子どもたちと遊ぶのは楽しいけれど、正直言って、貧困と障がいの重みに、ココロがぐったりしてきた頃、とても元気づけられることがありました。
それも、ある家庭訪問から始まりました。
ムロジョン君は4,5歳の男の子。脳性まひです。そのおうちに入ったとたん、そこはそれまでたずねたどの家よりも貧しく、生活が厳しいことがわかりました。薄暗く、狭く、すえたような匂いのする部屋。寒くないのがせめてもの救いです。お母さんの顔はつかれきっていました。
でも、そこにあと3人、子どもがいました。中学生くらいのお姉さんと、小学生くらいのお姉さんとおにいちゃんがひとりずつ。その子どもたちが、まあ、なんと明るく楽しげで、しかもムロジョン君のことを可愛がっていることか!
日本からきている作業療法士の専門家が、ムロジョン君が安定して座れる方法とその介助方法を教えると、イチバン上のお姉さんは早速マスターします。次は膝立の仕方・・・どれもこれもすぐやってみて、上手にこなします。しかも楽しそうにやるんだなぁ、これが。
4人の写真を撮って、液晶の画面で見せてあげると、兄弟姉妹たちが、指をさしてムロジョン君に口々に聞きます。
「これ、だれだ?」
ムロジョン君は彼なりに答えているようで(ザンネンなことに、言葉がわからない私には聞き取れないのですが・・・)、しかも正解!のようで、そのたびに、3人のお姉さん、お兄さんたちが嬉しそうにケラケラと笑い声をあげ、ムロジョン君も笑います。 それを見たお母さんの顔にも、やっと笑顔が戻ってきました。
彼らの生活が厳しいことに変わりはないと思いますが、貧困にまけず、家族で寄り添って助け合って生きていく姿に、恵まれた国でのほほんとした生活を送る私は、たくさんパワーをもらったような気がします。
この記事を書いた人
- 青山学院大学を卒業後、国際協力銀行(JBIC)前身のOECFに入社。途中英国LSE(社会政策学)、オックスフォード大(開発経済学)での修士号取得をはさみ、アフリカ、インドネシア、フィリピンにおいて円借款業務を担当。母になったことを契機に転職。東京大学にて気候変動、環境、貧困など21世紀の課題に対応するSustainability Scienceの研究教育拠点形成に従事。「現場に戻ろう」をキーワードに08年10月よりWVJに勤務。アフリカ、中南米、ウズベキスタンを担当。2011年5月より、東日本緊急復興支援部長。2013年4月より副事務局長。2017年4月より事務局長。2020年4月より現職。青山学院大学非常勤講師、JICA 事業評価外部有識者委員、JANIC理事、日本NPOセンター副代表理事
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