外務省のNGO連携無償資金で行っている東ティモール事業の活動の一つが給水である。水源が遠い村に小規模な水道を引いてくることで、生活に必要な量の水を確保できるようにするとともに、衛生環境の改善、子供や女性の水汲みの負担を減らすといった効果が見られる。今回は実際に小規模な水道を設計する際に、どのような作業をする必要があるかを紹介したい。
最初に水源の水量を確認する。村の人口に合った水量がないと、上手く機能しない水道になってしまう。
その後、水源から水道を設置する村へ向かい、実際に水道管を設置するであろう場所を歩いて、距離と高低差を測る。その際に活躍するのがGPSだ。(スタッフの首から下げてある黄色い器具で、衛星からの信号を使って自分の居場所がわかる)数百メートルおきにGPSで座標と高度を取り記録していく。左下の黄色い丸いタイヤみたいなのは距離を測る器具。
道なき草むらを、ナタを振るう村人を案内人として、草むらや森、畑などを突き進む(写真下2枚)。これが普段、屋内での作業が多い自分には結構楽しかったりする。
石垣も…
村人が普通に上の方を崩して乗り越えて行く(写真上=崩す前、写真下=崩した後)。
ついて行く自分は正直「崩していいのだろうか?」と思ってしまうが・・・
村の中も距離と座標を測る。遠目でみると少々挙動不審な集団だが、村内の家の位置を把握できれば、どこに水道を通すべきかが明確になり、住民との対話の際にも蛇口を設置する位置での住民間の言い争いを避けることができる。家の位置を全部記録したところで作業は一通り終了。やはり熱帯なので何時間も歩き回ると結構暑い。スタッフと「暑い暑い暑い」と言いながら帰路につく。
ひと通り作業が終わると、村人がご飯をご馳走してくれることも。
これはご飯と野菜の煮込みと即席麺。
こうして現場で計測した水源と、村、そして家屋の位置の座標を、事務所に戻ってからパソコン上で地図に写し、実際の地形に重ね合わせることで、水量との兼ね合いも含めて、どのような設計の水道にするべきかを明確にする。これで少なくても紙の上では水道の完成だ。あとはこれを紙の世界から現実にする作業が待っているが、その話はまた別の機会に。
この記事を書いた人
- 米国Washington and Lee大学理学部化学科卒業。在学中にケンタッキー州の都市貧困にかかわるNPOでインターンをした事でNPOの働きに興味を持つ。一般企業で勤務後、帰国し2008年9月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団、支援事業部緊急人道支援課に配属となる。2009年から2011年までスリランカ駐在、2013年から2015年5月まで東ティモール駐在。2015年8月に退職し、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院でMSc. Public Health in Developing Countries(途上国における公衆衛生)修士号を取得。2016年10月に再びワールド・ビジョン・ジャパンに入団、支援事業部開発事業第2課での勤務を開始。現在、バングラデシュ事業担当。2018年3月退団。
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