおきた大虐殺ジェノサイドは、「現代で最も残虐なジェノサイド」とも呼ばれる。たった3カ月間で、80万人が虐殺された。国中に遺体が横たわり、犠牲者を見ずに通れる道はひとつとしてなかったという。

ルワンダのジェノサイドが残虐と言われるのは、その被害規模だけではない。HIVに感染した兵士が多くの女性に性的暴行をはたらき、兵器としてそれを用いた。HIVを感染させ、ゆっくりと死に至らせるという卑劣な行為が行われていたのだ。

1994年におきたルワンダ大虐殺。100日で80万人以上が犠牲に

1994年におきたルワンダ大虐殺。100日で80万人以上が犠牲に

あまりに残酷な事実に、想像力がついていかなかった。
目の前で家族を惨殺された人々は何を思うのか。
酷い目的のために暴行をされた女性は、その後どう生きているのか。

今年2月、私はルワンダに暮らす子どもたちの生活を追ったテレビ番組の取材のためにここを訪れた。この国で起こった出来事を知れば知るほど怖くなり、正直なところ、出発前は“行きたくない”気持ちの方が大きかった。体が拒否反応を示し、出発当日はひどい偏頭痛に襲われたほどだった。

母子感染によってHIVをもって生まれてきたマリアちゃん(仮名)13歳

母子感染によってHIVをもって生まれてきたマリアちゃん(仮名)13歳

到着して2日目、この日は首都キガリから車で1時間ほどの村に、マリアちゃん(仮名)という少女に会いにでかけた。13歳というが、痩せて小柄な体つきはそれより2~3歳下に見える。車を降りると、はにかんだ笑顔で握手で迎えてくれた。

マリアちゃんのお母さんはジェノサイドの時、暴行を受けてHIVに感染した。
その後、今の夫と出会い結婚し、マリアちゃんが生まれた。

マリアちゃんが生まれた時、病院でマリアちゃんがHIVに感染していることを知らされ、その後、検査で自分自身の感染を知ったのだ。

忘れようとしてきたジェノサイドの過去が蘇る

「ショックでした。信じられなかった。
忘れようとしてきたジェノサイドの過去が蘇りました。
とても辛い事実でした」

お母さんは、ジェノサイドの時に負った体と心の傷を数年かけて癒し、今の夫と恋に落ち、結婚したのだという。

一言では片付かない痛みがあっただろう。悲しみを乗り越え、結婚してかわいい子どもが生まれ、ようやく幸せをつかんだ矢先に、厳しい現実がつきつけられたのだ。

マリアちゃんは自分の病気のことを知っている。
医師からは、エイズの発症を遅らせるために栄養ある食事が必要と注意をうけている。とりわけ牛乳を飲むように勧められているのだが、一家は貧困のため牛乳を買うお金がない。

「病気が治りますように。みんなと仲良く出来ますように」祈るマリアちゃん

「病気が治りますように。みんなと仲良く出来ますように」祈るマリアちゃん

「近所の子どもたちは、わたしの病気のことを知っていて、からかわれたり、仲間はずれにされます。みんなとは違うんだなって思う」
寂しそうに話す。

マリアちゃんに今の願いを聞いてみると、意外な答えが帰ってきた。
「病気が治って、近所の子どもたちと仲良く遊びたい」

マリアちゃんは、自分を仲間はずれにする子たちと「仲良く出来ますように」と、毎日神様にお祈りしているというのだ。

貧困の中、病に生きる小さな女の子の慈愛の深さに、頭が下がる思いがした。
私だったら、と考える。私だったら、そんな相手と仲良くしたいと思ったりできるだろうか。

「病気が治りますように。みんなと仲良く出来ますように」祈るマリアちゃん。

悲しみを乗り越え、選んだ“赦し”

ひどい質問であることを承知で、お母さんに、ジェノサイドの傷をどう乗り越えたのか聞いてみた。そのことでまた、辛い記憶を思い出させてしまうかもしれない。でも、どうしても聞かずにはいられなかった。

パート2に続く(5月2日公開)

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この記事を書いた人

WVJ事務局
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