【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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子どもたちの成長願い奮闘

この記事はワールド・ビジョン・ジャパンの原田スタッフが執筆し、2014年2月3日付SANKEI EXPRESS紙に掲載されたものです。

 

子どもをだっこするお母さんたち。彼女たちが安心して出産できる環境づくりを目指している

子どもをだっこするお母さんたち。彼女たちが安心して出産できる環境づくりを目指している

アフリカ南部に位置するマラウイで働き始めて、10カ月が過ぎた。初めてのアフリカ。夢にまで見た現場での仕事。思いを募らせていただけでは絶対に知ることができなかった現場の実情を、自分の目で確かめ、頭で考え、そして行動に移す毎日だ。未来の担い手である子どもたちのために何かしたい。その思いを原動力に、自分が出来ることに取り組み、設定したゴールの先へとアクションを起こしたいと思っている。

小学生の頃、父親の仕事の関係で住んでいたイギリスでは、有名歌手らによるチャリティーソングが頻繁に流れていた。もともとイギリスは国際協力の取り組みがとても盛んだ。街中ではしばしば募金活動を見かけ、飢餓に苦しむ子どもたちの映像がテレビで繰り返し流され、著名人による支援活動が頻繁に行われる。

そうした光景を見るたびに、「どうして私と同じ年頃の子どもたちがこんなに悲惨な状況にあるのだろう?」と疑問を抱いた。そして、「私も世界で苦しんでいる子どもたちのために何か出来ないか」と考えるようになったのだ。

何年かたち日本に戻った私は、いつの間にかそのことを忘れてしまった。しかし、周りの大人たちから「あなたは未来を担う世代なのだから…」という言葉をかけられるようになった時、子どもの時に抱いた疑問を思い出したのだ。世界には、未来どころか今日一日を生きることさえ危ぶまれる子どもたちがいるという現実。「そんな子どもたちのために何かしたい」

それから10年、私はその思いを胸に、マラウイの子どもたちの成長を願って、現場での仕事に奮闘している。

子どもたちはカメラを向けると、はにかみながらもかわいらしい笑顔を見せてくれる

子どもたちはカメラを向けると、はにかみながらもかわいらしい笑顔を見せてくれる

私が担当する母子保健の事業では、母親が安全な出産をするための医療インフラ整備、医療施設利用への啓蒙活動、産前産後の正しい知識の普及などを実施している。事業地のンチシ県では、医療施設で適切な処置を受けなかったために、妊産婦や乳幼児の死亡率・罹患(りかん)率が高くなっている。

たとえば、一番近い医療施設に行くだけでおよそ20キロ、その施設に産科棟がなければさらに遠い病院まで行かなければならない。道は舗装されておらず、自家用車はほとんどないため、移動手段は徒歩だ。

また、アフリカの中でもとりわけHIV/エイズの感染率が高いマラウイでは、産前検診で必ずHIV/エイズの検査を受けなければならない。事実を知るのが怖いという理由で、医療施設へ行くことを拒む母親たちも少なくない。加えて、マラウイでは自宅出産を推奨している村もいまだ存在し、なかなか施設での分娩(ぶんべん)を促すことは難しい。

ンチシ県に唯一存在する病院では、妊婦さんが診察を受けていた

ンチシ県に唯一存在する病院では、妊婦さんが診察を受けていた

一方、地域の母親や妊産婦をもつ家族は、建設中の産科棟の完成をとても楽しみにしている。コミュニティの人たちも、正しい知識を身に付けたいと積極的に話し合いに参加している。彼らは、決して新しい命をおろそかにしようとは思っておらず、みな生まれてくる命とその母親の健康を祈っているのだ。

よく話を聞くと、「お産に必要な知識を身に付けたかったが、その機会がなかった」「近所の施設には産科棟がなく、産科棟のある施設は遠すぎたが、近くにできたら利用できる」と言う。

こうして少しずつだが、母親やコミュニティの人たちの行動には変化が起きている。

現在建設中の保健センター

現在建設中の保健センター

私は、医者のように直接治療を施しているわけではない。しかし、医療環境を整え、適切な知識を普及することで、母子の健康、そしてその後の子どもたちの成長に役立つよう支援している。今日生きることの心配をせずに済む子どもたちが、一人でも増えてほしいと願っている。

その一方で、この現場での活動は決してゴールではないと思っている。この経験を通じて生まれた新たな思いを行動に移すことが、私の次なる目標である。そう背中を押してくれたのは、目をキラキラ輝かせ、明日への希望を持ってやまない、この国で出会ったたくさんの子どもたち、そしてその健やかな成長を望むお母さんたちである。

 

事業地の子どもたちと原田スタッフ

事業地の子どもたちと原田スタッフ

 

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