世界では国内避難民または難民となった人が6850万人もいる(UNHCR)。そしてその多くが、アフリカやアジアの途上国で発生している。
アフリカにあるルワンダは、国土は近畿地方ほどの小さな国でありながら、国内に5つの難民キャンプがあり、近隣国から多くの難民を受け入れている。これには1994年に起こったジェノサイド-大虐殺-が関係している。当時800万人の人口のうち80万人から100万人が殺され、200万人がコンゴ民主共和国、ウガンダ、ブルンジなどの近隣諸国に流出したといわれている。そうした元国民が難民として帰還していることに加え、政情不安を抱える近隣国からの新たな難民も受け入れている。
我々は農業分野の支援を通じて、元難民のある女性と出会った。彼女はジェノサイドが起こった際にコンゴ民主共和国に避難し、その後ルワンダに難民として戻ってきた。帰国後は白いトウモロコシ(メイズ)を生産し、自家消費とともに余剰を販売することで現金収入を得て生計を立てている。
ワールド・ビジョンは、こうした農家を支援する活動として、大手のトウモロコシ加工業者と連携し、地方の農家の所得が向上するための支援を行っている。このAfrica Improved Foods社は現代風に言えば「ソーシャルビジネス」として小規模農家から地方の仲買人よりも高い価格で買い上げているという点が特徴である。購入したトウモロコシは微量栄養素を付加した粉末に加工し、世界食糧計画(WFP)を通じて難民に提供する食料を生産・販売している。つまり、この元難民の女性が生産したトウモロコシは、今の難民の命を支える食料に使われているのである。
我々はこの女性に、あなたの生産したトウモロコシは、別の地域で困っている難民を助けるための食料に使われるのですよ、と伝えた。彼女は、元難民の自分が生産したものが、現在の難民の支援につながることはうれしいことだと答えた。この女性は「誰かの支えになる」こと、つまりメイズの販売を通じて難民支援にかかわることで自信と誇りを取り戻すことができている。それは長期的には、収入が上がること以上に意味があることではないだろうか。
クリスマスが近づくこの時期、私たちも「誰かの支えになる」ことの大切さをもう一度考えてみたい。「ギフト」を通じて誰かを支えることができれば、もらった人を幸せにするだけでなく、送った側にも特別な気持ちになれるはずだ。
*********
【関連ページ】
・JICAとの連携による生計向上支援事業(ルワンダ)
・世界の難民危機と子どもたち
・クリスマス募金-水と食糧のための募金
この記事を書いた人
- 神戸大学国際協力研究科地域協力政策専攻修了。民間企業を経て、外務省専門調査員在ザンビア日本大使館にて勤務。同国の経済動向の調査および援助協調を担当。その後、JICA専門家としてマラウイ財務省において開発援助プロジェクトのモニタリング能力向上のための技術協力を行う。2011年3月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。東日本大震災緊急復興支援部で緊急支援を担当。2012年7月より支援事業部において、ベトナム、東ティモール、マラウイを担当。2015年10月から2018年9月までワールド・ビジョン・ルワンダ駐在。帰国後はアフリカ地域のプログラムを担当。2023年9月より支援事業第1部 部長として事業の管理に従事。
このスタッフの最近の記事
- アフリカ2020年5月19日140万人と2人と0人:ウイルス感染症との戦い
- アフリカ2018年11月30日NGOスタッフの記憶に残る「ギフト」(5) ~「元」難民との出会い
- アフリカ2018年6月7日「父の日」に寄せて。
- アフリカ2018年2月22日置かれた場所は途上国|“千の丘の国”と呼ばれるルワンダ