【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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あるランナーの物語(前編)

久しぶりのブログです(更新少なくすみません・・・)。今回は担当をしている国の一つ、タンザニアについて書いてみます。今年7月に現地を訪れた際に出会った、ある元マラソンランナーのお話です。

先月、世界陸上モスクワ大会が開かれました。私は世界陸上より甲子園派なので、この大会についてはTVやインターネット等で結果をチェックしたくらいなのですが、大好きな方々にとってはたまらなくアツい9日間だったのではないでしょうか。

今大会の中で、タンザニアは残念ながら一つもメダルを獲得することができませんでしたが、かつてはケニアやエチオピアと並んで長距離王国として語られることが多かったそうです。陸上界では「古豪」ともいうべき存在でしょうか。

ゴロワADP事務所の玄関口で出迎えてくれた地元の子どもたち

ゴロワADP事務所の玄関口で出迎えてくれた地元の子どもたち

私が出会った元マラソンランナーのサラホさんは、ワールド・ビジョン・ジャパン(以下WVJ)が支援するゴロワ地域開発プログラム(以下ゴロワADP)の実施地域で暮らしています。奥さんと7歳の娘さんお一人の三人家族です。

サラホさんのご自宅を訪問すると、玄関を入ってすぐのところに、いくつものトロフィーが飾られていることに気づきました。それに加えて、颯爽と駆け抜けるマラソンランナーの写真も。

その写真には、イタリアやフランスの地名等が添えられています。なんとサラホさんはただのマラソンランナーではなく、かつてタンザニアを代表して国際大会に出場するほど優秀な選手だったんです。

サラホさんが参加した大会の写真

サラホさんが参加した大会の写真

しかし、私は写真に写っているのがサラホさんだということ、そしてこれらすべてのトロフィーを獲得したのも彼だということを伝えられても、何だかすんなり信じられないような気分でした。

なぜか?一つは、ゴロワADPの支援地域に、まさか国際大会に出場するほどの元マラソンランナーがいると思わなかったからでしょう。

出張でほかの国のADPを訪れることがありますが、どこに行ってもそこに住む方々の行動範囲は、ほとんど自分たちの住む町や周辺地域に限られます。国外に行ったことのある方、ましてや国を代表する選手として、といったケースはこれまで見聞きしたことがありませんでした。

サラホさんは誇らしげに、これまで獲得した トロフィーとメダルを見せてくれました

サラホさんは誇らしげに、これまで獲得した
トロフィーとメダルを見せてくれました

また、サラホさんの今日の姿が写真の中の姿と異なって見えるからということも挙げられます。マラソン選手は皆余分な肉のついていない体型の方ばかりですが、サラホさんも確かにとても痩せている方です。

でも、その痩せ方はどこか健康的な感じではないのです。すてきな笑顔をお持ちの方ですが、ランナー時代の写真よりも大分頬がこけている感じがします。

そして、最大の理由ですが、それは今回サラホさんのお宅を訪問したのが、ゴロワADPが実施しているHIV/エイズとともに生きる人々(WVJでPeople Living with HIV/AIDSという表現を使うことがあります)への支援の様子を視察するためだったからです。

私の中で、HIV/エイズとともに生きる人々の中に元マラソンランナーがいらっしゃるとはまったくの予想外でした。「この写真の中で私の横を走っているのはエチオピアのハイレ・ゲブレセラシェ選手(5000mと10000m、男子マラソンの元世界記録保持者。「皇帝」と呼ばれ、エチオピアでは国民的英雄)だよ」と語るサラホさん。なぜそこまで優秀なランナーであった彼が、今はこの苦境に立たされているのか。信じられない、もしくは信じたくない気になりました。

続く

あるランナーの物語(後編)を読む

※今回、サラホさんのお話しをブログで取り上げることに関して、また写真を使わせていただくことに関して、ご本人やご家族から事前に許可を得ております。

いっしょに幸せになろう。チャイルド・スポンサーシップ

この記事を書いた人

松岡拓也支援事業第1部 人道・開発事業第1課 課長
東京外国語大学英語科を卒業。民間企業勤務を経て、青年海外協力隊としてボリビアに赴任。帰国後、日本貿易振興機構アジア経済研究所開発スクール(IDEAS)で学ぶ。
2012年にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。2017年から2021年までカンボジアに駐在し、日本政府、企業、個人のご支援による複数事業の管理に従事。
現在、スペイン語通訳として地域の学校等でも活動。保育士。防災士。
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