【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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国連開発計画(UNDP)の会議に参加して -G8サミット

今回は少し硬い話になりそうです。すみません・・・・・

UNDP事務所での会議のようす

UNDP事務所での会議のようす

去る6月4~5日にかけて、ニューヨークのUNDP事務所にて、 Platform HD2010: Towards a People’s Multilateralism (プラットフォーム人間開発2010:人々の多国間主義をめざして)というコンサルテーション(対話会議)に招待され、参加してきました。参加者は世界各地から25名程でしたが、その人々の所属する団体は実に多様なものでした。

例えば、少数民族問題に取り組むNPO、環境問題のNPO、ジェンダーに関するNPO、インドの農民支援組織、CIVICUSというグローバルな市民社会組織、Inter-Actionというアメリカの海外支援NGOのネットワーク組織、グローバル・ガバナンスを見ているNPO、国連改革に関して提言活動を行っている団体、ロックフェラー財団などの財団組織など、です。このコンサルテーションは、具体的な問題に関する何かの結論を出すのが目的ではなく、参加者がそれぞれの経験から自由に発言し、市民社会の一員として意見交換をするのが目的でした。ただ、大変活発で有意義な議論が展開されましたので、今後は世界各国でこのようなコンサルテーションを重ねていくことが決まりました。

国連ビル

国連ビル

この会議の背景は、世界経済の混乱、食糧問題、環境問題、など地球全体に大きな影響を与える問題が次々に発生している一方、従来の枠組み(国家の枠組み)ではそれらの問題への対応に限界があるのではないかという声があります。現実に、世界をリードしていると思われるG8諸国も経済危機の対応に追われていますが、もはやG8諸国だけではこれらの問題を解決する力はありません。台頭するインドや中国を含めたG20という拡大した枠組みを必要としていますし、そこには新しく、より広い枠組みやルール作りが必要で、世界全体をどのようにまとめていくかという、グローバル・ガバナンスが大きな問題となっています。
またその中で、国連は従来の国家主義、国家間の利害対立の枠を超えられず、問題の解決、方向性を示すことができていないのではないかという声もあります。
そこで、UNDPとしては新しい多国間主義(multilateralism)が必要ではないかと考え、特にその中に市民社会が健全に参加する必要を感じ、今回のコンサルテーションを開催したのではないかと思います。
私もこの問題意識は共有し、その通りだと思います。多様な市民社会の参加は21世紀のキーワードの1つではないかと考えています。

時、おりしもG8イタリアサミットが始まろうとしています。
G8諸国だけが話し合うこと自体への疑問、G20 やインド・中国の台頭、グローバルな課題に対してG8諸国だけでは解決でいない現実などから、G8サミットの影響力の低下が叫ばれています。いずれG8サミットは、新たな枠組みへと変容して行くのではないかと思います。そこで大切なのが、世界の問題を話し合うときには、当事者の声を反映させること。特に市民の声を聞きながら、世界の問題に取り組むことではないかと思うのです。

この記事を書いた人

片山信彦 理事長ワールド・ビジョン・ジャパン理事長
大学卒業後、三井住友海上火災保険株式会社(旧大正海上火災)入社。1982年同社を退職し、キリスト者学生会(KGK)の関東地区主事となる。海外との文化交流事業、日本人学生の海外派遣事業、在日留学生の支援事業等も行う。フィリピンにおける2カ月間の研修および中国、タイ、インド、インドネシア等の視察を行う。
1992年同会を退会し、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン入団、2000年から2017年まで事務局長。2017年4月から常務執行役員、常務理事などを歴任。2023年10月より現職。
その他の役職: 社会福祉法人キングス・ガーデン東京 理事長
公益財団法人国際開発救援財団 理事
福音主義医療関係者協議会 顧問
1999年イギリス マンチェスター大学大学院IDPMにて「社会開発」と「NGOマネージメント」を学ぶ。
2020年 立教大学大学院キリスト教学研究科修了(神学修士)
共著:「連続講義 国際協力NGO」(日本評論社)、「国際NGO が世界を変える」(東信堂)
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