2013年4月20日、中国四川省をマグニチュード6.6の地震が襲い、死者が196人、行方不明者20人、負傷者約1万3千人という被害をもたらしました。最も被害が大きかった雅安市では、357の学校施設が被害を受け、329校が一時期休校に追い込まれました。
ワールド・ビジョンは地震発生当初から、文房具などの復学セットや生活物資、折りたたみベッドなどを配布しており、ワールド・ビジョン・ジャパンとしても、ジャパン・プラットフォームからの助成を受けて、扇風機と、枕やシーツなどの寝具セットを配布しました。
私はこの地震が発生してから3カ月後、真夏の太陽が照り輝くなか、被災地を訪れました。その時は学校が夏休みであったため、生徒の姿はほとんどありませんでしたが、学校の先生方は暑いプレハブ校舎の中で、新学期再開に向けて忙しそうに準備を進めていました。
プレハブ校舎の中に入ると、風通しが非常に悪いため「もわっ」とした熱気を感じました。暑いときには気温は35度を超えるときもあり、あまりの暑さのために授業を中断しなければならないこともあったそうです。
地震発生直後、仮校舎ができる前は、テントなどで授業を行っていたため、学習環境はもっと劣悪でした。
学生寮も倒壊の危険性があるため、プレハブの仮寮棟ができるまでは、寮生は毎日、かなり長い距離を歩いて学校に通わなければなりませんでした。
ドアには学期末の最終試験の座席表が貼ってありました。子どもたちが、被災後の厳しい環境に負けず試験を乗り越えていったのだなぁと思うと、胸が苦しくなりました。
ふとプレハブ校舎の壁を見てみると、別の地域の学生から送られた励ましの手紙が貼ってあるのが目に入りました。そこには、
「テレビで地震の被害の様子を見て驚きました…(中略)…私たちは互いに手を取り、心が通じ合う、ともに暮らす家族です。一日も早い復興を願っています」
と書いてありました。
その後、学校の先生の案内で、地震の影響で使用中止となっている本校舎に入れていただきました。校舎の見た目は問題ないように見えるのですが、細かく見ると壁のいたるところにヒビが入っていました。
検査の結果によっては、この校舎は取り壊す必要があるそうです。その校舎のある教室をのぞいてみると、教室の黒板にカラフルなチョークで、生徒に向けたメッセージが残されていました。
「感謝する心を持ってください。真の愛が私たちとともにあるのですから」
逆境にも負けず、前を向いて勉強し続けた子どもたちの原動力は何だったのでしょうか。
私が訪れた学校には、そのヒントが残されていました。
この記事を書いた人
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【経歴】
2010年、北海道大学法学部卒業。
2012年1月、英国のエセックス大学大学院(人権理論実践学)修了。在学中は札幌のNPO法人やガーナ、バングラデシュの人権関連NGOにてボランティア、インターンを経験。
2012年1月ワールド・ビジョン・ジャパン入団。支援事業部緊急人道支援課 プログラム・オフィサー。2014年8月より10カ月間、南スーダン難民支援事業担当駐在員としてエチオピア駐在。
【趣味】
音楽鑑賞、歌うこと、卓球
【好きな言葉】
ある舟は東に進み、またほかの舟は同じ風で西に進む。ゆくべき道を決めるのは疾風ではなく帆のかけ方である(『運命の風』E.W.ウィルコックス)
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