【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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歌はつなぐ

ベトナムの人は歌が大好きです。都市部であれば、カラオケセットを家に持っている人も多く、お休みやお祝いの日に親戚や友人を家に呼んで歌うことも多くあるようです。

事業地でも郡の中心部であれば、必ずカラオケ店はあります。事業地での限られた娯楽なので、私も現地スタッフと一緒に行くことがあります。「日本の歌を歌って!」とよく言われるので、曲目を見てみるものの、懐メロ時代の曲しかないので、唯一知っている「SUKIYAKI SONG(上を向いて歩こう)」か、70年代の英語の曲を歌っています。

ベトナムの歌謡曲は、曲調も歌い方も日本の演歌に似ています。でも日本よりも、男女が交互に歌いあう形のデュエットが多い気がします。ラブソング(報われない愛の)も好まれて歌われますが、故郷、母親にささげる歌、愛国歌もよく歌われています。

事業地の男性スタッフが、大真面目に「おかあさ~ん!おぉー!我が故郷よ~!」と大声で熱唱しているのを初めて聞いた時には、ちょっとクスッと笑ってしまったのですが、「このスタッフは、家族と離れて現場で頑張っているんだよなー」と思うと、このスタッフは歌を歌うことで故郷に心を馳せ、寂しさを解消しているのかもしれない、と思い直しました。

ちなみにテレサ・テンなどの70年代くらいの日本語の歌がベトナム語に翻訳されて、すでにベトナムの曲として定着している曲も多くあるようです。

会議の時に美声を披露してくださった省の母子保健センター長

会議の時に美声を披露してくださった省の母子保健センター長

カラオケも大人気ですが、ベトナムでは重要な会議の始まる前やセッションの合間などに歌を披露することもあります。そのため歌の上手い人は尊敬されるそうです。たまに「この人、実はプロ?」とビックリするくらいのスゴイ歌唱力を持った人がいたりします。

ベトナムでは、歌っている最中の歌手に、感謝と敬意をこめて花束を渡す風習があります。この間の会議の時に、歌ってくださったカウンターパートの方に、その真似をしたら、笑いながらも、喜んでくださいました。

研修の時に歌ってくださった白モン族の女性

研修の時に歌ってくださった白モン族の女性

事業地に多く住むモン族の人たちも、歌が大好きです。口承文化のモン族は、歌はとても重要な慣習のようで、普段の会話も、まるで音楽のように聞こえます。モン族の歌はとても独特で、音の上げ下げが多く、息継ぎのための一瞬の間があったりします。(少し日本の民謡に似ているかもしれません)

最近は、顔なじみの人も増えたせいか、村落で行っている保健クラブに行くと、「日本の歌を歌って!」と言われるようになりました。こういう時、「ゆりかごの歌」や「ふるさと」しか歌えないのが、我ながら情けないですが、みんな、とても真剣に聞いてくれます。「さっきは声が小さかったから、もう一回歌って」と言われてしまうこともあります…。

言葉は分からなくても、曲調が違っても、歌というものは人をつなぐものなんだなーと感じます。ベトナム語の歌とモン族の歌もいつか学びたいなーと思いつつ、いつ、「日本の歌を歌って」と言われてもいいように、「何かいい曲の歌詞を覚えておかなくては!でも、どの曲がいいんだろう?」と考える今日この頃です。

この記事を書いた人

木戸梨紗プログラム・コーディネーター
上智大学比較文化学部卒業(専攻:社会学・文化人類学)。ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院でMSc. Reproductive & Sexual Health Research修士を取得。
2010年1月 ワールド・ビジョン・ジャパン入団。2012年12月より2016年3月までベトナム、2016年4月から2018年3月までエチオピア駐在。専門領域は母子保健。
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