先日、エチオピアの支援地内のある小学校を訪問しました。
小学校1年生のクラスには、10歳くらいかな?という少し大きい子どももいます。農村地帯では経済的な理由から入学が遅れ、10歳で1年生というような子どもも珍しくありません。
先生が手作りの教材を使ってアムハラ語の文字を教えていました。まだまだ無邪気でかわいい1年生たちが、競って手を挙げて先生の質問に答える様子は、同じ小学校1年生の息子を持つ私にとって微笑ましい光景でした。
エチオピアの子どもたちも、日本の子どもたちも、同じように教育を受けて持てる能力を伸ばし、可能性に満ちた将来を夢見る権利を持っています。しかし、エチオピアの子どもたちが置かれている環境は、残念ながら困難に満ちています。
•支援地では校舎や教員の不足から、子どもたちは午前か午後の4時間しか学校で学べません。
•教科書以外に読む本が不足しており、せっかく学校で字を習っても、なかなか実際に読めるようになりません。
•学費は無料ですが、教科書や学用品、制服を買うことができず、入学が遅れたり中退を余儀なくされる家庭の子どももいます。
•学年末試験に合格しないと小学生でも進級できないため、留年を繰り返してしまう子どもも少なくありません。
•「学校に通わせるくらいなら家の手伝いをさせた方がよい」と考える親もまだ少なくないため、ある程度の学年まで通ったら中退させられる子どももいます。
•中学校(9年生~10年生)以降の教授言語は英語のみのため、能力的に小学校8年生までで教育をあきらめざるを得ない子どもも多くいます。
このような困難を少しでも解決するべく、ワールド・ビジョンは教育支援として、小学校の校舎の建設や、教員を対象とした指導法や教材作成の研修、また保護者に子どもを学校へ通わせることの重要性を伝える活動を続けています。しかし個々のチャイルドの中には、家庭や個人の状況により、就学が遅れたり学校を中退してしまうケースもあります。学校教育から離れてしまったチャイルドに対しても、将来経済的に自立できるよう生計手段を習得するための支援を行っています。
このような困難な状況で育ちながら、教育を受けて人生が変わった1人の人に、今回出会うことができました。支援地の事務所で人事を担当しているゲタレさんです。ゲタレさんは次のような話をしてくれました。
「私は貧しい農家の8人兄弟の長男として育ちました。小さい頃は靴を履いたことがなく、車など見たこともありませんでした。7歳の時に小学校に入りました。『学校を止めないで勉強を続けるように』と先生がいつも励ましてくれたことを覚えています。
しかし4年生の時に経済的な事情で学校に通えなくなり、その後4年間両親の農作業を手伝って毎日働きました。でも先生の言葉を覚えていた私は、また学校に戻りました。村では6年生までしか学べなかったので、7年生からは徒歩で片道4時間以上かかる寄宿学校で月曜日から金曜日まで学び、週末はまた4時間歩いて家に帰り、農作業を手伝いました。学校があまりにも遠く、中退してしまったクラスメートも多くいました。
9年生の時に父が亡くなり、一家を支えなくてはならなくなりましたが、学校が休みの時に農作業をし、弟妹たちを養いながら学業を続けました。大学卒業後、15年間高校で英語教師として働き、今はワールド・ビジョンでかつての自分のような貧しい農村地帯の子どもたちのために働くことができ、嬉しく思っています。
ゲタレさんが、「もし学校を途中で止めていたら、自分の人生は全く違っていたと思う」と言っていたことが、強く印象に残りました。
珍しい外国人の私を興味津々で取り囲み、大きな瞳でまっすぐに見てくる支援地の子どもたち。裸足で石ころだらけの放牧地を必死で走りながら、私たちが乗る車に向かって満面の笑顔で手を振ってくれる子どもたち。厳しい支援地で暮らしながらもキラキラ輝く大勢の子どもたちが、二十年後三十年後にはゲタレさんのように夢を実現することを願い、これからも途上国の子どもたちのための働きを続けていきたいと思います。
スポンサーサービス課
石坂 明日香
この記事を書いた人
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