【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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ミミズ堆肥、はじめました

「新しい生活様式」が必要となった2020年。
ワールド・ビジョンでも2月頃から全面的な在宅勤務が始まり、その時出張中だった私も帰国してから今まで8カ月間在宅勤務をしています。

この期間、スタッフのほとんどに会えていないのは寂しい一方で、普段から私の主な仕事相手は現地のスタッフなのでリモートワーク自体に大きな抵抗はありませんでした。

でも振り返ると、通勤がなくなって時間に余裕もあるはずなのに仕事がはかどらない、後回しにしているタスクになかなか手が付けられない…など、いまいちモチベーションがキープできていない時期が続いたように思います。

10月に新年度を迎えての心機一転とモチベーションアップ!も兼ねて、私がここ最近で一番元気づけられた現地でのエピソードをご紹介します

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2019年のバングラデシュ出張時のお話です。
現地に出張中、私たちは事業地の中で複数の村を訪問します。

大抵の村/活動地は大きな道路に面していないので、近くで車を降りて、舗装もされていない細い脇道を歩いていくとようやくチャイルドや村の人々に会える…というのがいつものパターンです。なので、事業地域にいても一目で対象の村や活動実施場所を見分けることはなかなかできません。
でも、フルバリア地域開発プログラム(AP)のある村を訪れた時は様子が違いました。

この村に来たのは、「ミミズ堆肥」で生計向上を目指すグループの活動視察のためでした。
ミミズ堆肥は、栄養が多く含まれるミミズの糞を利用して作られる農業用の堆肥で、日本でも有機ごみの活用法として知られています。
フルバリアAPでは、この堆肥の販売や堆肥を使った家庭菜園をするためにトレーニングと道具の支援を行い、最貧困世帯の収入と食習慣の改善を目指しています。

目的地のそばで車を降りると、とても目立つ横断幕が大きな道路に面して掲げてありました。ベンガル語は読めないものの写真が堆肥っぽかった(?)ので、スタッフに「もしかして、これが見に来た活動?」と聞いてみると「そうだよ!この村は今やミミズ堆肥で有名なんだ」とのこと。

ここでミミズ堆肥が買えます フルバリア郡ナツアパラ村 フルバリアAP

「ここでミミズ堆肥が買えます」と書かれた横断幕

その存在感に少し驚きつつ、横断幕をくぐって例のごとく脇道を進むと、出迎えてくれたのはこの村でミミズ堆肥ビジネスを進めている女性グループ。
グループの今までの活動と今後の取り組みについて、説明してくれました。

「2020年までに村の経済状況と子どもを取り巻く環境を改善する」をグループの中期目標として掲げ、2年間活動してきたこと。最初は5人で始めたのに、いまや村全体のビジネスになっていること。堆肥を売るのはもちろん、村の農業や家庭菜園にもこの堆肥を使えるようになったこと。

おかげで、以前は全然野菜が採れなかったのに、今は30種類近い野菜を育てていて年中収穫があること。

村で栽培している作物の収穫時期一覧

村で栽培している作物の収穫時期一覧。収穫が全く無い時期がなくなりました!

さらに、彼女たちの活躍が複数のメディアに取り上げられ、どんどん売り上げが伸びていること。最近、「この村の野菜は美味しい」と口コミが広まり、野菜を買っていく人も増えていること。今、買い手との連携強化とさらなる売り場数増加に向けて、毎月のミーティングで準備を進めていること。

グループのメンバーは、発表者を入れ替えつつ、張り出された模造紙を使って堂々と話を進めていきます。野外でブルーシートに座っているのに、まるでどこかの会議室にいるような気分になるほどしっかりしたプレゼンテーションでした。

活動報告に集まってくれたグループメンバーの女性たち

活動報告に集まってくれたグループメンバーの女性たち

プレゼン終了後、メンバーの女性たちにもう少し詳しく彼女たち自身のことを聞きました。
バングラデシュの農村部では女性が収入を得ることは未だに珍しく、このグループも全員「これが初めての仕事」だと教えてくれました。

ワールド・ビジョンのサポートがあるとはいえ、一からビジネスを始めるのは簡単ではありません。特に最初にトレーニングを受けた5人は夫や家族からひどく反対されたといいます。

「仕事なんて始めたら誰が家事をするんだ」「子どもは放っておくのか」「女が金を稼げるわけがない」
そんな心無いことを言われながらも、家族と子どもたちのためになると信じてトレーニングに参加したとか…

私の訪問時はグループ結成から約2年が経っていて、周囲の態度もすっかり変わっていました。

あるメンバーは、「村の農作物が売れるようになったのを見て、夫が家庭菜園用の土地を買うべきか相談してきました。話し合いの上小さな土地を購入し、そこで野菜を育てています。家のことで夫が私の意見を求めたのはこれが初めてのことです」と話してくれました。

大反対を受けた最初の5人も、「初めて収入を家に持ち帰った時から、夫も応援してくれるようになり、今は家で私の意見が尊重されるようになった」とのこと。

私が質問を続けていると、最後には「村の皆がこういう経験をしているから、成功話を全部聞いていたら日が暮れちゃうわよ!」と笑われてしまいました。
このような変化が日常茶飯事かのように振る舞う彼女たちですが、その活躍は生計向上支援の成果を超えて、もっと根深い社会的な固定概念をも覆し始めているのではないかと、とても逞しく思いました。

ミミズ入りの鉢に躊躇なく手を入れるメンバーの女性。「最初は気持ち悪かったけど、この子たちが収入をもたらしてくれていると思うとむしろ可愛らしく思えてね」とのこと

ミミズ入りの鉢に躊躇なく手を入れるメンバーの女性。「最初は気持ち悪かったけど、この子たちが収入をもたらしてくれていると思うとむしろ可愛らしく思えてね」

ワールド・ビジョンは、世界の“子どもたち”のために活動しています。でも、やはり子どもたちが安心して暮らすには周りの大人たちがしっかりしていないといけないし、何より大人が変わることで子どもたちにも必然的に変化が生まれると思うのです。

この村では、お母さんたちが始めた仕事が村を代表するビジネスになって、他の村やメディアから注目を集めている。お父さんたちもその働きを尊重し、応援している…

そんなことが当たり前ではない地域だと知っているからこそ、この変化の重大さと今後への期待をひしひしと感じました。

帰り際に私のカメラの前に集まった村の子どもたち。その笑顔に向けてシャッターを切りながら、「この子たちは将来どんな大人になるんだろう」となんだかわくわくしました。

村の子どもたち

村の子どもたち

フルバリア地域開発プログラムは、チャイルド・スポンサーシップのご支援に支えられ、あと7年続く予定です。この新しい光景が地域の当たり前になり、ここに住む子どもたちが今後さらに地域の発展を進められる立派な大人に育つことを楽しみに、今後も支えていきたいと改めて思わされました。

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残念ながら、私の2020年のバングラデシュ出張は中止になってしまいました。この村への訪問を思い出しながら、現地訪問ができる立場にあること、そしてそれができる環境が整っていたことに改めてありがたみを感じています。

1年に各国たった一度の訪問ですが、出会う人々から聞いた話や支援地域で目にするものから短期間にたくさんインスピレーションを得て、仕事の支えにしていたのだなと気が付かされました。

今の状況下、毎日仕事もプライベートも同じ場所で過ごしていると世界がとても狭くなったように感じます。でも、終日にらめっこしているパソコン画面の先には現地スタッフと地域の人々の働きと活躍があることを思いつつ、この“New Normal”の中でも頑張っていきたいと思います。

この村を訪問した筆者

この村を訪問した筆者


WVJは厳しい環境に生きる子どもたちに支援を届けるため、11月1日~12月28日まで、3000人のチャイルド・スポンサーを募集しています。

この記事を書いた人

小園若菜美
小園若菜美ラオス駐在 プログラム・コーディネーター
大学では国際政治経済を学び、卒業後英国ブラッドフォード大学で平和学修士課程を修了。その間NGOでのインターンを経験。
2017年4月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。2022年4月からベトナム駐在、その後2023年5月からラオス駐在。
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